イスラムアート紀行

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女性だけが陶芸に従事する村に、古代を思わせる陶器があった

洗練優雅な装飾タイルが建造物の壁面を華麗に彩るイラン。今なお修復などで、タイル製造と緻密なモザイクの技法が受け継がれているようです。イランの建築物の綺麗さというのは、半端ではありません。こと芸術に関しては、イラン人というのは中途半端を好まない人たちなのではないかと思うほど、どこか徹底したところがあるような気がします。

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そんなイランから、日本に陶芸を学びに来ているアーティストがいることを知りました。先日までイラン大使館ホールで、その作家ティムール・サブーリさんの展示会がおこなわれていました。現代イランの陶芸の感性は、ぜひ見てみたかったので出かけてみました。

鳥や動物を大胆に表した作品は、力強く、それでいなから軽やかな遊び心があるものでした。焼きしめの壷などは備前のようで、日本で学びながら様々な陶芸に挑戦している様子が感じられました。その展示の一角に、ふしぎなコーナーがありました。素朴な茶色の地色に黒の幾何学模様。3000年前の皿ですよ、と言われても信じてしまうようなプリミティブな色と模様<。これって何!?

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はじめて出会ったこれらの陶器は、南イラン・バローチスタン州のKALPURKAN 村というところで作られているもの。え〜、このタイプの陶器を今も作っているの?さらに驚くことに、陶器を作るのは女性だけなのだそうです。サブーリさんが興味を持って調査した関係で、展示されたようです。

非売品だったのですが冊子があり、そこには少女からおばあさんまで、女性たちが土をこね、成形し、絵を描いている写真がありました。バローチーの民族衣装を着て、、もう、めちゃカッコイイです。

ティムール・サブーリさんのホームページは、イラン陶芸の歴史などとても充実しています。KALPURKAN 村についても記載がありました。それによると、「KALPURKAN 村の陶芸は、歴史あるイラン陶芸の古代の方法とひな形を不滅のものとするような製造技術が際だっている」 「土はMASHKOTAKというところから村の男たちが運んでくる。そして液状粘土と混ぜ合わせて焼き物のための土を作る」。(写真の右下にある石を顔料に、その下にある細い棒で絵を描く)

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「女性たちはろくろを使わない。手で成形し数千年もの伝統のある独特の幾何学模様を描く」。「筆ではなくマッチ棒のような石で線画を描く。顔料は村の近くの山でとれる特殊な石だ」「絵は、完全な抽象。世代から世代に受け継がれてきた心理的なイメージであり、時には宗教、信仰、作り手の女性の状況を反映する」「これらのシンボルは先史時代や古代のものと類似している」。

いったいどういう経緯で、女性が陶芸にたずさわるようになったのか、イランの土関係の伝統には男性のイメージが強かったので、不思議であり驚きでした。女性たちが作る製品は多様で、鉢や壷、コップ、ピッチャー、容器(VESSEL)から、水パイプ、お盆、乳製品入れなどさまざま。

でも淋しいことに、軽くて丈夫なプラスチックが陶芸製品にすっかり置き換わってしまったようです。需要は減少し、「70人の女性が1971年の時点で陶芸に従事していたが、99年には7人になった。2001年にはわずかひとりの女性が近くの町のクラフトセンターで陶芸を教えていた」。

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(サブーリさんの皿)

「古代の貴重な芸術が滅亡しようとしている」とティムール・サブーリさんは危機感を持っているようです。イランの若い陶芸家がこの村の焼き物に興味を持っていてくれたおかげで、日本にいながらバローチーの香りのする味わいのある陶器を見ることができました。あらためてイランの歴史と文化を思うこの頃です。
by orientlibrary | 2006-11-28 00:03 | 至高の美イランのタイル