イスラムアート紀行

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orient的職人礼賛(1) 左官〜木版捺染

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派手な動きではありませんが、数年前から関心が高まっている職業があります。左官屋さんです。創刊50年の『月刊 左官教室』(黒潮社)という専門誌は、土関連のコアなレポートや編集長・小林澄夫さんの静かで深い文章で人気があります。私も以前、定期購読していましたが、左官屋さん以外の読者も多いようです。

小林澄夫さんのエッセイをまとめた『左官礼賛』(石風社)からは、職人とその仕事への敬意と愛情に満ちた眼差しが伝わってきます。また建築雑誌『コンフォルト』の別冊『土と左官の本』(建築資料研究社)も好評で、すでに3号が発売されています。

岐阜県高山の挟土秀平さんは、ジーンズに皮ジャンの“カリスマ左官”。NHKのドキュメンタリーでも特集されました。仕事や幅広い活動の様子はこちら=「飛騨人 伝統を辿りつつ新しい表現に挑む 左技士」。ここで紹介されている「八ヶ岳の野菜蔵」、私もちょっとだけ参加して土を塗りました。真夏の楽しいイベントでした。

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先日ある会議で、オーダーメードの話から「“職人”がきてるよね」という話題になりました。そういえば、文房具や住宅、飲食店などを特集することの多い男性誌『pen』が、今月号で「職人という仕事」という特集をしています。身の回りのものや行くお店などをデザインで選びたい(〜デザインものを持つことで“自分は違う”と思われたい)人向けの雑誌ですから、行き着くところは個人仕様でしょう。

でも、これまでならば「作家」「アーティスト」「デザイン」という切り口にしていたはず。それを「職人」としたところが雑誌的な時代感覚です。といっても、「21世紀の新しいマイスター像を世界8カ国から紹介」といいつつ、ほとんどヨーロッパの靴や傘で、いわゆる高級品。つまりは、これまで「ブランド」「デザイン」と言っていたものの言葉の焼き直しでした。少しくらい別の視点も欲しいものです。

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職人といえば、インドやイランははずせないだろう!と思ってしまいます。(あ、これは多分に好みも入ってます。どの国も素晴らしいです!!)。インドの職人については、ラジャスターン地方の町サンガネールのブロックプリント(木版捺染)に強い思い入れがあります。透けるように薄い木綿に繊細な花模様を施した「マハラジャの布」の美しさは、私のイスラム工芸好きを決定的にしました。

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夏にふさわしい涼やかな質感なのでブログ掲載したいのですが、朝の光で、と思っているうちに雨続きとなり写真が撮れず、今回は制作光景の一部と代表的文様のご紹介にとどめます。木版の細かさを見て下さい。この道具で、、。これを一色ずつ押していくのですが、ピタリピタリと決まっていきます。

日本の職人や日本人の職人観もとてもいい感じだと思います。だとえば、インターネット上の百科事典「Wikipedia」の「職人」には、こう書かれています。いい文章です。

---「職人(しょくにん)とは、自らに身につけた熟練した技術によって、手作業で物を作り出すことを職業とする人のことである。産業革命以前には、職人が生産活動の中心となっていた。現在では、工芸品(特に伝統工芸品)を作る人や大工・左官・植木屋などが職人と呼ばれる。歴史的に日本では職人を尊ぶ伝統があり、朝鮮より渡来の陶芸工や刀鍛治は士分として遇された。職人の持つ技術は職人芸とも呼ばれる。職人気質(しょくにんかたぎ)と言う言葉がある。これは自分の技術に自信を持ち、金銭や時間的制約などのために自分の意志を曲げたり妥協したりすることを嫌い、納得の行く仕事だけをする傾向、またいったん引き受けた仕事は利益を度外視してでも技術を尽くして仕上げる傾向などを指す」---

また現代のもの作り、手仕事と、それを求める人をつなぐ「職人COM」というサイトが面白い。このような購買は確実に増えていくと思います。これも以前は「インディーズ」などど言われていたジャンルと重なります。和を現代風にアレンジしたものがメインなのも、とても納得です。いい感じ。

*写真は、上から順に、マニアで楽しい『左官教室』/グジャラート地方で17世紀から用いられてきた花模様「phul buta」。ひとつの花のモチーフでつぼみ、満開の花、結実までを表している(『インド染織資料集成』より)/2点はサンガネールの工房にて

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1:前回掲載レバノンワークショップ、ダーヘル教授講演要旨が『日刊ベリタ』に掲載されています。より詳細な内容がわかります。また「今ほどレバノン国民が決意を固めたときはない。独立国家を守るのだと考えている」という思いが強く伝わります。こちらをクリック!

2:前々回紹介の田中宇さんの「右派クーデター説」に対する見解の相違、批判がいくつかのサイトでなされています。・・・パレスチナ情報センターの記事より一部抜粋します・・・ 「占領政策に関しては、「現実派(撤退派)対右派(反撤退派)」などという対立構図は存在していません。占領・支配を継続することは各派に共通していて、ありうる違いとしては、国境線を名目上は画定させて大部分の入植地をイスラエルの領土に併合し、残りの部分は厳密な監視下に置き、そこに従順な代理政権を置くことか、あるいは、全土を恒久的に軍事占領を継続させる形でコントロールすることか。あるのは「占領の仕方」の違いであって、「撤退」(=「占領の終結」)など微塵もありません」。全文はこちら
by orientlibrary | 2006-07-25 23:09 | 日本のいいもの・光景