イスラムアート紀行

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スルハンダリア州・ボイスン、暮らしの中の工芸美に感動!

京橋のフィルムセンターで「ウズベキスタン映画祭」が開催されています(10月7日まで)。以前、ブログにも書きましたが(「聖なるブハラ 太陽に向かう鳥」)、私の中央アジアへの好奇心に火を点けたのは、94年に開催された「中央アジア映画祭」でした。

あれから13年。今回はウズベキスタン単独の映画祭であり、私自身も含めた、この間の中央アジアの文化への関心の高まりを感じます。
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◆ 手織り絨毯の海、艶やかな刺繍の花 ◆
上映作品は、有名な「UFO少年アブドラジャン」など10作品。私は残念ながら1本しか見ていないのですが、その映画「男が踊るとき」に、またしてもガツンと衝撃を受けました。ストーリーにではなく映像に。正確には、ロケ地とされる「スルハンダリヤ州・ボイスン」に、です。

最初のシーンから、ドキッとしました。少女とおばあさんが土の屋根の上で話をしているのです。家も塀も、村のほとんどが土でできています。美人になることを約束されたようなかわいい少女の髪は、中央アジア独特の三つ編みです。

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その頃、隣家では将来の花婿が産声をあげ、その父は誕生を祝ってポプラの木を植えます。砂塵の舞う沙漠のような地。映画を見ているときには、ボイスンという地名ももちろん知らないので、「土の家々、沙漠、、ここはウズベクのどこなんだろう!?もしかしてイランかも?」などと、ドキドキしながら見ていました。

そして場面は変わり、なんといちめんの絨毯の海。目がくらむような素晴らしい手織り絨毯が、川で洗われ日に干されているのです。この絨緞がすごい!(クラクラ、、)。模様が、色が!一枚一枚がマニア垂涎の毛織物、、

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ストーリーは二人が結婚に至るまでのエピソードなのですが、それらは伝統文化やコミュニティのつながりが強い村の光景とともに描かれていきます。そして、本当に本当に圧巻なのが、家の中の絨毯、スザニ、村の人たちが普通に来ている絣のアトラスなどの織物や刺繍です。

土の家々、土だけの村に、鮮やかな色が、華やかな刺繍が、大胆な文様が、なんて見事に映えるんだろう。中央アジアで鮮やかな織物が愛されてきた理由が、ほどけるように理解できました。全体的に、もうカンペキ博物館アイテム!(クラクラ、、

◆ 無形遺産の傑作・ボイスン! ◆
ボイスンについてネットで調べてみました。資料的には、とても少ない感じです。まずわかったのは、加藤九祚先生の発掘で有名なテルメズを州都とするスルハンダリア州にあるということ。州は、トルクメニスタン、タジキスタン、アフガニスタンに隣接しています。

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そして調べていくうちに、このボイスンの「文化的空間」が、ユネスコ・アジア文化センターの「人類の口承及び無形遺産の傑作」宣言リストに登録されていることがわかりました。同センターのサイトでは、次のように紹介しています。

・・・「ボイスン地域は、世界最古の人間の居住地のひとつです」 「人口82,000人のこの地域は、小アジアからインドへ向かうルート上にあり、古い文化遺産やさまざまな宗教の影響が色濃く残されています」 「ここには、8世紀に入ってきたイスラム教をはじめとして、シャーマニズムやトーテミズムなどイスラム教以前の信仰が残っており、その芸術にはゾロアスター教や仏教の影響も見られます。また、伝統的儀式も数多く継承されています」・・・

やはり、ただ者ではなかったボイスン。さらに、・・・「ボイスンでは、ウズベクとタジクの伝統が互いに影響しあっています」・・・。フェルガナ好きの私が惹かれる理由がわかった気がします。

けれどもボイスンの伝統文化は、消滅の危機に面しています。・・・「ボイスンの伝統芸術は、文化モデルを強制するソビエト時代の政策によって壊滅的な打撃を受けました」・・・

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じつは、映画のすぐあとに映画評論家のトークがあったので、聞いてみました。が、30分くらいの話の間、ずっと違和感を感じていました。評論家の方は、イスラムや中央アジアについては詳しくないとのことでしたが、映画をイスラムの文脈で解説されるのには参りました。

イスラムでは語りきれないと思うんですよね、この映画。土着のもの、伝統文化の問題だと思います。それがソ連時代に壊されたということであり、イスラムのアイデンティティとかで語ってしまうと、イスラムって何なの?ということになってきます。中央アジアを一括りにイスラムで語ることの危うさを感じ、自戒しました。

◆ ボイスンの光景 ◆
最後になりましたが、前述のユネスコ・アジア文化センターのサイトに、少しですがスライドショーがありました。村の香りだけでも、ぜひ!!そして私は、ボイスンに行きたい!という気持ちが高まっています。

*写真の3、5枚目はソ連時代に製作されたリシタンのパンフレット、4枚目はブハラで購入したスザニのパンフレットより、引用しています。
by orientlibrary | 2007-10-05 17:07 | ウズベキスタンのタイルと陶芸