イスラムアート紀行

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おおらか、爽やか、ウズベクブルーのイスリミ

●ブログをスタートしたのが去年の9月。イスラムタイルについて本を読んだり調べたりし始めたのも、それからです。(それまでは好き!と言っているだけだったので・・)。10ヶ月半たった今、ますます魅力を感じ、のめり込みつつあるのも事実ですが、ユーラシアの大草原を前に呆然としているような「果てしなさ」を感じています。

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(ブハラにある「ホテルアジア」壁面装飾)

●私の唯一とも言える特技は「資料の速読」でしたが、タイルには通じません。タイルの歴史だけでも、何度同じものを読んだかわかりません。それでも頭に入っていかないのは、歴史に疎いから・・。タイルは古代オリエントからオスマン帝国あたりまでで長い、、、地域もユーラシア全般に関わり広い、、、さらにタイルの場合、建築、陶芸も重なりあい、ますます呆然・・。

●タイルと陶芸の関係についても、「西アジア世界の装飾タイルは装飾陶器と近い関係がある」「材料や焼成、釉薬、そして装飾技法や描いた文様など、基本的な作り方は同じである」(「イスラームの陶器と彩釉タイル」佐々木達夫)ということは、読んではいました。しかしこれを実感できたのは、5月に訪問したウズベキスタンでした。

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(「ホテルアジア」。陶芸産地であるリシタンの青の魅力が生きる)

●ウズベキスタンでは歴史的建造物の修復に多くの陶工が従事しています。今回お世話になったリシタンの陶芸家アリシェル・ナジロフさんは優れた絵付けの技術を持つ陶芸家で、工房では皿や壷を作っています。そして並行してモスクやマドラサなどを飾る新しい陶板の製作にも取り組んでいました。

●巨大な建造物の壁面すべてをタイルで覆ったティムール時代にはタイル専門の職人がいたのでしょう。現在は単独のタイル職人がいるのかな?イランでも、『ペルシアの伝統技術』という本には専門の「タイル職人」の仕事が詳しく紹介されているのですが(調査時期は1930年代)、現在はどうなのか、気になるところです。


e0063212_1335760.gif●アリシェルさんの工房では、修復だけではなく、新しい建築物、たとえばホテルの外壁なども手がけています。(→ 写真右は、ホテルアジア外観)

●世界遺産でもあるブハラ旧市街、タキと呼ばれるバザールの手前に昨年オープンした「ホテル・アジア」(→)は、レンガと陶板の歴史的なスタイルの外観で、中世からの街並みにしっくりと馴染んでいます。このタイル装飾をおこなったのがアリシェル氏の工房です。


e0063212_133399.gif●ホテルのオーナーは、中世ブハラ風の外壁を作ろうと、最初にイランに行ったそうです。でもウズベキスタンの色=青がなかった。イランの青は強くて目立つ青なのです。黄色が入るのも特徴です。(← 写真左は、例として:イスファハーンの王のモスクのタイル)

●ウズベクの青はもっとクリアで爽やかです。オーナーはブハラやサマルカンドの工房も訪ねたけれど納得できなかった。リシタンまで来て、ようやく「これだ」と思ったのだそうです。

●ホテルアジアの壁面は、明るいウズベクブルーの陶板で彩られています。のびのびした植物文様にはモダンな味わいがあります。わかりやすい場所なので、ブハラ訪問の際には、ぜひご覧下さい。現代のウズベキスタンの陶芸の一端に触れられると思います。


連続した植物文様は「イスリミ」と呼ばれます。アリシェルさんは、このイスリミが一番好きなのだと言います。リシタンにある専門学校の内部壁面もアリシェルさんの仕事です。イキイキしていて、とても好きな陶板です。

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(リシタンのある建物内部の壁面。大胆な植物文様イスリミが印象強い)

●現在、コーカンドの建造物の修復も手がけているアリシェル工房では、職人さんたちが炎暑のなか、一途に製作をおこなっていました。私も現地を訪問するなどの体験を重ねながら、タイル修行を続けていきたいと思います。
by orientlibrary | 2006-07-17 01:35 | ウズベキスタンのタイルと陶芸