イスラムアート紀行

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秋の民芸・工芸見て歩記&イスラーム建築本

百貨店にて、大規模な民藝展、工芸の催事

以前も少し書いていますが、このところ、民芸・工芸的なものに触れる機会が増えてきました。民芸や工芸をテーマとした展覧会、催事、若い世代の工芸のショップ、いずれも人が多いのに驚きます。

(*「民藝」と「民芸」については、展覧会名や書籍での「民藝」使用はそのままに。その他は民芸と記載しました)

日本各地の産地やメーカーが出店しての大規模な「用の美とこころ 民藝展(展示・即売)」(日本橋高島屋(終了)から横浜、京都、大阪高島屋へ巡回)。日本橋に2回行きました。トークイベント開催日だったこともあると思いますが、かなりの人出。トーク会場も満席で、皆さんお話に聞き入っていました。

「高島屋は(民藝運動に賛同し)、昭和9、10年に、彼ら(柳宗悦など)が収集した全国の民藝品の大展覧会を開催。大きな話題を呼びました」「70余年の時を超え、再び大規模な民藝展を開催することになりました」とのこと。特設会場に加え各階でも民藝特集があり、見応えがありました。

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(写真と解説は高島屋プレスリリースより、左上から:瀬戸本業窯(丈夫で飽きがこないシンプルな美しいデザイン。馬の目皿は白州正子も愛用)/倉敷ノッティング(経に木綿糸を張りウールや木綿の色束を結ぶ)/八尾和紙(江戸時代から伝わる伝統工芸。富山の薬売の包装紙や袋から発展)/倉敷手織緞通(い草の産地倉敷で作られていた敷物に柳宗悦が目を留めたことから始まった)/静岡型染(江戸時代に庶民の浴衣の染色技法として発展)/芹沢型角脚バタフライテーブル(松本民藝家具製作))

銀座松屋の「銀座・手仕事直売所」(9月30日まで)。

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(同催事サイトより/「作家、クラフトマン、職人、デザイナー、産地、小規模工場など、ものづくりに一途な各地の作り手が生み出す、今を感じる暮らしの品々。10年経っても暮らしの中で輝いている、そんな「手仕事」を全国各地から選び、作り手が直接ご説明して販売する「直売所」スタイルでご紹介いたします」)

この他、関西の百貨店など各地で暮らしの器や工芸の催事が開催されているようです。活気がありますね〜!


若い感性、器と道具のお店

そして、数年前から各地にオープンしている新しいセンスの民芸や工芸のショップも、とても楽しいです。器が好きで始めたというオーナーたちは若い世代が多く、勉強熱心で、産地や作家さん職人さんときちんと交流している印象(FBやサイトなどから)。次々と魅力的な企画展をおこない、味わいがありつつ日々の暮らしに使いやすい器や道具を、良心的な値段で提供しているように感じます。

ときどき覗かせてもらっている「工藝 器と道具 SML」(東京・目黒)。清新な民芸の動きを感じさせてくれる企画展は、いつも発見があります。若い作家さん・職人さんの作品が、とても魅力的。ここで購入したもの、すべて満足して使っています。在廊の作家さんも気さくに話をしてくれるし、和気あいあいというか、全体が心地いい印象です。

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(SML。企画展開催時にはテーマに合う食事を提供するなどイベントもいろいろ)

なかなか行けないのですが、「工芸喜頓」(東京・世田谷)は、品選びも、それぞれの器の魅力を引き出したディスプレーも、センス抜群。店内空間やオーナーのライフスタイル(食と器など)は、雑誌などでよく紹介されているようです。以前も書きましたが、素朴すぎず、スノッブにならない、際(きわ)のようなセンスは、緊張感を孕みつつ、ほっこりと温かです。

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(工芸喜頓。こちらは2013年の写真)


博物館での展示

さらに、博物館です。日本民藝館(東京・駒場)では、「カンタと刺子 ベンガル地方と東北地方の針仕事」を開催中(11月24日まで)。

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日本民藝館WEBサイトより)

カンタと東北の針仕事、偶然というか、両者ともに以前ご縁があり、素晴らしい手仕事に触れさせていただいたことのあるものでした。

カンタについては、「美しい世界の手仕事プロジェクト」(2008年)の「バングラデシュの宝物」企画展示で、望月真理さんのコレクション(及び真理さん製作のカンタ)の世界に浸りました。また東北の針仕事については、「東北の手仕事」(2011年)にて、コレクター山崎氏の素晴らしい「こぎん刺し」コレクションはじめ、暮らしのなかの手仕事を知ることができました。

民藝館の展示では、カンタのさまざまな表情に触発されました。「カンタとは、旧ベンガル地方で作られた仕事をいいます。中央に蓮の花を、四隅にペーズリーをいれるのを基本とし、生命の樹や花、魚、馬、象、虎、孔雀、蛇などの動植物をはじめ、神様を乗せて練り歩く山車やハサミ、ナッツカッターなど、身近な品々まで生き生きと描かれています」(民藝館HP)。

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(家族連れ、カップル、シニアグループなどで賑わう)

カンタの多様さ、デザインの構図、モチーフの表現の多彩さが新鮮でした。また、白地の余白も印象的でした。「布は使い古しですが数枚重ね、文様の部分は色糸(茜や藍)で刺繍し、地の部分は白糸を埋め尽くした清楚な布です」(岩立フォークテキスタイルミュージアムHP)。


東北地方の刺子展示も多彩でした。そう思いつつ、「東北の手仕事」に提供いただいた「こぎん刺し」コレクションが、本当に圧巻の、通常なかなか見ることのできないコレクションだったことを、再認識しました。こぎん刺しに魅せられたコレクター・山崎氏。惜しげなく見せてくださってありがとうございました!

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(「東北の手仕事」(2011年)、山崎氏コレクションより)

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(「東北の手仕事」(2011年)、山崎氏コレクションより。右下は待合せ場所だった有楽町のビルで、チラッと見せてもらったコレクションに、もうたまらず、その場で広げてしまった面々。警備員さんが何度も来られましたが、「すぐ片付けます!」を3回くらい。その後当然追い出されました)


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また今回、民藝館展示にカンタコレクションを提供している「岩立フォークテキスタイルミュージアム」(東京・自由が丘)では、「パキスタンの民族衣装 沙漠と山岳地帯の手仕事」を開催中(12月20日まで。木金土のみ開館。詳細はHPで)

シンド、パンジャーブ、バローチスターン、北西辺境州(現ハイバル・パフトゥーンフー州)の、婚礼用衣装、被衣、掛布、敷物、壁飾りなど。点数は限定されますが、素晴らしい手仕事が厳選されていました。久々にパキスタンの手工芸に触れ、眼も心も満たされました。


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私家版 『イスラーム建築 その魅力と特質』


建築家・神谷武夫さんの著書、発行書である、私家版 『イスラーム建築 その魅力と特質』。長年、“幻の書”になっていましたが、先日、神谷さんの事務所にうかがい、ゆずっていただくことができました。

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(正方形。布装本の美しい本。内容は「イスラーム建築の名作/イスラームの礼拝空間/材料・構法・装飾/建築種別とその集合体/イスラーム建築の特質」の5章。神谷さん撮影の写真が500点。建築家の撮る写真は見るべきところが示されていて勉強になります)

私のような怠惰でいい加減な人間からすると、神業のような本作りであり、出版です。私家版に至った経緯については、外部の人間が簡単に説明できるものではないので、ご関心のあるかたは、リンク(=神谷武夫とインドの建築ホームページの中の当該ページ)をごらんください。

* 全体の経緯と内容はこちら
* たった1部だけ残ったゲラ刷りをスキャン、両面コピー印刷して布製本、100部限定、そのプロセスなど

私はイスラーム建築を飾るタイルに惹かれたことで、イスラーム建築やかの地の工芸にも触れるようになりました。けれども、日本では日本語で書かれた(日本で出版された)イスラーム関連の書籍は多くはありません。いかに少ないか、下の検索結果をごらんください。

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(参考:一例として、Google「イスラーム建築」検索では、ある図書館の蔵書検索が。状況が垣間見えるのでは。発行年も古い)

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(参考:同じくAmazonで検索。左上→左下→右上→右下の順。深見奈緒子さんのファンなのでご著書はだいたい持っています。が、それ以外は「地球の歩き方」とか世界史の本という選択肢、、)

でも、、本当に魅惑なのです、イスラームの建築や工芸。イスラームの建築について、私にはとても語れないので、神谷さんの訳書『イスラムの建築文化』(アンリ・スチールラン著/神谷武夫訳/1987年/原書房/絶版で入手困難)の解説文、素晴らしい推選文より、その魅力について、抜粋引用させていただきます。

* 「イスラム文化の粋は 建築にあるといってよい。そこには、あらゆる芸術的表現の総合があり、そのようにして実現される空間にこそ、人びとの信仰と知力と感性が凝集しているからだ」(推薦文−板垣雄三氏)

* 「絢爛たるアラベスク模様を張りめぐらした イスラム寺院を訪れた時、まず覚えた虚無感、しかし やがてその背後に隠された、極力 物質性を排除して 無限に複雑な幾何学模様を刻みこんだ豊穣さに圧倒された。一点の瑕瑕も許さぬ整然たる配列に 軽いめまいを覚え、やがて 空間の恐怖ともいうべき感動に打たれた。イスラム世界は 私にとって全く異質の空間体験であった」(推薦文−茂木計一郎氏)

* 「数多いであろうイスラム建築同好の士と同じく、私もその建築のファンであるからだ。それもかなり強烈なマニアであるかも知れないからだ。実はマニアなんて枠を踏み越えて、もう病気みたいなものになっているのかな、なんて恐ろしい自覚だってある。(中略) イスラム建築の病気というのは、スグにミナレットを建てたり、ドームを並べたり、あるいは タイルを装飾的に使ったりという底の浅いモノから、もっと深く ジンジンとするくらいに、建築という形式への想いを 揺り動かしてしまうものまで幅のあるものだ」(< 書評 > 石山修武氏)

こうした書籍が、もっと手に入りやすいかたちで世の中に出ていたら、状況も少し違っていたかもしれません。少しずつ変わっていくといいなと思います。

最後にタイル写真を一葉。
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(ジャディ・ムルク・アカー廟/シャーヒズインダ墓廟群/サマルカンド)
by orientlibrary | 2014-09-28 20:59 | 中央ユーラシア暮らしと工芸