イスラムアート紀行

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へラート、青のタイルの廟。1965年の映像から

「The University of Pennsylvania Museum of Archaeology and Anthropology」による映像記録がすごいです。1960年代のイラン、トルコ、アフガニスタンはじめ、世界各地の記録映像(無音)が800本以上YouTubeで公開されています。





(1965: Reel 39: Afghanistan. June 22-23. Herat. アフガニスタンのヘラート 1965年6月/公開日: 2012/09/18) (内容=煙の立ち上る窯/石を重りにした手動の織り機/糸繰り機、縦糸/ヘラートの遺跡、塔、モザイクが少し残る壁、市場/中世の暮らしを描いたGhory Taymanの絵画/刺繍3点/16世紀ムガル時代の挿絵本等/石のコレクション/ミナレットのパン撮り、帯の部分は小さなレンガ、Goharshadの墓廟、遠景、装飾、ドームを廟周辺から見る、畝状のタイル装飾ディテール、塔の球面のタイル装飾、廟内部の装飾)

画質は粗く手ぶれで酔いそうですが、逆にナマの迫力がある。ホント卒倒しそうです。こんな記録があるなんて。そして気軽にいつでも見られるなんて。ほんの少し前まで、数少ないタイル本の写真を眺めているだけだったのに。

色はクリアとは言えませんが、アナログの味わいがあり、青の爽快さ、白の可憐さに熱狂します。また、モザイクの模様、どの模様が1パーツなのか等が垣間みられます。

このような記録映像の魅力のひとつは、美しいだけではなく、施工やモザイクの製作過程を想像できることです。昨今の完璧に修復された建造物は、鮮やかで圧倒的に美しいけれど、時を遡ったり、関わった無数の工人の匠や息づかいを感じにくい。崩れ落ちているからこそ、逆に恐ろしくなるほどの手間ひまが見えてくる。

ヘラートGoharshadのタイル、詳しくはわかりませんが、たぶん1447年ティムール朝期の建造物。携わった職人たちの矜持、とてつもない時間が伝わってきます。タイル装飾ってすごい。素晴らしい。中央アジアの土塊から、当時の土の匠たちはなんていう美を創造したのでしょうか。

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(herat(afganistan)/mauseleum of gohar-shad 1447,state of the before 1984/『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用)

けれども、このヘラートの廟は、今はどうなっているのでしょう。Pennのアフガニスタンのリールは1965年撮影。(写真を引用している『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』も、たぶん同時期の撮影ではと思われます)。

1965年のアフガニスタンを見てみると、、1964年=新憲法制定。女性に参政権、教育の権利、就労の自由などが認められる/1965年=初の普通選挙実施。アフガニスタンの歴史は難しいけれど、とにかくこの頃は比較的自由で活気があったような印象です。
その後のソ連侵攻、内戦、タリバンによる支配等のなかで、この廟、このタイルはどうなったのでしょう。人がいる限り、また作ることができます。美しい青のタイルの建造物が蒼い空に輝く日々でありますように。そう願うばかりです。

(参考:「1953年に首相となったムハマド=ダウード=ハーンは、アフガニスタンを近代国家とするために積極的な改革を進めました。他方、パシュトゥーン人重視の姿勢からパキスタン政府と対立し、陸上輸送が生命線であるアフガン経済の生死を決する国境封鎖、さらには国交断絶の事態が生じるまでになった末、その打開のために辞任に追い込まれました。その後も王制のもと改革は進められましたが、カブール大学の教師、学生を中心とした中産知識階級はそれには満足せず、新たな動きが出始めました。1965年には社会主義を目指すアフガン人民民主党が結成され、他方、1990年代以降のムジャヒディン各派の中心となる、カブール大学の教官、学生であったラバニ、マスード、へクマティアルらがイスラームに基づく国家建設を目指す運動を開始しました。1973年PDPAの助けも借りてダウード元首相によるクーデタが起こり、「アフガニスタン共和国」が誕生し王制は廃止されました。」(JICAホームページより))

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(jam(afganistan)/minaret, late12th century/ジャムのミナレット、12世紀後半/右は左写真塔の真ん中部分青の帯のディテール。1100年代にターコイズブルーで施釉したレンガがこのような山奥の峡谷のミナレットに使用されていた/『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用))

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(上右、ペシャワール会報の表表紙の画を楽しみにしています。「チャイハナにて 画:甲斐大策さん」/下左はペシャワール会による取水堰の建設で潤される地域(耕地)/下右は「ラピスラズリの壺」

『ペシャワール会報』(113)、代表の中村哲さんの巻頭文「目的と精神は変わらず 「生命」が主題です 時流に乗らない心有る人々の思いに支えられ」。灌漑用水路の工事を進める「緑の大地計画」10年めの状況と現地活動29年の決意です。

 「 内戦は激しくなる一方で、政情は混乱の一途をたどっています。しかし、殆どの人々の深情—戦(いくさ)と外国人の干渉は、もうたくさんだ。故郷で家族と三度の食事がとれさえすれば、それ以上のものは要らないーという、無欲な願いが、誤りのない普遍的な人の営みでしょう。そして、これこそが、活動の基盤である、活力の源泉であり、ゆるぎない平和につながるでしょう」

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『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束』(中村哲、澤地久枝)。書名に惹かれて買いましたが、対談形式というのは読みやすいけど、ちょっとまだるっこしい。でも、さすがに澤地さん引き出し上手で、中村さんは人生を語っています。

「死の危険に幾度も直面し、しかもその瞬間、これで楽になれるという思いがひらめいたという。それだけ、生きていれば逃れられない重い荷物を背負っているのだ。アフガンとの約束は容易ならない」(澤地さん)。

 (マドラサ〜神学校の建設の時、村の長老たちが集まって皆でお祈りを始めた。「これで解放された」「自由だ」と言って本当に大変な喜び方だったと紹介し)「私も意外だったのは、まず皆が生存していくために必要なのは水で、マドラッサはその次くらいだろうと思っていたら、彼らにとってそういった精神生活というのは、生きていく上での水と同じように比重が重たいのだということを知らされました」

 (灌漑用水、農業復興支援について)「なぜ水が欲しいのか。ペットボトルに入っている水ではなくて、それで耕作ができて、動物が棲み、子どもたちの栄養失調が減ったり、そこで生きていく命の源とでもいうもの、そういうものが必要なんだということを(住民は)口を揃えていいますね。アフガニスタンというのは、いわゆる近代化に取り残れた国で、自分たちの伝統を頑なに守る民族が住んでいたわけですね。そういうところでは、かえって鮮明に水のありがたさ、自然と人間の共生の仕方といったものが、言葉もいらないぐらい、皆、自然に生きている」

  「地元の人は、「これは神様のご意思ですから」と言う。それは諦めというよりも、一種の謙虚な気持ちのような気がしますね。洪水が来たとしても、向うの人は国家そのものをあてにしていないので、自分たちの意のままにならないことがあるんだ、それはそれで甘受しようじゃないかというのが、どこかにあるんですね」

中村さんの言葉は、いつも全部引用したくなるほどに、本質的で具体的で熱くて人間の誠の心が滲み出ています。同じ日本人であることが、嬉しくなる、誇りに思えます。多くのボランティアの皆様も、ありがとうございます。

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『ラピスラズリの壺』。こちらは江藤セデカさん監訳と絵によるアフガニスタンの民話(アフサーナ)集です。(NPOイーグルアフガン復興協会/2012年5月発行/非売品)。

まえがき(2008年、ネダー・ファルハトさん)によると、
・ 情報文化省は古いアフサーナを収集し始めた
・ アフガニスタンにおける民衆文学も非常に長い歴史を持っている
・ 民衆文学から集団が持つ道徳や文化や行動基準を解明することができる
・ 5つに分類=劇/説教/妖精/英雄/神話
・ テレビやラジオの出現以前は、特に冬に家族が集まり物語を聞いた。しかし物語を話す文化は過去のものになった

物語だからこそ、独特の心性、価値基準が、臨場感を持って伝わってくる気がします。貴重な本、労作です。

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(左:herat(afuganisutan) gazor-gah,1426/『COLOUR AND SYMBOLISM IN ISLAMIC ARCHITECTURE』より引用)/右:イラン)

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<アフガン、パキスタンつながりで...ザフ様特集>
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パキスタンのスーフィー楽士、Sain Zahoor Ahmadさんを信奉し、ザフ様をモチーフ&テーマとした様々なモノの製作を続行している手仕事クイーンTさん。コラージュ左がサイン・ザフールさん。右上がMD入れ(織から刺繍まですべて)。MDの中身もすべてザフ様。右下は操り人形!動くのがすごい!ザフさまの動きになります。楽器トゥンバは派手な飾りですがとても繊細な音で魅力的です。

(* YouTubeが真っ黒画面で見られない件、ひとまず見られるようになりました。アドバイスやご連絡どうもありがとうございました!m(_ _)m 解決法を探していて、この現象、少なくない人が体験していることがわかりました。皆さんもYouTubeが突然真っ黒画面(真白画面バージョンもあるらしい)になった時、焦らずにネットで調べてみて下さい。いろんな方法が紹介されていますが、各人のネット環境と時系列にて。私の場合は「safariの環境設定でYouTubeのクッキーを削除する」で、現在は何とかなっています。)
by orientlibrary | 2012-12-15 00:07 | ウイグル/アフガン