イスラムアート紀行

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トゥバのホーメイ、遊牧民の染織、ラスター彩故郷に還る

トゥバ共和国のホーメイ

「アルタイ共和国のカイ、トゥバ共和国のホーメイという、シベリアの喉歌における二大潮流が一堂に会するコンサートが、今年9月に東京と大阪で開催される。両共和国の歌手が同じステージに立つのは本邦初のこと。あわせて、その前後にもアルタイ、トゥバの歌手によるツアーがそれぞれ実施される」(Realtokyoより)

各地で連日盛況かつ感動のコンサート、そのなかの一夜、横浜で開催された「ホーメイの夕べ〜トゥバ共和国の超人的な倍音喉歌」(出演:モングンオール・オンダール、アヤス・クーラル
、ドスタイ・オトクン
、アンザット・クーラル
/横浜みなとみらいホール小ホール)へ。喉歌ワークショップとバックステージツアー付きという貴重な機会でした。

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(上段:ホーメイの夕べ。コンサート写真がないので、バックステージツアーの様子を少々/下段:東京駒場の日本民芸館、「特別展 柳宗理の見てきたもの」11月21日まで)

ロックやスーフィー音楽、そのフュージョンが今も好きだけれど、一方で喉歌や口琴系、パーカッション系に惹かれてきています。じつは、自分がこちら系に来るとは思っていませんでした。年齢とかいろんなことがあるのかな。ギリギリまでそぎ落とした音世界ならではの豊穣、電子音楽と紙一重のトランス感に巻込まれている感じです。

<ホーメイとは>
「
ロシア連邦トゥバ共和国に伝わる喉歌(のどうた)。声に含まれている倍音を、声帯の力で強調させ

て口笛に似た音を出す。非常に低い倍音を出したり、音を細かく震わしたりと、発声法が7種類以上

(28種類という説も)ある。また、この他にもアルタイ山脈周辺地域には類似した「喉歌」が伝えられ、

モンゴル国ではホーミー、アルタイ共和国ではカイ、ハカス共和国ではハイと呼ばれている」



(「ホーメイの夕べ」のワークショップ「ホーメイの魅力 トゥバ共和国発祥の奇跡の歌声」資料〜講師:巻上公一さん〜より)

音の響きの良いホールで、4名それぞれの個性あふれる生歌を堪能。低音の喉歌カルグラー、高い音の出る喉歌スグットなど圧巻。南シベリアの草原、自然の中にいるよう。全体を通して「風」を感じます。それが根源的な気持ち良さにつながっているのかもしれません。

モングンオール・オンダール(スグット)



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柳宗理の見てきたもの

特別展 柳宗理の見てきたもの」=「2011年のクリスマスの日に他界した柳宗理(1915~2011)。世界的な工業デザイナーとして活躍する一方、約30年間にわたり日本民藝館の三代目館長として活動しました。本展では、宗理が蒐集した当館コレクションの逸品をはじめ、柳家から遺贈された陶磁器や染織品、仮面などを展示。また、父宗悦から受け継いだ食器類も併せて展観し、柳宗理がどのようなものを見つめながら生活し、デザイン活動の糧としてきたのかを紹介」する展示。日本民芸館にて11月21日まで。

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ひとりの人が好きで集めたもの、いろんな地域、いろんな領域、でも一貫した「好き」が見えてくるようで興味深い。柳宗理さん、生命力がありながらどこか端正な感じ。繰り返す模様が織りなす妙味、色や色合わせの一歩引いたようなシックさ、などを私は感じました。


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西アジア遊牧民の染織

「アジアの染織 西アジア遊牧民の染織」(東京国立博物館・東洋館/~ 2013年12月1日)

「遊牧民研究家、松島清江氏が1960年代から1980年代にかけて現地で収集したコレクションを展示します。インド西北部からパキスタン、アフガニスタン、イランからトルコにかけて遊牧を営んだ部族が染め、織り、制作したハンドメイドの衣類や袋物、テント用敷物。家畜の毛をつむいで織り、あるいはフェルトにして作られた、各部族の特色ある色と文様の世界を紹介します」

松島きよえさんについては、トライバルラグディーラーのTRIBEさんが、これまで熱心に紹介しています。「トルコ~イラク~イラン~アフガニスタン~パキスタン~インドと西アジア~西南アジアを駆け巡り、
遊牧民と行動を共にしながら彼らの生活に溶け込み、同時に毛織物を収集された貴重な日本人である。
今生きていらっしゃればどれだけ話が弾んだであろうと思う。
特に野蛮(遊牧民らしい魅力溢れる)な部族に惹かれ、昔ながらの部族らしさを残した人々に
魅せられていたようである」(TRIBEさんHP)

* 遊牧民に魅せられて。松島きよえさんの物語
* 遊牧民に魅せられた人 松島きよえさん
* ブーラーフィー族 『Josephine Powell&松島きよえ』2

おかげでコレクションの実物も何度か拝見していました。東博のガラスケースの中、さすがに大作、状態の良い絨緞や塩袋が揃っていました。

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(アジアの染織 西アジア遊牧民の染織/東京国立博物館・東洋館)

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(左:アフガニスタンとのこと。トライブ名不明/右:イランのバフティアリ族)

「ブロイ族」とあったので、初めて見る名前だと思いましたが、どうやらブラーフィー族のようです。アルファベット記載は「BRAHUI」。「バルチ族」「バクテアリ族」なども、ちょっと違和感。カタカナでの記載は難しいですね。東博さんはアカデミックな影響力があるところ。少しリサーチしてみてもよかったのでは?

東博ついでに。東博は、じつはモザイクタイルがけっこう使われているんです。有名なのは本館1階の壁面モザイク。外からの光の具合で色や光沢が変化して、とてもきれいです。表慶館の床はビザンチンっぽいモザイクが一面に施されています。表慶館はなぜか現在レストスペースのみ。もったいない!展示したい人が山のようにいると思う。貸出しも一法では?

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(東博のモザイクタイル。左:表慶館、右:本館1階)


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ラスター彩、故郷に還る

京王百貨店の「七代 加藤幸兵衛茶陶展<併催>ラスター彩イラン里帰り展」、もう一度じっくり見たかったな〜、、どこか心残りだったところに、21日放映のテレビ番組「ラスター彩、故郷に還る」。1年間の密着取材での製作光景、展覧会までの道のり、イランでの展覧会の様子など、75分しっかりとラスター彩に浸れて、これで満足しました。いい番組でした。

製作の日々には、圧倒されました。とくに焼成。本当に発色が難しいのですね。いくつもの失敗作もあっての、あの美しさ。感動です。また絵付け前の段階、八角星と十字からご本人が作っていらっしゃるとは、、分業なのかと思っていました。

好きだったシーンは、幸兵衛氏がイランの村で、「土はいいなあ」と土壁にヒタとくっついているところ、そして青い壷を抱えるようにして道ばたに座っているところ。イランの人たちも土への思いは共通するものがあるはず。気持ちは通じますね。

そんなわけで、まだラスター彩気分が続いています。写真もラスターで!すべて「幸兵衛窯」にて。

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(靴、そして描かれた人の絵がかわいい。金や銀と青、これがまた合うのですよね。右は正統派)

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(左:ラスター彩駱駝人物文大皿/右:ラスター彩楽人文茶わん、いずれも加藤卓男氏)

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(左:この青が好きです/右:ラスター彩神鹿文茶わん、いずれも加藤卓男氏)

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(右がテレビで追っていた「生命の樹」ですね。ペルシアのモチーフと日本の感性)

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(加藤幸兵衛氏作品のディテール。遠目にはとても繊細だけど、アップで見ると麒麟や龍が力強い。生きているよう。八角星と十字もきっちり整って緻密で丁寧。素晴らしい)

虹色の陶の光こそ
匠らの 生き死にの果てに
輝けり けふも           天山草


季節は、黄金色の実りの秋に。
by orientlibrary | 2013-09-24 01:41 | 中央ユーラシア暮らしと工芸