イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

「遊牧のチャラパルタ」/「幸之助と伝統工芸」/「HandMade In Japan」

装飾タイルの「8」、写真は準備済みですが、今回はその前にいくつかの話題を。

---------------------------------------------

遊牧のチャラパルタ

まずは映画、「遊牧のチャラパルタ」。音楽ドキュメンタリーが大好きな私。しかもタイトルに「遊牧」が入っていては、もう絶対外せない。

e0063212_23181283.jpg

4年の月日をかけて撮影されたロードムービー&音楽ドキュメンタリー。2006年の公開で、世界の国際映画祭で受賞14、各地で熱い支持を受けてきた。日本では、ようやく先日が初上映(しかも上映は7月1回、8月1回のみ)。渋谷の会場はファンの期待で熱気にあふれる。

思った以上に惹き込まれました。大好きな「ラッチョ・ドローム」に匹敵すると言っても過言ではないとも思う。たぶん相当な低予算とギリギリの少人数で制作されたと思われる映画。丹念にていねいに、だが時には強く対象に迫っていく。

バスクの伝統の打楽器チャラパルタは、木の板を木の棒で叩くというシンプルな楽器だが、素材の音と音階と二人で会話するようなリズムが素晴らしい。その奏者の男性二人(オレカTX、撮影時20代前半)は、故郷バスクを飛び出し、世界のノマドのコミュニティを旅する。暮らすように滞在し、土地の材料でチャラパルタを作り、ノマドたちと共演する。灼熱の砂漠、極寒の北極圏、大草原。過酷ながら大自然は土地の人も旅人も包み込み、折々に美しい姿を見せてくれる。

ライブ演奏の熱。バスクの二人の単独演奏も、ノマドとの共演も、ノマドのパフォーマンスも。最高!!

ムンバイ。いきなりソウルな口琴でガツンときた。インド西部のノマドの村。カースト制には属していないという。儀式と芸能が暮らしに息づく。

モロッコサハラ、ベルベル人のノマドの村。近隣国の内戦や貧困化など社会の変容の中にある。暮らしはきびしい。そんななかでも、女性たちの歌と踊りは強烈。「家族を失って難民キャンプにいるけれど、これからも自分らしく生きていく。顔を上に上げてね」。

北極圏のサーミは氷の世界。氷を切り出しチャラパルタを作っての演奏。透明で天上から聴こえるようだ。サーミの音楽家が、中央アジア・トゥバの音楽家との交流を語る。距離は離れていても、北方の音楽はつながっている。

モンゴル。草原の遊牧民。馬を愛しホーミーを歌う。さらに、なんとトナカイ遊牧で知られるツアータンまで。極寒の中を旅するバスクの二人。温かく迎える土地の人の表情がいい。

e0063212_2383328.jpg
(モンゴルイメージ/orientlibrary/左上はポストカードのスキャンだったかも?記憶があいまい)

口琴、喉歌、打楽器、原初的な音世界の圧倒的な伝達力、迫力。総勢でたたみかけるようなラストが圧巻。




(nomadax tx trailer、「遊牧のチャラパルタ」より/口琴と喉歌、予感があり入れない。帰って来れない気がする。びよ〜んという口琴がとくにヤバい。自分でも意識していない「どこか」に響いてくる。まだ入れない)

映画すべてを通して、人と人、人と自然、素材と素材、文化と文化、時と場所が、奏で合う。音楽は対話。奏でる人たちの幸せな表情、聴衆の高揚。

「僕らがノマドのコミュニティーにフォーカスしたのは、音楽が「動き」であり、また「新たな音を探し続けること」だからだ。ノマド達は移動するし、だからこそ、そのコミュニティーのサウンドはスペシャルに違いないと僕らは思ったんだ。彼らは本当に必要なものだけを持って移動しなくてはならず、それは音楽も同じなんだよ」
「僕らの最終的な目的は、(一つの文化によって引き起こされる)サウンドを彼らの起源から理解することだったんだ。そのためには彼らの生き方まで分かち合う必要があったんだ」 (主催者の資料/演奏家オレカTXインタビューより) 

単発上映2回のみは残念ですが、今回、貴重な機会を作ってくださった主催者の皆様に感謝致します。ありがとうございました。

---------------------------------------------

幸之助と伝統工芸


「幸之助と伝統工芸」展(パナソニック汐留ミュージアム)。経営の神様と工芸?そもそも松下幸之助さんについて、ほとんど何も知らないまま、会場へ。

「松下幸之助が我が国の伝統文化に理解を示し、その普及を支援していたことはあまり知られていません。
美術品を見る目は持ち合わせていないと言いながらも、実際には、多年にわたり絵画から工芸作品にいたるまで美術品を収集したり、公益社団法人日本工芸会などの団体の役員を務めるなど、文化支援活動を続けていました」(開催趣旨より)

会場で最初に目に入ったのが、幸之助氏自身の書でした。とらわれのない筆運び。誠実、簡素、温かみ。どうしたらこのような線が書けるのだろう。しばらく動けず、ずっと見ていました。

e0063212_23112978.jpg
(松下幸之助《心》
  パナソニック株式会社蔵)

幸之助氏の一貫した「好み」で蒐集された、日本を代表する作家の各分野の工芸作品が多彩に展示された会場。そのなかでも、最初に見たこの書に最も感動しました。作品の上手い下手、完成度ではなく、こういう文字を書ける人がいるんだ、ということを不思議にさえ感じました。

「松下幸之助は「素直な心」を生涯大切にしていましたが、その「素直な心」を育てる道が茶道にあると考えるようになりました。
そして茶道具に触れるうち、その関心は工芸家に向けられるようになったのです。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、截金(きりかね)など、さまざまな素材を駆使し、伝統のわざを絶やさず時代の息吹を取り入れることによって成立する日本の工芸作品。松下幸之助は「伝統工芸は日本のものづくりの原点である」と確信し、このような作品を作り出す工芸家を支援することで、「ものづくりの心」を未来に伝えていきたいと考えました」

「素直」ということ、茶道との出会い、ものづくりの原点としての工芸への共感、伝統文化への生涯にわたる支援。骨太で本質的で一貫した態度。使命感と品格。器が違いますね。
あらためて年譜を見てみると、平成元年に逝去されている。昭和という時代を全身全霊で全うした経営者なのかもしれません。

素直が大事なんだと反省し、『素直な心になるために』という著書を買って帰りましたが、パラパラ見ただけで挫折。素直は遠い。

---------------------------------------------

HANDMADE IN JAPAN FES 2013

同じ「ものづくり」でも、こちらは昨今大人気の「ハンドメイド」。カタカナになっているところが軽やか。主役は一般人。
さらに、ハンドメイド作品を売買できるポータルサイト(Creema、iichiなど)が、日本でも盛り上がりを見せています。そんな「ハンドメイド」が一堂に介するイベントが開催されました。 “HANDMADE IN JAPAN FES 2013”。

「オンライン・クリエイターズマーケット「Creema」ではクリエイターが作りたいものを作り、 
自ら値付けして売り、 今や日本中から10万点以上の作品が集まっています。 
その多くは、この世にひとつしかないハンドメイドです」「ハンドメイドにはかつての “MADE IN JAPAN”の 精神がいきています。 
そして、その独自性やユニークさ、きめ細やかさは世界に誇る一つのカルチャーになりえるもの。
そんな思いを「HandMade In Japan」という言葉に込めました」(主催者挨拶)

東京ビッグサイト会場に参加した作り手2400名、来場者は2日間で26000人だったそうです。

e0063212_23122539.jpg
(わりとゆっくり見られてよかった/会場の造作、もっとハンドメイドであって欲しかった/ワークショップも多数開催/出展者は様々で面白かった。気軽に会話もしてくれる。交流が一番の魅力かな/虫が出てくる本/朱肉入れ付き印鑑入れ/タコ/知多半島から素焼きのお人形の窯元。通常問屋さんとの取引、この機会に出てみたとのこと/すごいバッグ。バッグメーカー勤務。仕事では作れないものをプライベートで作っているとのこと/さおり織とのコラボ人形/キャンパス地のポーチ。色がキレイ/オブジェ。目を引く/マトリョーシカロウソク/カワイイので人気だったディスプレー/ヘアバンド!/きれいな青の陶器/同じ作家さんの星座湯のみは光を当てると星座が浮かび上がる。素敵!)

正直、玉石混淆かと思っていましたが、全体のレベルは高かった。皆さん、器用!発表と交流の場としては良い機会なのでは。イベントや展示は、出展者がいちばん楽しいんですよね、大変ではあるけれど。

それにしても、アクセサリーやポーチは、今や使う人より作る人の方が多いかも。日本に「クリエーター」は2000万人くらいいそうですね。(「プロデューサー」は1500万人くらいいますね)。一般人のクラフト、ハンドメイドは、今後も確実に定着していく分野だと思います。

以前、同好の仲間とおこなっていた展示イベント「美しい世界の手仕事プロジェクト」は、西アジア中央アジアなどの工芸、手仕事(毛織物、テキスタイル、陶芸等)を紹介するのが趣旨。遊牧民の暮らしに根づいた手仕事、職人たちの匠、超絶手技、研ぎすまされた美的感性。

e0063212_23122327.jpg
(美しい世界の手仕事プロジェクトより)

趣味の手作り、プロの手技、魅力はどちらにもあり。個人的には、完成度の高いものとの出会いが嬉しい。ハンドメイドの後に松下の展覧会に行って、正直、ホッとしました。極めた人の仕事を見る幸せがあります。

---------------------------------------------

長くなりました。ペシャワール会のことも書きたかったけど、、。次回は「8」にいきます。

また今後、タイルや工芸、中央アジアに関わる方々へのインタビューをおこない、まとめていければという野望?を持っています。取材につきもののテープ起こしに戻る覚悟。
取材のお願いの連絡をさせて頂くこと、突然訪問などの失礼もあろうかと思います。どうぞ温かく見守ってください!!がんばります。

e0063212_23175472.jpg

by orientlibrary | 2013-07-23 23:20 | 日々のこと