イスラムアート紀行

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秋の瀬戸で本業タイルと出会う

瀬戸への小さな旅。
日本のやきもの産地を少しずつでも見て歩きたい。そして最近見始めた日本のタイル。瀬戸本業タイルは、やはりもう少し知りたい。「河井寛次郎の陶芸」展(瀬戸市美術館)も開催中。行ける時にはどんどん行こう!土砂降りに見舞われましたが、土味はたっぷり。今回は写真中心に、ざくっとご紹介。だんだん調べていきたいと思います。

雨自体は、けっして嫌いじゃありません。雨の日に本を読むのが好き。小雨なら散歩も好き。雨上がりの植物や景色も瑞々しくて好き。でも朝から丸一日土砂降りの散策、スニーカーはずぶ濡れ、地図はヨレヨレで見えなくなるし、寒い。

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ぼやきたくもなるけれど、やきものは雨の中で、ますますツヤツヤときれいなんですよね。いいなあ。見とれます。「窯垣の小径」はやきもの散歩道。塀や壁に埋め込まれた古い窯道具などが様々な模様を描きます。使い込まれたものは美しい。味わいがある。四季それぞれいいと思いますが、落葉の秋は色が合います。常滑の土管を積んだ散策路もいいし、土と土のものは相性がいい。茶系、緑系は落ち着きます。

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窯垣の小径の道沿いにある「窯垣の小径ギャラリー」。雨の中、行く場所もなく途方にくれていたら、ギャラリーの方が小走りで来て早めに館を開けてくださいました。助かった〜。ギャラリーは、江戸時代の旧窯元のお屋敷を利用。地元作家の作品を展示販売しています。スタッフの皆さん(出展作家さん)が親切で、ほっこり和みます。

ギャラリーから少し歩いたところにあるのが「窯垣の小径資料館」。「建物はもと「本業焼」の窯元であった寺田邸を、そのままいかす形で改修したもの」だそうです。こちらに本業タイルが20点ほど展示されていました。資料館パンフレットより、「本業タイル」についての説明を引用させて頂きます。

——— 明治時代の日本における洋風建築の流行と共に「敷瓦」を前身とする「本業タイル」がさかんに使われるようになりました。これは「転写」技術の向上により、同一図柄で量産されたわが国の近代タイルの第1号ともいうべきものでした。本業タイルは、本業(陶器)の伝統的な調合による土を使い、土の表面の粗さを覆うために磁器の土を使って表面が化粧してあり、銅板転写による図柄の美しさとも相まって陶器でありながらあたかも磁器のように繊細で硬質感と近代感を兼ね備えたものとなっています。 ———

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(写真は青のものばかりですが、茶系緑系もあります。本物をこんなにたくさん見るのは初めて。左右対象、幾何学と植物文様を合わせたもの等、このデザインの出自がピンと来ませんでしたが、ヴィクトリアンタイルの影響だと気づきました。けれども日本らしさが滲み出したようなものもあり、その混合が興味深いです)

資料館では、本業タイルが貼られた浴室及び便所も当時のままの姿で紹介。一枚で見るタイルとはまた違った印象です。当時はとてもモダンな空間だったのでしょうね。

時間は前後しますが、「瀬戸蔵ミュージアム」の展示タイルはこちら。

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(瀬戸蔵ミュージアム。タイル生産の道具展示。代表的なデザインのパネル等)

名鉄尾張瀬戸駅から数分の複合施設「瀬戸蔵」(店舗、飲食、ホール等)、その2階と3階が瀬戸蔵ミュージアムです。吹抜けになっていて広い。陶房の再現ややきものの歴史等、日本のやきものビギナーの私にはとても有益で楽しいミュージアム。熱中しました。

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(瀬戸蔵ミュージアム。モロ(陶房)の再現。すごい!)

モロ(陶房)の再現がすごい。地元の人には見慣れた光景かもしれないけれど、小物など細部まで凝った展示は感動ものでした。かつ、陶器生産の行程や設備、道具を知ることができる。やはり、実物があるとわかりやすいです。一つのモーターを動力にして、ロクロなどいくつもの機械が動く。モーターという言葉の当時の輝きに思いを馳せました。

生活道具展示室では生産工程が具体的に見えてきて、とても勉強になりました。ビデオも全部見ました。3階の「瀬戸3万年の歴史」もわかりやすい。時系列、品目別に実物をひたすら見せる。アートな展示方法もあるでしょうけれど、ここではこのやり方がわかりやすいのでは。私は好みでした。

製品を出荷〜輸出する光景の再現も興味深かった。陶器の梱包ではエピソードもある私、箱詰めの輸出用陶器に見入りました。もっと詰め物はするだろうけど、基本、こんな感じだったの!?割れないのかな。紙と藁みたいなものでも、とにかくやきものが動かなければいい。ウズベキスタンのウスマノフ工房のパーフェクトパッキングを思い出す。工夫と技。最近は大量のエアパッキンに頼り過ぎなのかもしれない。

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(瀬戸蔵ミュージアム。製品を出荷、輸出する光景の再現。右下2点は1970年代の輸出用との記載。「Occupied Japan」(連合国軍占領下の日本、1947-52年の5年間に日本で生産し輸出したもの)と図柄が同じなことに驚いた。でもどこかおとなしい。いつか両者の比較写真をアップしたいと思います)

さて、また土砂降りの窯垣の小径に戻ります。迷いながらも、ようやく登り窯に辿り着きました。が、土砂降りの中を歩いていたのは私だけではありませんでした。写真愛好家と思われる団体ご一行が、雨具の中にカメラを入れながら熱心に撮影旅。登り窯も、妙に満員な感じになってしまいました。寒さもあって、もう帰ろうかな、、と弱気になったところに、なぜかカフェらしきものを発見。登り窯の上部の横にカフェ?その名も「窯横カフェ」。入ってみます。

広過ぎず狭過ぎず、白い壁に木の床。ジャズっぽい音。雑誌やグリーン。若いお二人がオーナーのご様子。とにかくまずコーヒーを頂きます。やがて石油ストーブも登場し、体も暖まってきました。お店の方と少しおしゃべり。絵を描いている方々、瀬戸に移住し、セルフビルドでカフェ作り。今年2月のオープンだとか。感じいいカフェです。器もいいな。目の前には薪ストーブも。気になるのはその下に敷かれたタイルなんですよね。

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相当好きなタイル。青の色味がいいな。ラスティックな質感も。このタイル、どうしたんですか?すると、登り窯の窯(瀬戸本業窯)の八代目に作ってもらった、と。注文で作ってもらえるんですか?さあ、どうかなあ。もうすぐ八代目が用事で来るので話してみたら、ということでiPadしながら八代目を待ちます。

やってきた八代目、カジュアルなファッションが似合ってます。資料館やギャラリーを見せて頂けることになり、ラッキー!資料館には、本業タイルが。「うちで作ってきたものです」。え〜、そうなの!?こちらだったんですか!

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(ペルシアにも輸出していたというタイル/六代目水野半次郎氏と民藝運動の方々/八代目/陶器の染付魚藻文。陶器の染付は珍しい。でもウズベキスタンやイラン、トルコは基本的に磁器ではないブルー&ホワイトなので私にとっては親しみある質感と化粧土の白/ギャラリーも見応えあり。こういうのが見たかった)

聞けば、民藝との関わりのある窯元。六代目が柳宗悦さん等と交流があり、昭和30〜40年代の大量生産の時代も手仕事を大事にしてきたのだそうです。黄瀬戸(これがまた、最近大好きなんですよ)と緑釉が特徴。いい色です。

瀬戸に行くからには本業タイルに触れたいと思っていた。でも、どうやってそこに辿り着けるのかわからなかった、というか、詳細を調べなかった。最初はあまり調べ込まずに先入観を持たずに行き、とにかく歩いて手がかりを探す。いつもそんなふうにしています。今回は土砂降りのおかげでカフェに入り、いつもなら短時間で出て歩き回るのに雨と寒さで出られず、そのおかげでタイルを見つけ、たまたまタイルを作った八代目が用事でカフェに。日本のタイルの現場と会えました。感謝。

河井寛次郎の陶芸−科学者の眼と詩人の心−」展も良かった。鍛錬の賜物である圧倒的な技術が支える自由な個性の表現が、やわらかいあたたかい造形と色に結晶している。やきものは人柄なのかと感じました。釉薬の研究で定評があった寛次郎さんが最後に作り出した「碧釉」。深くどこまでも引き込まれる、かつ屹立するような、魅惑の青。最高でした。

最後に瀬戸で出会った青。

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(窯垣の小径ギャラリーの庭2点/染付壷。瀬戸染付の特徴は没骨(もっこつ)技法。主に付立筆を用いて一気に描く/本業タイル)

今回はひとまず、ここまでに。今後も、産地シリーズ、「タイル人」も書いていきたいと思います。

* 「窯横カフェ」のfacebook、発見しました。ごはんやお菓子がおいしそうです!
* たくさんの「FBいいね!」ありがとうございました☆
by orientlibrary | 2013-10-22 01:04 | 日本のタイル、やきもの