イスラムアート紀行

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染織に息づく 中央アジアの鮮烈な造形センス

先日、あるギャラリーのオーナー+遊牧民の織物の専門家と、中央アジア、西アジア、スペインなどの織物やタイルについて語り合う機会があり、触発されました。そのなかで染織に詳しいオーナーさんが、「中央アジアの染織は染織のオリジンであり、様々な文化が融合して美しく、大変興味を持っている」とおっしゃっていたのが印象的でした。

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また先週は、紡ぎ、染め、織り、編みなど糸系愛好家の年に一度の交流&発表会で、その熱気に圧倒されました。日本にも手紡ぎをする人がたくさんいることにびっくり。原毛からの買い物、、いいですねえ。カッコイイ。手紡ぎのものは、暖かさ、軽さ、肌触りが違います。ちょっと高くなるけど、こういう贅沢、いいじゃないですか。

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そんなこんなで染織に気持ちが傾いていたところに、中央アジアの染織の話も出て、久々に以前見た展覧会の図録などを見てみました。『シルクロードのかざり 中央アジアとコーカサスの美術』、なつかしいなあ。

これは98年の秋に千葉市美術館で開催されたものです。8年前ですが、その頃はまだまだ中央アジアの情報が少なかったので、ドキドキの展覧会でした。
実際、「この地域の美術の統括的な展覧会は日本で初めて」だったのです。初めて見るスザニや衣装の華やかさ、大胆な造形感覚に驚きました。

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『シルクロードの装い パリコレに花咲いた遊牧の民の美』は、東京都庭園美術館で04年春の開催。民族衣装だけでなく現代の人気デザイナーの作品もあったせいか、オシャレな若い来場者が多く、賑わっていました。

創造の源をエスニックファッションに求めることの多いファッションデザイナーたちは、91年のソ連崩壊以降、シルクロードの伝統的な染織や衣装に触れることができるようになり、おおいに触発されて、彼らの最新モードに取り入れています。グローバル化が進展し、固有文化の見直しや癒しの希求などの時代の気分のなかで、ファッションにおいても新しいタイプのフォークロアが時代の気分にマッチしていたのかもしれません。

96年にジョン・ガリアーノがノマドをテーマにした作品をパリコレで発表。2000年にはロシアのデザイナーがスザニを使ったドレスを発表しています。ドリス・ヴァン・ノッテンやアンダーカバーの高橋盾さんもこの地域の衣装に触発されたコレクションを02〜03年に展開。思い返せば、高田賢三さんのデザインや柄の中には中央アジア的な香りがあります。

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展覧会図録に、「中央アジアの染織技術」(中上正美子さん)という原稿がありました。そのなかで、ソ連時代には代々受け継がれた伝統産業を続けることができなかったこと、しかし政府に見つからないようにこっそりと手織りや染色の秘伝が伝承されてきたこと、その結果細々ではあるが染織の伝統技術が継承されてきたこと、独立後は伝統技術を復興しつつ生計をたてていくことの難しさに直面している現実、などが紹介されています。

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困難な時代を乗り越えてきた染織、そんな苦難の歴史をも織り込んで、中央アジアの染織は鮮やかで大胆で力強い。しかし仕事は丹念で繊細なのです。正直、最初は見慣れないので違和感がありましたが、だんだんと独特の造形世界、質感の高さに惹かれていきました。色使いは鮮烈ですが、なぜか落ち着く感じもあるのです。どこか日本の染織のセンスと似ている気がするのが不思議です。

中央アジアは、気候風土も社会も日本とずいぶん異なるのに、なにか懐かしいような気がします。それがいつもふしぎです。
by orientlibrary | 2006-09-28 03:26 | ウズベキスタンのタイルと陶芸