イスラムアート紀行

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「見る人は楽しむ」と名付けられたイラクの都、サーマッラー 

イラク・サーマッラーのシーア派聖地アスカリ廟が、2月22日爆破されました。その後のスンニ派とシーア派の間の衝突が報道されています。爆破前の黄金のドームの写真と爆破されたあとのがれきにようになった写真を見ました。一瞬にして廃墟になった廟・・・。サーマッラーについて少し調べました。

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(爆破される前のアスカリ廟と廃墟となった同廟/朝日新聞2月23日より引用)

「古代末、9世紀という時代に、サーマッラーはイランからチェニジアに至る広大な世界で、政治的・経済的・文化的に重要な位置を占めた 。宮廷の繁栄は豪奢を極めたという。当時の建造物の跡が今もティグリス川に沿って残る。(中略)都市遺跡の範囲はローマよりも広く、考古学研究上の重要さは他の追随を許さない。」「カリフ・ムスタムは新たな都市に、スーラマンラー(それを見る人は楽しむ)と名付けた」「その賑わいと美しさは旅行者等の絶賛した記録が示すところである」(佐々木達夫/「かりそめの都 サーマッラー/『季刊 文化遺産 華麗なイスラム美の世界』」

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(サーマッラーのカリフ・アル・ムタワキルの尖塔(『季刊 文化遺産 華麗なイスラム美の世界』より引用/財団法人島根県並河萬里写真財団))

「チグリス川、ユーフラテス川流域は有名なモスクや遺跡が数多くある地域です。まず、バグダード。ここにはサーマッラーのマルウィーヤ(螺旋)のミナレットがあります。この螺旋のミナレットはほんとうにすごい。まさに天へとどかんばかりです。これがれんがでできているわけですから驚きです。またそのとなりの大モスクは城壁だけが残っていますが、これまたれんが造りで、壁の厚さだけでも2メートルはあります。このとなりにグレート・モスク、アスカリ・モスクという黄金のモスクがあります。このモスクでは手で粘土をこねて修復していました」(山本正之・「イスラーム・タイル紀行」/『イスラームのタイル』/INAX)

タイルを愛し世界を訪ね歩いた山本正之さんの「手で粘土をこねて修復していました」に、グッときてしまいました。爆破されたアスカリ廟は米軍のサーマッラー攻撃時にも無事だったのだといいます。

「2004年、アメリカ軍は、バグダッドの北方60マイルにあるサマッラにおいて、イラク政府の要請のもとに作戦を展開すると発表した。(中略)人口25万人と推計されるサマッラ市への攻撃は、真夜中になって始まった。戦車と米軍機が市内を砲・爆撃し、住民は家のなかに身をひそめた。大きな爆発音と自動的な銃撃音が、散発的に午後にも続いた。家は潰され、車は焼かれた。シーア派教徒の聖地であるイマーム・アリ・アル・ハヂ廟とイマーム・ハッサン・アル・アスカリ廟の周囲から煙が立ちのぼり、心配された。だが、廟は損害を受けず、イラク軍特殊部隊がモスクを奪い、25人の武装勢力を捕獲したと第1歩兵師団の広報官オブライエン少佐が発表した」(イラク情勢ニュース/MSNBCニュース2004.10.01)

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(以前のサーマッラーの街 /『季刊 文化遺産 華麗なイスラム美の世界』より引用/財団法人島根県並河萬里写真財団))

イスラムタイルにとっても重要な地であり、ラスター彩が発掘され、中国の影響を受けた美しいイスラム陶器が生まれた土地、サーマッラー。チェニジアのカイラワーンモスクのミフラーブまわりのラスタータイルも、この地を統治していたイラクから運ばれたものと言われています。

「イスラーム建築最古のタイルは、イラクのサーマッラーから発掘された9世紀アッバース朝のもので、正方形や六角形の単色タイルと正方形や八角形のラスタータイルがある」(深見奈緒子/「イスラーム建築とタイル彩タイル」/『砂漠にもえたつ色彩 中近東5000年のタイルデザイン』)

米軍の攻撃にも無事だったのに、聖者廟を爆破するって、、。スンニ派とシーア派について書かれた本もかなりありますが、むつかしくて私にはどうもストンときませんでした。以前に一度ご紹介しましたが、ジャーナリスト田中宇さんのレポート(「イラク日記(5) シーア派の聖地」)が私にはもっとも興味深かったです(アスカリ廟とは別の廟ですが、聖地の雰囲気が伝わる写真も紹介されています)。ただ視点はかなりユニークなので、宗教等の専門の方にはご異論あるかもしれません。
by orientlibrary | 2006-02-25 01:30 | 中東/西アジア