イスラムアート紀行

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イスタンブールに飛びたくなる! 熱くてクールな音楽シーン

e0063212_1265717.gif●トルコの音楽ドキュメンタリー映画『クロッシング・ザ・ブリッジ』は、こんな言葉で始まります。

●・・・「儒教ではこう言われている。---“音楽は訪れた土地の文化の奥深さを語る”---。音楽というのは、それほどに雄弁なんだ」「イスタンブールは72の民族が行き交う、大きな橋みたいな街だ。対極のものが隣り合っている。伝統と革新、富と貧困。すべてが混在している」・・・

●アップで迫るボスポラス大橋、海峡を渡る船に乗り、西洋的なベイオール地区、そして伝統的なアジア側のエリアへ。クラブシーン、ヒップホップ、ロック、伝統音楽、民謡、大衆音楽まで、息つく間もない音の波。イスタンブールの音楽がこれほど多彩だったとは。そしてカッコいいとは。。


●タイル好きにとってのトルコ、、セルジューク朝の古雅の趣あふれる青のタイル、オスマン朝イズニークの赤、ブルー&ホワイトの陶器など、古いものばかりに目がいきます。でも、トルコ、とくにイスタンブールは、クラブカルチャーの最先端の地なんだそうです。一方でサズなど伝統的な音楽も、深く根づき、息づいています。

●音楽映像詩的な映画が大好きな私(たとえば『ラッチョ・ドローム』!!)、正直言ってこの映画、どうかなあ、と半信半疑でした。というのも、「トルコ版『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』」という謳い文句だったので。『ブエナ〜』、すごくヒットしましたよね。でも私はかなり退屈でした。あのヒット、タイトルの魔力もあったのでは?

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●ご安心ください!?『クロッシング〜』、もっとクールでカッコよく、熱くて、土着で、ボーダーレスで、しかも音楽シーンを通して時代や社会に強くメッセージしています。

●登場するミュージシャンは多彩。スーフィー音楽とDJを融合し千年以上の伝統を持つ縦笛「ネイ」をふくメルジャン・デデは昨年「ラマダンの夜」コンサートで来日。哀感あふれるクルド民謡の歌姫アイヌール、以前は禁止されていたクルド語で歌うことの困難を超えてきました。トルコ語ロックの先駆者エルキン・コライは60代の今もロックしてます。

●早口言葉かと思うトルコ語ラップ路上には社会的なメッセージを骨太に歌うバンドやブレイクダンサーたちがいます。そのレベルの高さ。単に何でも反対、社会が悪いというのではなく、自分の考えをしっかり持っている印象がありました。日本の音楽は私的内面的なものが多いので、とても新鮮に映ります。

アラブ風のサズがイケてるトルコの大スターオルハン・ゲンジェバイ。国民的歌手セゼン・アクスはラストに登場して存在感を見せました。等々、まだまだ多くのミュージシャンが出演し、音楽の種類も多様なら、年代も若者から重鎮まで幅広い
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●そのなかで私がいちばん好きだったのは、トラキア出身のジプシー(ロマ)でクラリネット演奏家のセリム・セスレルです。ロマの音楽というのは、技術は言うまでもないことで、もうそんなことはどうでもよくて、旋律やリズムが、ふだん意識しない心の奥の方に響いてきます。日本人の私にも響く、この音の魂みたいなもの、何か聴覚や体感の普遍的根源的なものかもしれない。

●、、でも、映画や音楽を書くことってむつかしいですね。映画は今回は試写で、3月から劇場公開されます。万人向けではないけれど、イスタンブールや民族系の音楽の好きな方にはリコメンドしたい映画でした。

*写真は、上から「映画チラシより引用」、「多彩釉モスクランプ/イズニーク/1570年/mosque of the grand vizier so-kollu mehmet pasa in istanbul」、「多彩釉皿/イズニーク/1585年/中心部=カリグラフィーの雲の中に鳥が見えます。鳥は頭を尾の方に入れ春の花を運んでいます。まわりには赤や緑の波、岩、雲などが配されています」(陶器2点は『turkish tiles and ceramics』より引用)
by orientlibrary | 2007-01-13 12:24 | 中東/西アジア