イスラムアート紀行

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土族の思い、「アイシャ・ビビ」から「ウズゲン」へ 

●装飾タイルのなかでも、土味を感じるのがティムール期のタイル。イスファハーンのタイルの華麗さ、イスタンブールのタイルの可憐さ、その素晴らしさや洗練度はわかっていても、惹かれるのは、より土の味わいを感じるもの。だって「土族(つちぞく)」なんだもん!

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(アイシャ・ビビ廟)

●そんな「開き直り系・土族」の私が、歓声をあげたのが、「アイシャ・ビビ廟」。現在のカザフスタン、タラズの近くにあるカラ・ハーン朝時代の廟です。アイシャ・ビビは、カラ・ハーンの后だそうです(悲恋の伝説があるようですが、省略します)。

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(アイシャ・ビビ廟、テラコッタのディテール)

●12世紀建造。小さな四角形の建物で、さまざまなデザインに浮彫されたテラコッタだけで作られています。壁面も、柱も、アーチの装飾も、凝っていて、美しい。小さな方形の煉瓦の建物、ということで思い起こすのは、ブハラの宝石箱、9世紀の「サーマーン廟」(サーマーン廟についてのブログ内記事は、こちらこちら)ですよね。

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(サーマーン廟)

●アイシャ・ビビ廟も同様に正方形の小さな廟ですが、浮彫が施されたテラコッタを用いる点がカラ・ハーン・スタイルの特徴のようです。サーマーン廟では、煉瓦でこれほどの美が可能なのか、と感動しますが、アイシャ・ビビ廟はもう少し軽やかな印象を持ちました。浮彫や、その繰り返しが軽快さを醸し出しているのかもしれません。

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(アイシャ・ビビ廟、テラコッタのディテール、アーチ部分)

●アイシャ・ビビ廟のすぐ横にアイシャ・ビビの乳母の廟、「ババジ・カトゥン廟」があります。二つ並んだ廟には、女子学生がたくさん見学に来ていました。悲恋伝説が、お年頃の女の子の心をつかむのかな?!

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●また、11世紀のカラハーン朝の統治者、アブドゥウ・カリム・カラハーンの廟、「カラハーン廟」も近くにありましたが、こちらは何だか地味。13世紀の「ダウトベク廟」もあり、廟がまとまって見られます。

●これらのテラコッタの廟群や、キルギスの観光スポットになっている「バラサグン遺跡とブラナの塔(焼成煉瓦のミナレット)」について書こうかな、と、先ほどから調べているうちに、う〜〜〜、、久々に土族の血がフツフツとしてきました。テンション高いです、今。すごいぞ、カラ・ハーン朝!

●フツフツの元は、「ウズゲン(UZKEND)の廟群とミナレット」。でも、でも、残念ながら、ここは現地に行けていないんです。キルギスの国立博物館でその写真を見て(写真自体を撮影してきました)、なんだ、これは〜!?と驚きました。すごく惹かれました。でも。なにしろ行っていないので、ブログで盛り上がろうにも盛り上がれなかった建造物なんです(悲)。

●このウズゲンを詳しく説明しているのが、『MONUMENTS OF CENTRAL ASIA ~ a guide to the archaeology,art and architecture of turkestan ~ 』(EDGER KNOBLOCH/IB TAURIS)という本。先刻、読んでみて、ウズゲンすごい、カラ・ハーン朝すごい、と、クラクラしています。

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(ババジ・カトゥン廟にて。カザフの若い女性は、皆、脚が長くてジーンズがよく似合う)

●興味を持って下さる方も少ないかと思うんですが、そうわかっていつつ、次回書いてみたいと思います。その前に、カラ・ハーン朝について、『中央ユーラシアを知る事典』(平凡社)から、ご紹介!

* カラ・ハーン朝*
チュルク族のうちで最初にイスラーム化した中央アジアの王朝
・ 840年にモンゴル高原のウイグル国家が崩壊した後に台頭した
・ 王家の起源は不明
・ カラハーン朝という名称は近代の歴史家の命名によるもので、イスラーム史料ではハーカーニーヤ朝もしくはアフラースィヤーブ朝と呼ばれている
・ イスラーム化後も匈奴以来の遊牧国家の構造を維持し、東西に2人のハンがあり、東方のアルスラン(獅子の意味)・カラ・ハンが大ハン、西方のボグラ(駱駝の意味)・カラ・ハンが小ハンであった
・ 999年にはブハラを最終的に占領し、サーマーン朝を滅亡させた
・ 11世紀に後半には完全に東西に分裂した
・ 1132年のカラキタイの建国後、カラハーン朝の東半はカラキタイの直接統治におかれたが、マーワラー・アンナフルのカラハーン朝は13世紀の初頭まで存在した

●マニアックな話になっていますが、ま、お盆ということで、、。
by orientlibrary | 2007-08-10 23:42 | タイルのデザインと技法