イスラムアート紀行

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タイルににじみ出る インド・イスラムのDNA?!?

●今日は超〜!まじめに!研究編です〜!前回、久しぶりにラホールの写真を開いて、ムガル、ムガルと騒いでいた頃の私を思い出しました。<ムガル=インド(国)×イスラム(宗教)×中央アジア(出自)×ペルシャ(文化的影響)=好きなテイスト>って感じで。端正なタージマハル、優雅なムガルガーデン、華麗な植物模様、繊細な更紗、優美な工芸。インド・イスラムには、本当に美しいものがたくさんあります。そう思うと、やはりラホールのタイルだけでは片手落ちのような気がしてきました。

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●写真(上)は、ラジャスターンの宮殿をホテルにした「サマードパレス」の広間〜廊下に描かれた壁画の花模様。壁画には、地面から立ち上がる草花や灌木、風になびく花木、樹木などのさまざまな植物模様、そして鳥、アラベスクなどが、隙間なく描かれています。ムガルです。

●前回記事のラホールのタイルのモチーフはこのような壁画と重なります。しかし、残念ながら色の組み合わせにちぐはぐ感があるのは否めないと思います。

●写真(中)は、タージマハルの優美さを象徴する貴石、色石の象嵌です。真っ白の大理石に刻まれた可憐な花模様やアラベスクこそ、ムガルの工芸の神髄だと思います。

●そして前回気がついたのは、ムガルのタイルはこの象嵌の手法にのっとって作られたのではないかということ。時代的にはタージマハルはラホールの建造物より10〜20年くらい後(1654)なのですが、それ以前からアグラの建造物に象嵌は見られ(1626/イティマード・アッタウラ廟)、それはラホール・フォートのタイル装飾(1631)よりも前になります。

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●インド建築について数々の名著を書いていらっしゃる神谷武夫さんによると、「インドの主要な建築は石造であるにもかかわらず、木造的な原理で建てられている」「インド建築は木造起源であって、中世に石造建築が主流になってもなお、木造的な架構と表現に執着した」「石を木のように使い続けた」と分析(神谷さんHPより)されています。

ラホールのタイルは、ムガルの壁画を象嵌の感覚で作ったように思えます。写真(下)は、ウズベキスタンの「アブドウアリアジズハーン」のマドラサのモザイクタイル装飾(1651)で、ムガルインドの影響を受けて作られたものです。また、ムルタンでもラホールの影響の花模様のタイルが見られます。でも、何か違う。

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●ウズベクのタイルは密度があり精緻で、いかにもタイルモザイクだし、ムルタンのものはいわゆる絵付けタイルで、一枚のタイルに絵を描いたものです。つまり、もともとの花模様をタイルで表現するには、タイルなりの手法があったのではないでしょうか。それをラホールでは、象嵌的なものを引きずっておこなったような気がします。

●そこに、神谷先生が指摘されるような、インドの「体にしみこんだ美感覚の方が重要」というような独自の感性が反映したのか。それともタイルや陶芸の技術や土、焼成温度の限界があったのか??

しかーし!!(正気にかえって)、ド素人の私の浅薄な推測です。学術的裏付けは、いつものようにありません。こういうのって、いつか赤面なんだろうなあ・・・でも、気になって見比べてしまうんですよね。これが「業」ってものでしょうかあ?!かるま。

*写真は、(上)サマードパレス壁画(奥行きがなく、こんな角度でしか撮れなかった)、(中)タージマハルの花模様の象嵌(『TAJMAHAL』/ABBEVILEEPUBLISHINGより引用)、(下)ムガルの影響を受けたウズベキスタンのタイルモザイク例(『The Art of the Islamic Tiles』/Flammarionより引用)
by orientlibrary | 2005-12-15 03:14 | ムルタン・蒼のタイル