イスラムアート紀行

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土が描く動物、文字、花。浮彫タイルの美

◆ 土の特性が生きる!浮彫〜押出タイル ◆
繊細で流麗なモザイクは、タイル装飾の華。一方、浮彫タイルもまた、土の特色を生かし迫力のある美の姿を見せてくれます。

今回は、「イスラム建築における陶製タイル」/ギョニヨル・オネイ/『装飾タイル研究』(←多分。コピーのため確認できず)より引用しながら、浮彫について探ってみたいと思います。(* 写真は文章の直接的な事例ではありません。イメージとしてごらんください。)

ガズニ発。・・・「最も初期の、単彩彩釉の浮彫タイルは、アフガニスタンのガズニの町にあるガズニ宮殿に使われていたことが知られている(スルタン・マウスード3世/1099〜1115)」

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(イラン・ゴルガーン gorgan/11世紀初頭(ブワイフ朝?)/クーフィー体タイル/テヘラン国立博物館で撮影)

流行に!・・・「大セルジューク朝やイルハン国時代の作例では、浮彫タイルの単彩彩釉タイルが、ひとつの重要な斬新さとなっている」

鋳型で。・・・ 「鋳型プレスによる浮彫の装飾をともなう単彩彩釉タイルも(各博物館の作例で)見ることができる」

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(13世紀/タブリーズの博物館で撮影。タフテソレイマーンのラスターだと思います/ラスター彩関連のブログ内記事は「ラスター彩タイルの縁に書かれた銘文」

各所でアクセントに。・・・「正方形と長方形のタイルが縁取りタイルとして用いられた一方、十字形のタイルが星形のラスタータイルの間に用いられた」

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(イラン・タフテソレイマーン/13世紀末期/ラスター彩押し型タイル/『宮殿とモスクの至宝』より引用/ブログ内関連記事は「タフテ・ソレイマーンのタイルとの邂逅」

動物を描く。・・・「野ウサギ、ヒョウ、ライオンなどの野獣類の互いに追いかけ合っている様子、スフィンクス、グリフォン、翼のあるライオンなどの魔術的な守護力を持った象徴動物、(略)、などが描き出されている」「一般に、パルメットの帯状装飾で、上部が飾られている」

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(イラン・カシャーン〜ゴルガーン/14世紀/浮出文窓タイル。穴は明かり取り/『イスラームのタイル』(INAXブックレット)より引用。「世界のタイル博物館」所蔵)

◆ 浮彫タイルの美が際だつ ティムール期 ◆
ティムール期に洗練度を増す・・・「ティムール時代の浮彫タイルは、デザインや技術的な面から見て、セルジューク朝のものや、イルハン国のものとは異なっている」

傑作!・・・「サマルカンドのシャーヒ・ズインダ墓地の廟墓には、15世紀の浮彫タイルのパネルの非常に見事な作例が幾つかある」 

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(シャーヒズインダ墓廟群の浮彫)

防水性という機能も。・・・「最も有名なものは、深く彫り込まれた表面のトルコブルーと緑色のタイルで、これには、ブハラ近郊のブヤン・クリ・ハンの廟墓(1358)、トゥルカン・アカの廟墓(1371)のようなものがある」 「これらのタイルは、セルジューク朝やイルハン国時代にイランで用いられていた浮彫スタッコに代わり、防水性があるので、建物の外側を装飾するのに使われた」

キリリとキレイ!・・・「浮彫の表面は、垂直の線が浮き立ち、これは焼成、彩釉の前に、彫り込まれたり、切り込まれたりしたもので、以前のセルジューク朝やイルハン国時代のもののように鋳型に流し込んで成形したものではない。したがって、浮彫は丸みを帯びずにクッキリとしており、陰影が鮮明である」

これまでもティムール時代のタイルの魅力について、いくつかの角度から書いてきました。

*施釉無釉煉瓦を組み合わせて模様を作るバンナーイ(「土の味わいのバンナーイ」
*ティムール期の華モザイク(「サマルカンド、モザイクタイルの発展」
*最高の発色といわれる青(「天空への憧れ、聖なる青」

浮彫も、ティムール時代の重要な特色のひとつです。可塑性のある土の魅力が生きていますね!
by orientlibrary | 2007-10-16 22:13 | タイルのデザインと技法