イスラムアート紀行

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謎の皿を巡る旅 〜 シンド(パキスタン)とリシタン(ウズベキスタン)

やきものの国日本だけれど、装飾タイルの歴史が浅いこともあり、タイルのイメージは限定的。装飾タイル=イラン、イスタンブル、アルハンブラ、がんばってサマルカンドあたりが、日本でのタイルのイメージではないかと思います。

パキスタンのタイル、、ムルタンやウッチュ(いずれもパンジャーブ州)の聖者廟の独特の濃い青と模様が強く印象に残っています。繊細とはいえませんが濃厚な世界があり、とても惹かれるタイルです。個人的にはデリー・サルタナット朝時代のものが好き!!(ムガル朝時代にもラホールやデリー、シンド州のハイデラバードでタイル装飾の建造物が作られました)。ペルシアの影響を受けつつインド的なテイストが強いという感じでしょうか。が、私が見ていたのはそこまで。

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(ムルタン、ウッチュ、ラホールの装飾タイル)

現地からのナマの情報が溢れるように発信されるインターネット(facebook、WEBサイト、flicker等)。すごいですね〜!夏に、ムルタンのアートギャラリー「Craft Galleria」のfacebookページを見つけて大喜び。現代の青の陶器の写真が豊富、興味津々で見ていました。(その後、同じ写真の繰り返しになってしまい残念)

インダス河流域の建築(青いタイルや日干しレンガ!)、伝統的服飾、自然が満載の「INDUS VALLEY CIVILIZATION」facebookページもカッコいいです。たくさんの建造物(遺跡化しているものも多いけれど)が素晴らしい!!

最近、知人経由で知った「Tradtional Sindh Kashi Tiles」。パキスタン・シンド(Sindh)州の「Nasarpur」(インダス文明の中でも最も古くから人が住みついた町のひとつ)にある陶芸ファミリーのfacebookページです。現地建造物のタイルのアップ写真(タイル模様をクローズアップした写真は書籍でもWEBでも少ない)や現代のタイル写真、タイル製作の様子など、興味深いです。

そんな日々、アップされた一枚の写真に目が止まりました。説明には、「Traditional Sindh Kashi Tiles pottery product round plate surface design with traditional kashi kari motives 」(伝統的なシンドの陶芸製品。現地の伝統的なモチーフが描かれている丸皿/「kashi kari」はインド・パキスタンで「施釉陶器〜タイル」)。

え?!ホント!?シンドの皿??あまりに似ている、ウズベキスタン(リシタン)の陶器に、、。こんなことってあるの!? (↓)コラージュ写真1段め左「これが問題のお皿」。他の皿(1段めの3点)と、これだけが違う気がしてなりません。でも「シンドの陶器」と明記してあります。

驚いて、コメント欄から、「ウズベキスタンの陶器とそっくりなことに驚きました。とくにボーダーの部分の模様とコバルト青の色が」と書いてみたところ、(英語の意味がよくわからないのですが)「働いている人々がいることは知っている。でも自分はパキスタンのシンドに属している/yes i know their is people working on but i do belong from Pakistan Sindh」とのコメントが。

これを読んで、さらに驚愕。ということは(Peopleが何を指すか不明ではあるけれど)、ウズベキスタンからパキスタンの陶芸産地に働きに行っているの!?これは自分的には、かなりの大ニュースです!

想像できないことではない。イスラム教が根づいた国同士だし、距離もそれほど遠くないし、中央アジア(とくに陶芸産地リシタンのあるフェルガナ地方)と北インド世界はムガル朝という縁があるし。ロシアや韓国に働きに行くと同様、パキスタンに行くこともあるのかなと。ウズベキスタンの社会状況等も考え合わせ、あり得るのかなと思いつつ、現代の工人の移動にワクワクドキドキ、思いを巡らせていました。

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(写真1段め左「これが問題のお皿」。謎解き遊びは、下記文章にて/コラージュで写真が小さくなってしまったかなあ、、/1段めの写真4点は「Tradtional Sindh Kashi Tiles」より引用)

でも、「問題のお皿」を見ていると、、、どうしても「よく見た模様、知っている色」と思ってしまうのです。
そこで、気になる点、色と模様を独断で検証してみました! 1段めの左から2,3,4はシンドのもの。この緑と青をよくごらん下さい。また模様もじっくりと。

2段め。リシタンの緑色と青です。緑色はリシタンの方がクリアでしっかりしている。シンドの緑色は黄色みがあります。青(コバルト青、ターコイズ青ともに)もリシタンの方がクリアで、シンドの青は黒みがあるように思います。

3段めは模様。「問題皿」のボーダーの蔓草のようなくるんくるんした模様は、リシタンのボーダーと共通していると思います。緑のライン(例:魚皿)も時々見られるパターンです。「問題皿」の見込みの模様は、知っている工房の作品よりやさしいタッチなので少し惑わされました。でも花びらを見ると、筆を先端から奥に押し付けながら花びらを描いていく描き方(リシタンの特徴)が同じ。模様も全体にシンドの方がざっくりした描き方。

4段め。わりと細密で白地の多いデザイン。花びらを全面に散らし細いラインで花模様の合間を埋めるデザイン、曲線で描く細いラインが似ている。さらに、今年の夏、「今年は白地を多くしたデザインを増やしている」と聞きました。実際、4段め右の2点は、今夏購入してきたものです。

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(NEW! ! 上の比較コラージュ写真が小さくて見えにくいため、4枚版を作りました!)

職人さん自身が移動してパキスタンで製作しているという考えは??独断ですが、皿は元々の産地(リシタン)で作られたと思います。職人さんは移動しても、土や釉薬や窯ごと持って行けない。模様は移動先で描けても、色は持って行けない

「問題皿」の化粧土の方が白くてクリア、シンドの白はクリームがかっているように見えます。
そして緑色。今回最大のポイントはこの緑色でした。緑色も明度や色味が微妙に違う。これはリシタンの緑だと思う。万が一、土や釉薬など、すべて持参したとしても、焼成温度や窯の特徴が違うのでは?
さらに、余計なことですが、シンドの皿は黒い紙の上で撮影されており、「問題皿」はコンクリ床。なんだかリシタンの工房の床を想像してしまいました。

そういえば、昨年の夏もリシタンの工房で、「ヒンドゥスタンから大量の注文があって」と一生懸命製作していました。行き来が活発になり、様々に交流もあるのでしょうね。購入されたり、サンプルとして運ばれたという線もあり??なんらかの経緯で、シンドの陶芸一家の手元に写真が、あるいは実物があったのでは??

上より、独断による結論=「(シンドの皿としてアップされた)問題皿」は、リシタンで、リシタンの職人が作った、リシタンのお皿。( (^_^;)))専門家の方、素人の推測なので、お遊びと思って見逃してください!)

すべて妄想かもしれません!!ホントにシンドの皿かもしれない。リシタンの職人さんがシンドできれいなお皿を作っていたらゴメンナサイ!それはそれで、すごく興味のあることで、マジでその点を調べたいんです。だからこそ、気になってしまったんです。大好きなウズベキスタンとパキスタンの「交差」を見て、とてもワクワクしている私です。

そんなわけで、、妄想につきあっていただいた皆様に、リシタンの青や模様をプレゼント 。(ね、やはり、「問題皿」と近いでしょう??)↓↓↓↓↓↓


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(リシタンの青の茶碗。クリアな青の発色。模様も多彩です。直径10cm程度)


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(リシタンの青の魚皿。青といっても多様です。個性的でのびのびした図柄が魅力。魚は幸福の象徴)


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(リシタンのタイル。「問題皿」の模様や色の参考になりそうなものを選びました。パキスタンの現代のタイルにも、ぜひともこれから注目していきたいと思います!興味津々です)


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(フェルガナの廟。リシタンの工房が装飾タイルを製作しました。緑色にご注目ください。この緑色なんです。だからお皿がどうしてもリシタンのものだと思ってしまうのです)

今回もご訪問ありがとうございました。年末近し。ちょっと慌ただしいですね。風邪などひかれませんように。
by orientlibrary | 2012-12-07 18:48 | ウズベキスタンのタイルと陶芸