イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

最も熟練した職人がおこなう、モザイク作りのプロセスを見たい!

『ペルシアの伝統技術 風土・歴史・職人』は、すごい本。なかでもタイル製作の詳細な記述は感動ものです。タイル好きにとっての核心部分「建築技術と製陶技術」の「煉瓦切り職人およびタイル切り職人」より、イランのタイル職人の仕事を、本から引用しながらご紹介!流麗なモザイク装飾を支える「現場」です。(*写真は、『ペルシアの伝統技術 風土・歴史・職人』(平凡社)のものが白黒でクリアではないため、同様の工程をモロッコの『TRADITIONAL ISLAMIC CRAFT IN MOROCCAN ARCHITECTURE』より引用しました)

e0063212_129368.gif
(ウズベキスタン・ビビハニムにて/orientlibrary)

レンガ切り職人 ---「装飾的なレンガ積み(hazaerh,hazar-bafi,parceh)やファイアンスモザイク細工に携わる職人は、通常、ふつうのレンガ積み職人としてスタートする」「壁の表面のレンガ積みに熟練した職人がこの仕事を専門にするようになり、レンガ切り職人(ajur-taras) と自称するようになる」。

タイル切り職人 ---「最も熟練したレンガ切り職人にタイルやファイアンスモザイクの仕事が任されるようになった時点で、よりいっそうの専門性が生じ、この専門職人がカーディータラーシュ(kasi-taras)、つまり“タイル切り職人”と呼ばれる」「タイル切り職人(kasi-taras)は、ふつうのタイル仕上げのみならず、かなり「複雑なファイアンスモザイク細工もおこなう」 」

e0063212_127411.gif


タイルをカットして整形する ---「正方形のタイルを使ったタイル貼りの壁の場合は、まず徒弟がタイルの一辺を研ぎ、余分な油を取り除いて平らにする」「次に親方がそのタイルの上に型タイルを載せ、ペースト状の赤いアルメニア膠灰粘土に木製の筆(qalam)を浸し、残りの3辺に印をつける」「そして石の上のタイルを載せ、鋭い刃がついた石工用のハンマーを小さく2,3度振り下ろして、印をつけた3辺を整形する」「最後に木製の直角定規で仕上がりを確認する」「これでタイルの準備は整い、あとは焼石膏で壁に接着するだけである」。

ファイアンスモザイク。いわゆるモザイクも同様の工程で作られます。 ---「これと同じ種類の単色タイルがファイアンスタイルモザイクにも用いられる。図柄に必要な十分な量の単色タイルが陶工によって作られる」「色はトルコ石ブルー、コバルトブルー、ラピスラズリブルー、明るいエメラルドグリーン、淡い色合いからサフラン色までの数種類の黄色、そして白色、黒色、まれには赤色、ときには溶解して箔状になった金や釉薬の中でコロイド状を保っている金などの金色、というようにさまざまである」。

e0063212_1275017.gif


図案に従って切断する ---「モスクや公共の建物のような重要な仕事の場合には、図案職人(naqqas)はモザイクの異なる形(moarak)すべてについて型紙を用意し、それをタイル職人に渡して指定した色のタイルで作らせる」「タイル切り職人は植物性の糊(serest)で型紙をタイルに貼り付け、輪郭線にそって正確にタイルを切断する」「刃のついたハンマーで切断したあとは、タイルの縁をヤスリで滑らかにしたうえで、裏側を手鍬で先細りにする」。

e0063212_1283278.gif


パネルにする ---「職人は整形のすんだタイルを表を下にして並べる」「部分部分にわけて図柄を整え、装飾レンガ細工の場合と同じようにして焼石膏を流し込む」「レンガとレンガの間が狭いため、表側では明るく光沢のあるタイルの色彩が鈍い淡黄色の漆喰によって、うまく分離されている」「パネルの一区画は持ち上げるときに自重で壊れないような大きさに作られる」「壁やドーム、アーチのパネルの接着は装飾レンガパネルの場合と同じようにしておこなわれる」「パネルは異なる区画を通して熟練した技術で作られるため、完成した区画の切れ目は見えない」。

接着する ---こうしてできたタイルのパネルを焼石膏で建築物の壁に接着して完成です。


e0063212_105763.jpg
(サマルカンドのティラカリマドラサ/orientlibrary)
by orientlibrary | 2006-12-13 01:44 | タイルのデザインと技法