イスラムアート紀行

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鮮烈に沁みてくる 草原を駆け抜けた少女の記憶

『らくだの涙』『天上草原』『天空の草原のナンサ』、、、これまでもモンゴルの映画には泣かされてきました。そしてまた、、。ウズベキスタンから東に少し戻り、モンゴルの少女と探検家の出会いの物語について書きたいと思います。

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正確には物語、ではなく、ドキュメンタリーです。一切のナレーションも効果音もなく、モンゴルの草原の音と会話だけ。この音がいいのです。搾乳のギュッギュという音、馬の駆ける音、羊が草を食む音・・草原の音に心が騒ぎます。そして対象に触れんばかりに近く寄った強い映像。引き込まれます。

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タイトルは『プージェー』、プージェーとは探検家が出会った草原の少女の名前、探検家とは『グレートジャーニー』で知られる関野吉晴さんです。先日は関野さんのトークもありましたが、長年に渡って過酷な旅を続けているのが意外なほど、小柄で柔和な印象の方でした。

世界中を旅した関野さんは、たくさんの人と出会います。そのほとんどは、辺境の地で暮らす無名の人たち。そのなかでも特に鮮烈な印象を残したのがモンゴルで出会った少女プージェー一家との交流だといいます。

「おばあちゃんスレンさんの心配りと優しさは心に沁みました。かつて豊かだった草原の遊牧生活への郷愁と、現在の遊牧民の苦しい状況と孫たちの将来について熱く語ってくれました」

「苦境の中でも、母親エチデメグネグさんの外来者に対する海のような心の広さは変わりません。困難さを避けるのではなく、うまくつきあっていく姿が印象的でした」

「そしてプージェーのひたむきで独立心旺盛で、大人やよそ者に媚びない生き方。子供らしさの中に凛とした姿に心奪われながらつきあってきました」。  


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草原での6歳のプージェーとの出会いから始まり、家族との交流を深めていく関野さん。けれども、残念なことに『うるるん滞在記』のようなハッピーエンドでは終わりませんでした。草原を襲ったゾド(雪害)、市場主義経済が進展する中での格差、遊牧民の生活は追いつめられていきます。

「モンゴルの現代史の中を短く、鮮烈に走り抜けたプージェー一家を通して、モンゴル草原の現在を見て欲しい」という関野さんの熱く強い思いを感じました。

悲しい、でも、単に悲しいだけではない。草原にはまた風が吹き、荒れ果てた地にも緑が芽吹き、凛として暮らしていく人たちがいる・・・そう感じさせるところに、制作者(監督:山田和也さん)のスタンスをみる思いがしました。

上映は、東京都東中野の「ポレポレ東中野」にて7月7日まで。(映画の公式サイトもポレポレ〜と同様)
*写真は、チラシ及びパンフレットより引用しました。
by orientlibrary | 2006-06-19 23:47 | モンゴル