イスラムアート紀行

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インド・ラジャスターンに咲く サンガネールの優雅なブロックプリント

●相当久しぶりに北インド音楽のライブへ。シタール、タブラ、声楽、そしてカタックダンス。やはり北インドの旋律が好きだなあ。演奏者や踊り、歌の皆さん、すべて私が以前聴いていた時代よりひと回りもふた回りも世代的に若い。そして客層もそれに合わせて若い。クラシックなインド音楽を好きな層というのは、今もちゃんとあるようです。出演の皆さんはインドで勉強をしている人ばかりで、技術も高く、内容的にも浸れました。

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●さて今日はインドにちなんで、インドの布です。私の好きな布、木版捺染(ブロックプリント)のあるラジャスターン地方は古代から様々な民族が行き交い、移り住んできた土地です。東方と西方、北方と南方の文化の起点として多彩な歴史を育んできました。木版捺染の模様もラジャスターンの歴史とともに息づいてきた文化のひとつです。

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●ラジャスターンに栄えたイスラム系の王朝ムガル朝期には、ペルシアの影響を受けた独特の文化が形成されました。インドの綿織物は古代から優れた技術を誇り、インド更紗も古くから作られていましたが、より繊細なものに洗練したのは、この時期権力と富を手にしたマハラジャ(藩王)たちです。マハラジャは贅を尽くして身を飾り、腕の立つ職人を保護して、華やかで洗練された様々な布を競って作らせました

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大航海時代、インドの染織文化はポルトガルによってアジアの国々や日本へ伝えられ、そのエキゾチズムで人々を魅了しました。18世紀にはインド原綿はヨーロッパを席巻し、ムガルのデザインはその後のヨーロッパの服飾や室内装飾にも大きな影響を与えたのです。

●しかし、インド染織をめぐる状況は、イギリスの統治や独立後の社会変化によって激動しました。私がサンガネールという町の工房を訪ねた頃(95年)も、まだ厳しい状況が続いているようでした。デリーから400キロ、ラジャスターンの州都であるジャイプール、その近郊にあるサンガネールやバグルーには木版捺染の工房が集積しています。その中のひとつに「サンガネール様式」を復元した工房がありました。小さな工房でしたが、その作品は私を圧倒しました。

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「サンガネール様式」は、自然主義とペルシア風の気品あふれた花柄が特徴です。花柄の繊細な色を生かすために地色は白のものが多く、清涼感があります。木綿は透けるくらいに薄いものです。縦糸か横糸に絹が入っているものもありますが、暑いインドでは絹よりも風を通す上質な木綿が贅沢なのです。布の「透け感」を見てください。ミニアチュールに描かれたマハラジャの透ける花模様の衣装、こんな感じだったのではないでしょうか。(製法や模様の意味等については次回に続きます)
by orientlibrary | 2009-08-06 01:33 | インド/パキスタン