イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

ロードムービーから音楽映像詩まで イスラム圏の映画が熱い!

アフガニスタン映画祭、アラブ映画祭と、先週は映画ウイークでした。記憶に新しいうちに、感じたことなど少し書いてみたいと思います。映画や音楽を文字で表現するのは、いつも難しいなあと思います。なるべく短くしましたが、読むのも大変ですよね。どうぞ、適当なところで、、

驚いたのは、アラブ映画祭の盛況。立ち見の人もいるほどでした。2年前はけっこう静かだった記憶があります。中東に関心を持つ人が増えてきていることを実感することが多いこの頃ですが、今回の集客でもその感を強くしました。

e0063212_1433814.gif◆「長い旅」・・・フランスに住むモロッコ系移民家族。父は頑固で敬虔なムスリム。大学受験を控えた息子にメッカ巡礼に同行するように命令。息子は反発するが仕方なくボロ車を運転してメッカに行くことに。そして、なんとフランスからアラビア半島へ5千キロもの旅。次々起きる困難に「飛行機で行けば簡単じゃないか!」とキレる息子、「旅をすることで浄化される」と語る父。喧嘩を繰り返しながら、やっとの思いでメッカに到着。父は「お前のおかげで来られた」と感謝し巡礼におもむくが、、。映画の最後を書くわけにはいきませんが、もう、うるうる、、。

e0063212_144177.gif◆「バーブ・アジーズ」・・・なんとも不思議で、魅力的な映画。西アジア〜インド・パキスタンあたりの砂漠、スーフィー、スーフィー音楽などが好きな人には、たまらない映像世界。修行に生涯をささげるスーフィー(ダルビッシュ)的な生き方が、ごく自然に受け止められる。

祖末な衣服をまとい彷徨い歩く彼らの日々が、物質的満足よりも幸福なのではないかとさえ思えてくる。砂漠の地下モスクのタイル、王子の天幕と砂漠の踊り、きれいだったなあ。最後のシーンのバム、撮影の数ヶ月後に地震が起きたのだそうだ。本当に幻影のようだった。
e0063212_14686.gif
(パキスタン・ウッチュにて/イメージとして)

e0063212_144218.gif◆「古きサヌアの新しき日」・・・イエメン初の長編。予想していた以上に面白かった。身分の違いによる悲恋もの、ともいえるが、それだけではなく重層的。古都の建築と街並や路地、民族衣装と顔を隠した女性たち、有力者家族の横暴、結婚のしきたりや祝い、ナゲシ(ヘナは色付きでこちらは黒)の美しさ。

一番驚いたのは女性たちの暮らしや考え方。顔を隠す衣装の下でうわさ話に熱中し、喜怒哀楽を爆発させ、男を怒鳴りつけ、愛を全うし希望を捨てない、、映画と現実は違うのかもしれないが、それを差し引いても、忍従とか女性差別等のイメージとのあまりの違いに圧倒された。

◆「ヤコービエン・ビルディング」・・・エジプトで物議をかもし国会で上映について審議されたという問題作。本当にイスラム圏でこんな映画を作っていいの?上映していいの?と思ってしまった。・・・貧富の格差、同性愛、ドラッグ、売春、政治の腐敗と汚職、逮捕拷問などによる強権的治安維持、堕胎、セクハラ、、成績優秀な青年がイスラム過激派になるまでの過程も主軸になっている。

社会の諸問題がこれでもか、と登場して絡み合い、上映時間も3時間近い。にもかかわらず、展開が理解しやすく重苦しさに押しつぶされることもなく、娯楽映画としても楽しめてしまう。カイロが中東のハリウッドと言われる理由がわかる気がした。

e0063212_1445363.gif◆「カブール・トライアングル」・・・アフガニスタン、ドキュメント。なんとも重いが、これが現実。映画館で「重い」などと言っていられない、と自分のテンションを上げる。

◆「カブール・シネマ」・・・映画大好きの孤児の少年。しかし内戦で映画館にロケット弾が打ち込まれる。少年は破壊された映写機やフィルムを拾い集めて、リヤカーの上に映写可能な箱を作り生計をたてる。しかし、これを知ったタリバーンは映画箱を壊し、少年をさらし者にする。ラストシーンの暗さに少々めげた。

e0063212_1451282.gif◆「渡り鳥」・・・86年制作。深刻化する紛争や難民の姿を予見、警鐘を鳴らした幻の名作。在日アフガン人の関係者も強力リコメンド。花婿殺しや武器収奪など、無法の連続。ジハードを掲げる武装集団の山中での訓練は壮絶。難民キャンプでの大麻パーティ、殺された弟の花嫁との結婚に悩む武装組織のリーダー。最後に花嫁が立ち上がり復習するも悲惨な最期。あまりの重さに見終わった後、虚脱状態。

e0063212_1016494.gif骨太でシリアスな映画が好き。しかしアフガン、今回はちょっとキツかった、というのが本音です。どうしてだろう。絶望の中の希望というのが見えてこなかった。もしかして、86年の映画ということと関係があるのかもしれません。

*映画の写真は、アラブ映画祭、アフガニスタン映画祭のチラシより引用。
by orientlibrary | 2007-03-20 02:17 | 美術/音楽/映画