イスラムアート紀行

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日々を彩る、美への意思。ウズベキスタンのペインティング

タイルばかり見ている私が、見過ごしがちなのがペインティング。ウズベキスタンは天井や壁面など、建築物を彩るペインティングもとてもきれいです。知識がないので、これまで書くに書けなかったのですが、今回トライしてみようと思います。

コーカンドのペインティング
また中央アジアに行ってくるつもり。その前に、昨年のウズベキスタン旅行関連記事で触れていない地域やテーマについて書いておきたいのです。で、浮上したのが、コーカンドのペインティング。あの美しさは、私にとって「謎」でした。

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ウズベキスタン東部・フェルガナ盆地のコーカンドは、コーカンド・ハーン国の首都だった町。19世紀前半に繁栄し、当時はブハラに次ぐイスラムと貿易の中心地だったといいます。しかし1876年にロシア軍に占領され、ロシア領トルキスタンになりました。

コーカンドで有名なのは、「フダヤル・ハーン宮殿」です。ハーン国最後の支配者フダヤルによって1863 年から10年の歳月をかけて造られた豪華な宮殿でしたが、ロシア軍が破壊。その後修復を経て、現在は博物館となっています。当初112あった部屋のうち、現在23の部屋が残っており、内装もきれい。メインエントランスの外壁はタイル装飾で輝いています。

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けれども、ブハラ最後のハーンが造った「スィトライ・モヒ・ホサ宮殿」でも感じたのですが、美しさよりも西洋に負けないほどの豪華さが重視されたような印象。時代性でしょうか。どこか退廃感があるというか、、「その贅沢さが痛々しい」という感じで、素直に美の世界に入っていけません。

でも、ペインティングはとてもきれいで驚きました。どうしてコーカンドのペインティングがこんなにきれいなのかなあと、以前買ってそのままにしていた『DECORATIVE PAINTING OF UZBEKISTAN 』(1987年)という本を見てみました。

すると、コーカンドだけでなく、アンディジャンやナマンガンなど、フェルガナ地域のモスクやマドラサのペインティングが多数紹介されており、タシケント、サマルカンド、ヒヴァなどよりも多いのです。

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地方ごとに特色のある建築や美術が発達
本の解説は、・・・「19世紀から20世紀初頭は、建築や美術の分野で、空間構成や装飾が各々に異なる各地方の流派が発展した。フェルガナとホレズムの装飾絵画の比較は好例である」として、フェルガナが独自の地位を築いていたことを示します。

特徴は、「フェルガナは明るい赤と緑色で描かれた植物文様を持つ独自の円形装飾(メダリオン)」。これと比較して「ホレズムは青とオレンジ色の幾何学文様が芸術的」だったようです。

シルクロードの関連でよく紹介されるのは、アフラシャブの丘のソグド人を描いた青の壁画です。そして芸術が高いレベルに到達したティムール時代、15世紀サマルカンドや16世紀ブハラの建築には、天井やムカルナス(壁面から天井に移行する部分の蜂の巣状の装飾)に、素晴らしいペインティングが施されています。

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中庭とアイワン、その空間を快適に、もっときれいに
どうしてウズベキスタンでこのような絵画が盛んになったのか。上の本では次のように説明しています。・・・「建築に描かれる素晴らしい絵画は、短い冬、長く暑い夏というウズベキスタンの気候的特性に大きな影響を受けている。ウズベキスタンの住居や公共建築は、中庭とアイワン(AIVAN)という屋根付き回廊を持つ。人々はこの戸外領域の涼しい屋根の下で快適な時間を過ごす。この回廊が美しく装飾されるのはきわめて自然なことである。住居、モスク、マドラサなどのアイワンには、鮮やかな壁画が描かれたのである」。

気候や暮らしの中で求められ、発達してきたのがペインティングなんですね。タイルは宗教建築や宮殿など権力に関わる建造物を主に彩ります。けれどもペインティングは住まいや生活用品など身近なものを彩ります。なんだか、ペインティングにも関心を持てるようになりました。ウズベキスタンの細密画小物も、とっても素敵なんですよ!

*写真は上から順に、「フダヤル・ハーン宮殿」3点=orientlibrary/「ANDHIJYAN/OTAKUZI MADORASA」=(20世紀初頭/『DECORATIVE PAINTING OF UZBEKISTAN 』より引用)
by orientlibrary | 2007-04-13 20:58 | ウズベキスタンのタイルと陶芸