イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

お寺で聴くサズ、和の空間で見る部族の絨緞

トルコを代表する民族楽器「サズ」。そのコンサートがお寺であり、しかもお寺には真っ赤な部族の絨緞が敷きつめられている、、そんな珍しくも魅力的な催しが、日野市にある安養寺でおこなわれました。安養寺は築500年とという真言宗の名刹です。
e0063212_2337534.gif

●演奏者はトルコで修行された大平清さん(↓)。イラクの刺繍布を背に赤い絨毯に囲まれての叙情的な弾き語り。哀愁のある音色に、多くの人が聴き入りました。

e0063212_2336659.gif●サズは長い竿(ネック)が特徴の撥弦楽器(つまびいて弾く)です。

●なんと、古代ヒッタイト遺跡の石刻にサズの原形と考えられる楽器が彫られていたり、イランのスーサ遺跡の9000年前の土器にも長い竿を持って座った楽人の描写があるそうです。え〜!すごく古い歴史を持つ楽器なんですね!

伝統的には吟遊詩人が使う楽器だったそうですが、しだいに大衆の間に広がり、踊りの伴奏や祝いの音楽に欠かすことのできない、とても人気のある楽器になっているそうです。一方、オスマンの宮廷音楽などには使われないとのこと。

●「中央アジア、ペルシャ、アラブと、トルコ人のユーラシア大陸移動の歴史を感じさせてくれる音楽であると言えます」(大平さん)。同地域の土の建築文化に惹かれている私には、共鳴する波長を感じる楽器です。

●また、サズを好んで使う「アレヴィー」という人たちのことを、はじめて知りました。アレヴィーは東部アナトリアに多く、シーア派と共通する要素があるためにスンナ派とは相容れない点が多いのだそうです。「その宗教感情を表出するために、サズの調べにのせて詩をうたうのです。アレヴィーにとって、サズは切り離すことのできない関係にあります」(大平さん)。

e0063212_23464349.gif●イスラム教というと歌舞音曲禁止というイメージもありますが、地域的には音楽大好き、踊り大好きというエリア。音楽が信仰の気持ちを表す軸となるスーフィズムなどにも興味がある私にとっては、イスラム圏と音楽は切り離せません。

●コンサートでは、アラブ音楽で「楽器の女王」とも言われる「ウード」の演奏もありました。こちらは繊細な音色です。

●ウードは3世紀から栄えたササン朝ペルシャ時代の弦楽器を起源に持ち、ギターや琵琶、リュートなどの先祖といわれる楽器だそうです。形も卵型でやわらかい印象。胴の装飾の透かし文様が工芸品のようにきれいでした(↑)。

e0063212_23364145.gif

●さて、絨毯のほうは、、和の空間に乾燥地帯の遊牧民の絨毯がこんなに合うなんて!!お寺の暗い照明だと、赤のトーンが沈み目にやさしい落ち着きのある色に変化するのです。

e0063212_2338170.gif●そう、天幕のなかには電気なんてありません。自然の暗さの中で心身をなごませる色、それでいて活力をもたらしてくれる色、それが部族の赤。そんな赤の秘密を体感した気がします。


●安養寺さんは、8年間もこのようなコンサート(無料)を継続して開催していらっしゃるそうです。

●各所に配された飾りのセンスの良さと和モダンな感覚。そしてお寺を地域に開かれた場にしようという信念にもとづいた住職ご夫妻のきめ細かなホスピタリティに感服しました。安養寺さんのご近所の皆さんがうらやましいなあ!


*「More Day Most Accord」さんのTB記事(↓)にパキスタンのスーフィーのお祭りや音楽のことが紹介されています。どうもありがとうございました。
by orientlibrary | 2006-12-25 00:10 | 美術/音楽/映画