イスラムアート紀行

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ウズベキスタン・18世紀から20世紀の陶芸の味わい

猛暑でバテていたわけではないのですが、時間が経つのが速いです。タイルのデザインや幾何学模様の6、8の形で圧倒された後、気がつけばお盆。静かなこの時期、読まねば!と思っていたウズベキスタンのやきものの資料を読んでみました。
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(ウズベキスタン陶芸についての本や写真集。今回参考にしたのは右下の『UZBEKISTAN』。下真ん中の『ARCHITECTUAL CERAMICS OF UZBEKISTAN』『ARTISTIC CERAMICS OF UZBEKISTAN』は未読。たぶん宝の山。時間かかります、、)

S先生から「ちゃんと役立てるなら」という条件でいただいた(実質はS先生の研究室で発見、抱えて離さなかった絶版本)『UZBEKISTAN』(THAMES AND HUDSON)。古代から現代までのトルケルタン(ウズベキスタン)の工芸〜染織、金属加工、陶芸等について研究者の論文+豊富な写真がすばらしく、充実した内容。

陶芸については、次の3つのパートがあります。
1:「ceramics from the ninth to the twelfth century」(Johannes Kalter/9世紀から12世紀の陶芸)
2:「like porcelain : fourteenth to sixteenth century ceramics from Uzbekistan」(Gisela Helmecke/磁器のように:14世紀から16世紀のウズベキスタンの陶芸)
3:「ceramics of the eighteenth to twentith century」(Johannes Kalter/18世紀から20世紀の陶芸)。

ウズベキスタンの陶芸について、9〜12世紀とティムール朝が繁栄した中世については、わりと資料を見つけることができます。わからなかったのは近代。ソ連からの独立後については、少ないけれどもなにがしかの情報があるけれど、その「間」がわからなかった。ブハラ・ハン国、ヒヴァ・ハン国、コーカンド・ハン国の3つのハン国時代後期からロシア帝国支配下、ソ連邦時代の陶芸。

結論から言うと、読んでもまだストンとはわからない。ウズベキスタン陶芸の基本的な理解が自分に足りないのだと思います。けれども、近世のウズ陶芸もまた、独自のすばらしい発展を遂げていたようです。

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(リシタンのウスマノフ工房プライベートミュージアム展示作品)

そして写真などをあらためて見直して、、私は本当にウズベキスタン陶芸が好きだ!と叫びたい気持ちになりました。

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(リシタンのウスマノフ工房プライベートミュージアム展示作品)

細密で繊細な絵付け、味わいのある土もの、好きな陶芸作品は多いですが、ウズ近世、1800年代、苦難のソ連時代、独立後伝統復興に苦労のあった時期、その後の隆盛。いろんなレベルのものがあったでしょうけれど、いいものも多い!独特の味があります。土の味、手の味、素朴でイキイキしたかわいらしさ。とても好きな世界です。

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「ceramics of the eighteenth to twentith century」

「ceramics of the eighteenth to twentith century」(Johannes Kalter/18世紀から20世紀の陶芸)の概略は下記のようなものです。

* 概要は箇条書きです。しっかりと正確に和訳していませんので、この点をご理解下さい。あくまでご参考のためのレベルです。
* 手持ちの写真(リシタンの工房附属プライベートミュージアム、ウズベキスタン内博物館等)+書籍内の写真で補足します。

・ 陶芸に必要な資源に恵まれたトルケスタンでは、陶芸が非常に成熟しており、鉢、皿、杯等、多くの量が生産されてきた。図案はアラブの影響を受けている。
・ 裕福な人たち地元産の茶碗を使わず、中国からの輸入ものか、磁器風のものを使用したが、これらは非常に高価で地元産の25倍もした。

・ 18世紀から20世紀の陶芸は、4つの代表的なスタイルに分けられる。
* 第1のスタイルは、地元固有のモチーフによる純粋にウズベキスタンらしいもの。いにしえの美が素晴らしいものがある
* 第2のスタイルは、中国的なもの。あるいは中国とウズベキスタンを一体化、融合したもの
* 第3のスタイルは、(筆者の私感だが)オスマン朝の美意識の影響を受けたもの。キュタヘヤと並行して作られたかのように見えるもの
* 第4のスタイルは、ペルシア様式の影響を受けたもの

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(『UZBEKISTAN』より引用)〜
〜(左上)皿/リシタン/18〜19世紀/施釉、下絵付けのティーポット、脇に護符と推定されるナイフの図柄  
(右上5点)茶碗と皿/ターコイズ青とコバルト青で下絵付け/左の皿はトルケスタンで発展したこの地独自の様式/右の皿は、中国の影響を強く受けている/中央のものはイランからの感化に由来する軽やかな植物文様/18〜19世紀/リシタンか?/The Museum Fur Islamic Kunst in Berlin 
(左下) 皿/白のスリップ(泥漿)の上に下絵付け染付。15世紀のデザインを踏襲しているが、釉薬のグレーの色合いが、この皿が15世紀以降のものであることを示している/17〜18世紀/ブハラ博物館|皿/下絵陶器/絵付けの様式は明時の中国の染付磁器と関連している。ただし、ギリシア十字で4分割するスタイルはトルケスタン独自のものである/リシタン/18〜19世紀/The Museum Fur Islamic Kunst in Berlin  
(右下)茶碗とボウル/白のスリップ(泥漿)の上に下絵付け/高台内に中国の印を似せたものがある。富裕層は好んで中国磁器を使用した。トルケスタンの陶芸家たちは中国が輸出した磁器を正確に真似た作品を作った/リシタン/18〜19世紀/The Museum Fur Islamic Kunst in Berlin | 皿/白のスリップ(泥漿)の上にコバルト青とマンガン茶で透明釉に下絵付け/泉を分割するスタイルはティムール朝に遡る/サマルカンドか?/18〜19世紀/The Museum Fur Islamic Kunst in Berlin)

・ (以下、写真を例示しつつ) 地場産陶器を中国の陶磁器のレベルにまで高めようとする。これに似た試みは、サファヴィー朝イランでもおこなわれた。中国様式と共通する植物文様、中国の印を模した高台内は進歩的な様式だった
・ 最も成功した例は、茶碗内部底面にギリシア十字(クリアブルーの地に白い十字)が中央アジアが起源であることが明らかである皿である。18世紀後半から19世紀前半のものと思われる。
・ すばらしい染付の器は、主にフェルガナ盆地のリシタンで生産された。皿はコバルト青、トルコ青、黄土色で絵付けされ、緑の縁には中国と中央アジアの要素がある
・ 異質なものは、内部底面のチェックボードのパターン、S字形の留め金のボーダーの皿に顕著だ。1縁は、菊の花を表し、中国にインスピレーションを受けた幾何学文様とともに小さな円形模様と交互にある
・ 純粋な中央アジアの伝統は、ギリシア十字、円花飾り、縁は斜線の菱形の皿だ
・ トルケスタンの伝統は、おそらく三日月形の刀がティーポットに寄り添うように描かれた皿の上に、最もすばらしく表現されている。ティーポットは、もてなしの象徴と推測され、三日月形の刀は権力と力を表している。大きなサイズは、かつて宴会で使われたことを示唆する。リシタンで作られたものと思われる
・ バラ水の瓶と水差しは双方とも、肩の部分に大胆な唐草文が渦巻く。サマルカンド産のものであろう
・ サマルカンドやヒヴァで作られた多彩彩色陶器は、主に、黄色、赤、茶、緑、白の花が描かれている。ヨーロッパの農民芸術を連想させる
・ 白地の水差しは、水玉と縞模様が首部分にあり、持ち手と注ぎ口に簡素な円花模様があるものは、キュタヘヤをモデルにしたものと思われる。これらの多くはブハラで作られた
・ 繊細で軽やかな樹木が絵付けされた小皿はイラン様式の影響があり、たぶんリシタンのものだろう

・ イスラム世界のすべての隣国とは異なり、トルケスタンは、ティムール朝とそれ以降とが明確に定義されるすばらしい個性を持つ。そして18世紀から19世紀に輝かしい成熟に達した

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(リシタンのウスマノフ工房プライベートミュージアム展示作品)

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(大崎・所澤コレクションより。1990年代のリシタン陶器)

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「中央アジア美術の至宝(陶芸)」

「中央アジア美術の至宝(陶芸)」(アクバル・ハキモフ ウズベキスタン芸術研究所所長/『偉大なるシルクロードの遺産』展カタログ)にも、少しですが説明があります。(以下、箇条書き)

・17後半〜19世紀初頭、ブハラハン国、ヒワハン国、コーカンドハン国が形成されたが先行する時代の芸術水準には至らなかった。孤立状態は閉鎖性を高め地方性の強さを増大させた。細密画は停滞し建築技術は下降した。工芸のみが発展した。伝統的手法と技術を基礎としつつ、陶器の他、木、骨、石を素材とした工芸など。

・ 18-19世紀には各地に施釉陶芸の主要な流派が形成された
* リシタン、グルムサラエなどを中心とする碧青釉陶のフェルガナ流派(タジキスタンのホージェント、カニバダム、チュルク、ウラチュベも含まれる)
* キジュドゥヴァン、ウバ、ブハラ、ウルゲンチ、サマルカンド、シャフリサブス、キタブ、デナウを中心とする黄釉陶のブハラ・サマルカンド流派
* ヒワ、カッタバグ、ハナカ村を中心とする碧青釉陶のホラズム流派
・ これらの流派はその伝統を20世紀まで残したが、その後秘伝の多くが失われた

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(コーカンド博物館展示品)

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(フェルガナ博物館展示品)

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『UZBEKISTAN』の陶芸パートの中で、内容的には、「like porclain: fourteenth to sixteenth century ceramics from Uzbekistan」(Gisela Helmecke/磁器のように:14世紀から16世紀のウズベキスタンの陶芸)が、非常に興味深かった。これまでも多少読んでいましたが、中国磁器のインパクト、影響の大きさを、リアルに感じました。とくに模様の解説が興味深かった。内容については、またの機会に紹介します。

またしても写真をたくさん準備してしまったので、、こちらもテーマを変えるか、続編としてご紹介します。「8」写真も出番を待ってます。
夏は陶芸のお勉強!今月下旬には、日本一暑い町の座を四万十に(一時的に)譲った多治見に行きます。炎の41℃台でしょうか!?こちらもたぶんいろんなご報告ができると思います!♪
by orientlibrary | 2013-08-15 15:10 | ウズベキスタンのタイルと陶芸