イスラムアート紀行

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ペルセポリスから考えた タイルってなに!?

「ペルシア文明展」(東京都美術館)、見ました。アケメネス朝を中心に先史時代からササン朝までの文明史を、イラン国立博物館が所蔵する美術・工芸品200点を通して紹介するもの。紀元前5千年紀の土器や金属器から、世界帝国アケメネス朝の豪華な宮殿の装飾品、シルクロードを通して日本とつながるササン朝のガラス器など、やはり文化の厚みがすごいなあ。

●とりわけ、展覧会のシンボル「黄金のリュトン(酒器)」などアケメネス朝の工芸品は、広大な帝国の勢いを映し出すようにイキイキと輝いていました。が、土族(つちぞく)を自認する私が見入ったのは、もちろん土もの。2点、タイル関係と思われるペルセポリス出土の展示物があったのです。「思われる」というのはあいまいな表現ですが、図録を見ても「思われる」としか言いようがなく、少々混乱しています。

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●まず、「ホルス神の飾り板 Square Plaque of Egyptian God Horus 」(↑)というブルーの陶板に注目しました。図録の説明では「青い釉薬を施した方形のタイルに古代エジプトの神ホルスを線刻画で表したもの」となっています。確かにタイルなのですが、、「タイル」と「飾り板」、その定義がよくわからず。使われた場面がピンときませんでした。

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●次に、「ロゼット文の装飾タイル Square Slab」(↑)がありました。これはタイトルは「タイル」ですが、英語(オリジナルのタイトル?)では「方形の厚板」です。「石灰岩を方形に成形し浮彫で中央にロゼット文を廃し、周縁部に蓮珠文を巡らせている」という説明がありますが、石灰岩をタイルとして扱っていいのかなあ?「ロゼット文は連続的に配置された壁面装飾の単位」とあるので、連続して全体を構成する装飾ということで、タイルになっているのかな?

●イスラム建築〜タイルに詳しい深見奈緒子さんは「イスラーム建築とタイル」(『砂漠に燃え立つ色彩 中近東5000年のタイルデザイン』)のなかで、次のように書いています。
・ 「狭義のタイルとは、釉薬がかかっていることが大前提」
・「形や大きさはともかくとして、比較的薄手の被膜材をさし、煉瓦とは区別される」
・ 「中東では、煉瓦のように比較的厚手の部材に釉薬をかけることが多々ある」
・ 「タイルを釉薬のかかった焼成建材という広義の意味でとらえていきたい」

●前提として「土もの」であることは明記されずとも明らか。要件として「釉薬がかかっていること」「焼成されていること」「建材であること」が定義のポイントになっていると思います。

●廃刊になってしまった素晴らしい専門誌『装飾タイル研究』の鼎談では、次のように語られています。
・ 「“タイル”ということばはイギリスから来ているが、イギリスでは瓦のことを言う」
・ 「もともとはラテン語の“tegulaテグラ” から。“覆う、カバーする”という意味」
・ 「屋根でも壁でも構造体を作るのではなく表面を覆っているもの=共通概念の基礎」
・ 「つまり<薄板状の焼き物で仕上げ材である>と定義する」

●ここでも明記していませんが、前提は「土もの」。そして「焼き物である」「仕上げ材である」が定義のポイントです。

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●私はこれまで、上の定義でタイルや煉瓦を見てきました。だから、「ホルスの飾り板」は、素材のクレジットが「タイル」になるのではないかと思います。ロゼッタ文のものは、やはり素材的にタイルと言えないのでは??

●しかし、「世界のタイル博物館」のサイトでは、より広義に説明されています。
・ 「タイルは、建物の壁や床を覆う陶磁器製の建築材料のことを指す(業界用語)」
・ 「広辞苑では「壁または床にはる小片状の薄板」。広い意味では材質は不問
・ 「タイルカーペット、Pタイルなどやきもの以外で正方形をした壁または床にはる小片状の薄板のものを、○○○タイルと呼ぶことがある」

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●ふ〜む、、じゃあ、石灰岩でもいいわけですか。でも、なんかそうしたくないのは「土族」だからかなあ・・・ということで、あいまいではありますが、今回はこのへんで「強制終了」!?

*写真上2点は、展覧会図録より引用。3番目は、イラン国立博物館にてorientlibrary撮影。「施釉のドアノブ?」。4番目は、同じく「スーサ(アケメネス朝の冬の都)の施釉レンガ・レリーフ」(=有名なもの。今回は来ませんでした)
by orientlibrary | 2006-08-29 16:23 | 至高の美イランのタイル