イスラムアート紀行

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イスラムの地の西から東から 14世紀初頭の装飾タイル

カテゴリーを地域でくくり直してみました。「西南アジアのタイルの美」というのは、主に(現在の)パキスタンのものなのですが、ブログを始めたとき最初はこれにしようと決めていたほど、気になるタイルです。理由のひとつはマイナーだということ。綺羅星のようなイランやトルコ、評価の高いティムール期のタイルなどと比べて、認知度も評価もかんばしくないのです。

今回あらためて見てみると、「シャー・ルクネ・アーラム」(ムルタン/1320〜24)も「ビービー・シャビンディー」(ウッチュ/1493)も、やはり相当迫力あるなあと思いました。建築もタイルも、セルジューク朝やイラン、そして中央アジアの影響を受けているようですが、それでもインド・イスラム独特の濃く、かつあっけらかんとした融通無碍な世界を感じるのです。

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(シャー・ルクネ・アーラム/orientlibrary)

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(シャー・ルクネ・アーラム/orientlibrary)

装飾タイルの頂点は14〜15世紀とも言われますが、ムルタンのタイルもこれと同時代です。インド・パキスタンの歴史で言うと、イスラムの5つの王朝がインドを支配したデリー・スルタン朝のなかのトゥグルク朝(シャー・ルクネ・アーラム)とローディー朝(ビービー・シャビンディー)の時代に建造されています。勢いを増すイスラム世界の東端にあって、イスラムの建築様式と、その装飾の流行であったタイルを、がんばって取り入れたのではないでしょうか。どこの職人が関わったのか、興味のあるところです。


シャー・ルクネ・アーラムと同時代、タイル装飾が次第に花開き始めた14世紀初頭、イスラム世界の西端は、モロッコ(マリーン朝)です。フェズなどモロッコのタイルも素晴らしい。アルハンブラにつながる色やデザイン、仕事の細かさが見事です。「アル・アッタリン・マドラサ」

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(フェズ/1325/「THE ART OF ISLAMIC TILE」より引用)

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(フェズ/1325/「THE ART OF ISLAMIC TILE」より引用)

イランとトルコ。以前、イルハーン朝の「ソルタニエドーム」(1307〜15)のタイルを1点ご紹介したので、今回は「SHRINE OF SHAYKH BAYEZID」 (BASTUM/1313)。色のせいか、枯淡といっていいくらいの味わいがありますね。ヤズドのフライデーモスクなども同時代です。

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(SHRINE OF SHAYKH BAYEZID/「COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE」より引用)

トルコは、この頃さまざまな勢力が覇権を競っていたせいか、14世紀初頭のものは代表作が見あたりません。13世紀末のセルジューク朝のものを。「サーカリ・マドラサ」(コンヤ/13世紀末)。青の幾何学模様が美しい。

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(サーカリ・マドラサ/「THE ART OF ISLAMIC TILE」より引用)

14世紀後半になると、マムルーク朝のカイロやダマスカスなどでも、ファサードやミヒラーブなどにタイルが使われています。シリアの染付け風のタイルも東西が融合した雰囲気で個性的です。

そしてこのあと、14世紀後半から15世紀はティムール時代のタイルがサマルカンドやブハラなどでのイキイキと展開していきます。時代で追うと、時代の特徴や地域の特徴も見えてきます。時代シリーズにも今後挑戦していきたいと思います。
by orientlibrary | 2006-06-28 03:22 | タイルのデザインと技法