イスラムアート紀行

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絵付けタイル華やかなトルコ、「拡大EUのフロンティア」?

トルコってアジア?ヨーロッパ?よく「東西文明の接点」などと言われますが、いったいどちらの要素が強いんでしょう。数年前にトルコに行ったとき、ユーロで示された値段の高さにびっくり。十数年前に行ったときは物価が安いイメージがあったのに、ユーロではとんでもなく高かった。雰囲気的に、国としてはヨーロッパに入りたいんだなあ、と感じるものがありました。

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ノーベル文学賞を受賞したイスタンブール生まれのオルハン・パムク氏は、そのあたりの心性を小説に驚くべきスケールとディテールで描きますが、パムク氏自身、アルメニア問題に言及した件で「国家侮辱罪」に問われています。

イスラム美術好きの私としては、トルコにヨーロッパのイメージはありません。ヨーロッパで加盟に反対している人が多いということを新聞などで見ると、なんとなくそれもわかるなあという気がしていました。でもEUとトルコの関係については、ほとんど知識がありません。

トルコの人は、本当にEUに入りたいの?どうして?、、心の隅で疑問に思ってきましたが、先日「拡大EUのフロンティア トルコとの対話」という催しを発見。行ってみることにしました。2時間弱にもかかわらず、3人の専門家による濃い内容のセミナーでした。

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アートではないのですが、トルコはヨーロッパ?という素朴な疑問について少しだけ見えてきたので、長くなりますが聞き書きしたものからまとめてみたいと思います。政治の話、う〜ん、ちょっと、、という方、どうぞトルコのタイル写真でくつろいでいって下さい。


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<EUからの視点>
・ トルコがEU加盟候補国になるまでの経緯、それを可能にしたものは何だったのか。98年と99年の変化から見る
・ 87年にトルコが加盟申請したが、97年のルクセンブルグ欧州理事会では加盟はeligibleである(資格がある)という中途半端な結論に
・ 98年は加盟論議停滞とトルコがこれに抵抗した年、しかし99年は一転してトルコを加盟候補国と見なす転換点となった
・ 背景には、「ギリシアとトルコの関係が改善した」「議長国となったドイツがトルコ加盟に前向きな政権に交代した」「NATOによるコソボ空爆がありヨーロッパに分裂への危機意識が生まれた〜ユーゴ内紛になすすべがないヨーロッパ。トルコを外に置いておくのはよくないという意識」これらの雰囲気が「イズミール大地震」という自然災害によって急速に加盟候補国へと収れん、全会一致の結論に達した
・ しかし、問題はヨーロッパにトルコ加盟に対しての明確なビジョンや政策がないまま、決定に動いていったこと。これが後まで尾を引いている。いまだにアルメニア虐殺問題、反イスラーム感情、キプロス問題などでくすぶっている
・ また、一般的な正直な意見は、「トルコはヨーロッパではない」というものだ。トルコの人口が増加し最大国になるという危惧もある
・ 講演者(八谷まち子さん)の見解は、トルコの加盟はEUにとって大きなメリットになる、存在感が飛躍的に大きくなる、というもの。理由は、「トルコの豊富な天然資源」「高齢化いちじるしいヨーロッパにトルコの若年労働力は魅力」「NATOとは違う軍隊ができる」など

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<トルコからの視点>
・ EU加盟に向かうトルコの内政と外交の変化について見る
・EUは加盟候補国の政治を変えていく。コペンハーゲン基準があり、加盟国は準備協約をし、法整備や政策を実施する
・内政では民主化改革の枠組みができ、これまでで最大の効果があった
 (1)市民社会と政党の活動の自由が拡大した 
 (2)個人の基本的人権、少数派の権利が拡大した
 (3)軍隊のパワーが縮小(軍部は放送、出版、教育も監視していたが04年~廃止)
・ 改革の成果として、国民の意識が変化した
 (1)加盟による経済的利益を重視→民主化の進展が利益という意識へ変化した
 (2)思想信条の自由があり、イスラム派が支持に回った
・ しかし限界がある
 (1)国軍は国家体制を維持する任務であり首相直属である
 (2)トルコ侮辱罪は残る
 (3)クルド語による教育はまだおこなわれていない
・ 外交ではキプロス問題での譲歩があった。統合を進める方向へ
・ EU加盟への国内の支持率は「熱烈支持」から「幻滅」へ。EUシフトを取ったが見返りが見えない。しかしEU的な価値を重視する人が増えてきた。経済よりも政治的な利益が大きかった
・ 加盟に反対している人は、EUがトルコを疎外しているという印象がある。EU諸国のなかで反トルコの世論が一番高い。加盟賛成は最も低い38%ほどである

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<ドイツからの視点>
・ ドイツ社会とトルコ系移民がこの60年でどう変化したかを見る
・ 戦後ドイツ=「ガストアルバイター(労働者としてのトルコ人)」、50年代半ばからの西ドイツ奇跡の経済復興を支えた
・ 1973年以後のトルコ人=第1世代の労働者が家族を呼び寄せ
・ 83年は帰国手当法で祖国に帰す政策
・ トルコ内の政情不安があり難民、不法滞在者としてのトルコ人のイメージに
・ 冷戦後の移民急増、旧ソ連や東欧から年間40万人も入ってくる。 庇護申請者の出身国の2位がトルコ=どうしてこんなに迫害された人が来るんだという印象に。ケルンでイスラム王国を運営した一種のカルト集団の悪いイメージも
・ ドイツの外国人数=人口8300万人の7%、そのうちの36%がトルコ人(トルコから来た人+ドイツ生まれのトルコ人という大きな集団も)
・ 国籍法の改正とドイツ社会の変容、05年の移民法で社会統合を進める=市場が求める必要な移民は容易に入れるがそれ以外はきびしくなる
・ ドイツ社会におけるトルコ系住民の現在=「エルンストロイターイニシアチブ」により双方の社会がお互いの理解を促進するプログラム


e0063212_23441693.gif*おつかれさまでした。写真は『TURKISH TILE AND CERAMIC ART』 より引用しました。
by orientlibrary | 2006-11-14 00:00 | 中東/西アジア