イスラムアート紀行

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西アジア〜中央ユーラシア 赤のトライバル・ラグの世界

東京・お台場のビッグサイトで、ファブリックを中心とするインテリアの見本市「JAPAN TEX」が開催中です(25日まで)。広い会場に関連企業や海外からのブースがズラリと並ぶなか、かなり異色な空間があります。赤い手織り絨毯だけで構成された「日本手織絨毯研究会」の真っ赤な「部屋」。

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どちらがいい悪いではなく、工業製品の空間と手織りのものの空間では、質感が違います。手織りの空間には、泥くささや濃さがあるのですが、同時に今の時代には希少な類いの安心感やなごみ感もまたあります。何かに包まれる感じがします。

手織りということでは、繊細なペルシア絨毯なども同じように手織りであり、その洗練された美しさは圧倒的です。けれども研究会の真っ赤な部屋は、それともまた違う。もっと土くさく、人くさい。ほとんどが「トライバル・ラグ」とも言われる部族のものだからです。

トルクメニスタン、アフガニスタン、バローチー、カシュガイ、クルド、タイマニ、ホータン、ウズベキスタンなど、古来より毛織物が暮らしに欠かせないものであり、また豊かに暮らしを彩ってきた地域の絨毯。それも赤のもの。

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赤の持つ力に焦点を当てた会員のSさんのコンセプトと空間構成。展示された絨毯やテントベルト、クッション、小物などはすべて全国の会員の個人的なコレクショです。別名「マニアの会」メンバーだけあって、思い入れのあるものばかり。絨毯商やバザールでのやりとりが聞こえてきそう。地元の気配を今だ漂わせています。それが集合しているのだから、強烈です。

展示の説明も会員がおこないます。靴を脱いで見るスタイル。絨毯を汚してはいけないので絨毯につきもののチャイは無しですが、絨毯のある地の音楽などを流しながら、絨毯談義が弾みます。みずから絨毯を織るTさん曰く、「モノを売らない空間って、全然違うよね」。そして、この赤い部屋が、演出が優れたブースに贈られる「ディスプレー賞」を獲得したのです。基本的には業界の見本市。そのなかで個人の思い入れの強い空間が評価されるというのは、なにか新鮮な思いがします。おめでとう、Sさん!そして絨毯を愛する皆さん!

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さて、たくさんの魅力的な絨毯のなかで、中央アジア好きの私が気になったのは、ホータンの200年近いアンティーク(S.Tさん所有)。ザクロや花のかわいい模様、赤も青もおだやかないい色合いです。

e0063212_22502366.gif強いインディゴの紺にバラの花模様のものは、ウイグルで購入したそうですが「西トルキスタン(ウズベキスタンなど)のものである可能性は十分ある」と持ち主のS.Tさん。ヨーロッパ風がトレンドだった時代のものでしょうか。赤の染料はケルメスではないか、との見方でした。

赤の染料としては、茜(絨毯の赤色によく使われる)やコチニール(紫貝殻虫の卵に含まれる色素を利用)をはじめ、カネ、紅花、スオウ、ラック、ケルメスなどが古くから使われてきました。けれども天然染料は、大変に稀少なもので高価です。19世紀に合成染料が発見され、その後工業化されると、天然染料は合成染料に変わっていきました。

模様、織り方、染料、用途、歴史等々、絨毯はどれをとっても深いですね。私はいちおうこの熱い会の会員にさせて頂いていますが、ここでも修行中。皆さんのどこまでも行ってしまうマニアな話を聞いているのが好きです。
by orientlibrary | 2006-11-24 22:59 | 絨緞/天幕/布/衣装