イスラムアート紀行

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アイユーブ朝の青い陶器 〜「ラッカ」の地層にあるもの

戦略的かつ直裁的に「イスラム」を名乗られてしまったこと。世界の穏健なムスリム、ムスリマにとって大きな不幸であり、イスラームの地や人々や工芸やたくさんのことを愛する人々にとっても辛いことが多い日々であると思います。私もまた憤懣やるかたない気持ちになることがあります。

ラッカ(Raqqa)に行ったことはありません。でも、書籍を通してではありますが、憧れの地名でした。アイユーブ朝時代、青の陶器で一世を風靡した街。青釉黒彩、白釉藍彩、ラスター彩。描かれるのは、のびやかな植物や動物、力強いカリグラフィー。

ISが首都にしたという「ラッカ」とは、このラッカですよね??

ラッカは、今のラッカだけではない。それだけを書きたくて、急遽投稿します。歴史にはさまざまな変遷があり、もちろん栄枯盛衰もあるけれど、でもイスラム陶器生産の中心地であり、交易によって栄えた時代もある。そのことを書きたかった。予備知識はありません。wikipediaなどから抜粋、引用(「  」内)しました。

写真は、『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』(Jenkins-Madina, Marilyn / 2006)より。青い陶器を眺めていた本でした。

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(『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』(Jenkins-Madina, Marilyn, 2006))

『Raqqa Revisited: Ceramics of Ayyubid Syria』はメトロポリタンミュージアム所蔵のラッカウエアについての書籍であり、同館のサイトを見ると、多数の写真がありました。表紙を含め5点はスキャンしたもの。1点はサイトからの引用です。


 「ラッカは、シリア(シリア・アラブ共和国)北部の都市で、アレッポの160km東にあり、ユーフラテス川中流域の北岸に位置する。ラッカ県の県都。人口は190,000人から200,000人と推計されており、シリア第6位の都市」

  「ラッカはアレッポとデリゾールを結ぶ道路や鉄道が通り、ユーフラテス中流の農産物を集散する農業都市である。ラッカ西方にはユーフラテス川をせき止めたダム湖・アサド湖が広がる。ラッカのすぐ東で北からユーフラテスに合流する支流バリフ川があり二つの川沿いに農地が広がる。バリフ川を北へ遡るとトルコ領に入り、ハッラーンやウルファの平原に至る」

 「12世紀半ばのザンギー支配下(ザンギー朝)から13世紀前半のアイユーブ朝初期にかけての時代、ラッカは農業と手工業の生産力をもとに第二の繁栄期を迎える。この時期、ラッカの名を世界に轟かせたのはラッカ・ウェア(Raqqa ware)と呼ばれる青い釉薬をかけた陶器であり、イスラム陶芸の中心地のひとつであった

  「アイユーブ朝は、12世紀から13世紀にかけてエジプト、シリア、イエメンなどの地域を支配した スンナ派のイスラーム王朝。アイユーブ朝の政治体制は安定していなかったものの、エジプト・シリアの経済は順調に成長を遂げていく」

 「アイユーブ朝では農産物の生産量を増やす様々な政策が実施され、農地の灌漑を容易に行うために運河の開削が行われた。アイユーブ朝時代のエジプトではナイル川を利用した農業が経済の基盤をなし、小麦、綿花、サトウキビの栽培が盛んになった」

  「十字軍勢力との抗争がアイユーブ朝とヨーロッパ諸国の経済関係の発展を妨げる事はなく、二つの異なる文化の接触は経済活動、農業をはじめとする様々な分野において双方に良い影響をもたらした」

  「アイユーブ朝の領土内にはヴェネツィア人の居住区が設置され、領事館の開設が認められる。ショウガ、アロエ、ミョウバン、そしてアラビア半島とインドからもたらされた香料、香水、香油がヨーロッパに輸出され、グラス、陶器、金銀細工などのイスラーム世界で製造された工芸品はヨーロッパで珍重された。アイユーブ朝と十字軍の間に生まれた交流を通して中東・中央アジアで生産された絨毯、カーペット、タペストリーが西方に紹介され、ヨーロッパ世界の衣服や家具の様式に新しい風を吹き込んだ。また、アイユーブ朝およびザンギー朝との交易によって、ゴマ、キャロブ、キビ、コメ、レモン、メロン、アンズ、エシャロットといった植物がヨーロッパにもたらされた」

ラッカ陶器の画像です。

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(ランタン/13世紀初期/推定ラッカ/土と石英によるフリットウエア、コバルト青下絵付け、ラスター彩/四角形にドームが乗っている。四隅は柱、その上に梨の形状の装飾)

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(水差し/13世紀初頭/ラッカ/ラスター彩/クーフィー体で「al-izz」(栄光)の銘文が描かれている。植物模様、格子状のシルエット。茶色の中にラスター彩、コバルトブルー、薄い緑)

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(青釉黒彩鉢/12世紀/ラッカ/黒彩、花飾りのある「alif-lam」モチーフ)

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(青釉黒彩平縁鉢/12世紀項半から13世紀前半/ラッカ/反転した二羽の孔雀が描かれている。黒で彩画し青釉をかけている。口縁が平縁をなしている)

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(白釉藍彩鉢/13世紀/シリア/下絵付け/中心に八葉のロゼット模様、刀剣形の植物モチーフ、放射状のアラベスクのメダリオン)

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(瓶/12世紀/ラッカ/ラスター彩/円筒状首と反った縁、反転した梨のかたちの瓶 〜同館のサイトより)

 Sotheby's サイトでのRAQQA WARE  こちらにも画像あります。

地域の人々の安定と平和を祈っています。現在起きていることについて思うことはありますが、現時点では留めておきます。
by orientlibrary | 2015-01-21 22:40 | 世界の陶芸、工芸