イスラムアート紀行

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フラグメントからアンティーク絨毯まで。「コレクター」という人生の愉しみ方

いくつになっても、ワクワクする「出会い」はあるもの。そして出会いは、どのようにして出会ったかの場面によって、ずいぶん印象が違います。
古いやきものやテキスタイルとは、博物館やギャラリーで対面することが多いですが、好きなものに出会ったときには、ガラスにおでこをくっつけて一人で熱狂、感動。

でも、コレクターを訪問して、お話を聞きながら、ゆっくりじっくりたっぷり見せてもらうときの、モノとの出会いは格別。コレクターの熱が移り、、こちらも熱に浮かされてきます。見ている全員で、没頭と浮遊の狭間のようなハイな状態に。

絨毯やテキスタイルのコレクター、taiさん宅に蒐集した品々を拝見にうかがいました。蒐集は人柄ですね。taiさんのモノたちは、古くて傷んでいるものもあるけれど、それが「味」。クタ〜ッとしたところがエレガントでかわいくて、時間の経過がモノが持っていた世界をより深めている感じがします。そういうものを「選ぶ」。眼ですね。いや、心かな。
そんなわけで、今回は、見て触れて狂ったすてきなモノたちを、なんちゃって写真ではありますがシェアさせていただきます。

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きゃ〜!、、、かわいい!! taiさんにとっては「前菜に、まずこちらを」という感じだったと思いますが、私には主役級。ドカ〜ン。

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(トルクメン、テッケ族、女性衣装「chyrpy」(マント状の衣装)、フラグメント化していますが、そこがまた想像力をかきたてます!!)

元はこんなのですか〜?(↓)こんな黄色だったんですか〜?
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(Tekke Turkmen Chyrpy  Seref Ozen
Cocoon
Istanbul, Turkey より引用)

tribesakakiさんによると、「黄色は男子を出産し成人させた女性、白はめったにありませんがたしか63歳以上(61歳だったかも?)と聴いた事があります。濃紺や黒地は一般女性です」、「フラグメント化していましたが、紋様はばっちり残っていて一つ一つがテケ族の伝統モチーフでした。裏に使われていたラジャスタンの鬼手更紗も見事なもので、時代を感じる事ができました」とのこと。

フラグメントが興味深いのは、繊維や構造が垣間みられること。タイルや陶器の「かけら」にグッと引き寄せられていく私、布も断片にすごく惹かれます。なんでしょうか、この感覚。
裏地の木綿木版更紗に描かれたざっくりした模様のかわいらしさ。真っ赤で丸みのある花たち、青と赤の太陽のようなモチーフ、生命の樹のようなギザギザ。褪せた黄色。やわらかい。やさしい。
taiさん言うところの「老貴婦人」のエレガンスにやられました。はぁ〜。。。

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何気なく置かれた数十㎝の小さなクタッとした布、、こちらも「前菜」だったと思いますが、当然強く反応。だってウズのベルベットじゃないですか!

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(Central Asian Silk Velvet Ikat )

色が褪せていても、いい味わいの色合いになってますね〜。寄って見たときの、かすれ方がたまりません。色が落ちた青が渋爽やか(こんな言葉あり?)。

こちらに全体のイメージが。例えば、赤のベルベットはアップで大きく見るとこんな感じ。生き物のよう。立派な衣装で展示されているのもいいのですが、小さいものから大きなものを想像する。これが楽しいな〜。

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本当はここからが本題。taiさんはトライバルラグ(部族絨毯)とキリムのコレクターなのですから。とくに、バローチ(Baluch)とカシュガイ(Qashqaie)。私にとってうれしいのは、両者とも青がきれいなラグであること。赤系があまり得意ではないので、絨毯で青を楽しめるのがうれしい。
そんなわけで、以下すべて、青に寄った趣味趣味のディテール写真ばかりです。

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(バローチ族の絨毯、ディテール)

<バローチ民族 >
パキスタン、イラン、アフガニスタンの国境が交わる地域バローチスターン地方を中心に居住する民族であり、イラン系バローチー語を母語とするバローチ族とドラヴィダ系ブラーフィー語を母語とするブラーフィ族との総体をさし、ともに類似した民族文化を持っている。同地域ではパシュトウーン民族が隣人。宗教はイスラーム教スンニー派。狂信的ではなく原理主義やテロとは無縁。都市やオアシス、農漁村の定住民と遊牧民からなる。商業活動を潔しとせず、隣接する他民族に比べても概して金持ちは少ない。主食は小麦。他に肉、野菜、乳製品、ナツメヤシ、茶、(酒)など。
(以上、村山和之氏が以前レクチャーして下さった時のレジュメより引用させていただきました)

なんて青でしょう。中央アジアの空を思わせるタイルや陶器の青の表情とはまた違い、絨毯の青は砂漠の夜を感じさせます。
taiさんのブログで、 「エレクトリック・ブルー」と呼ばれる「光る青」が使われた絨毯紹介している記事、「Balochi prayer rug 比較」。写真の青、光っています。

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絨毯の青です。深い。

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(左上:相当古そうな絨毯。クタクタになってもう布のような薄さに。だからこそ、この花模様が浮き上がって見えてきたのです。感激/下左と中:黒っぽい青、そこに白く小さい花。やられますね〜/下右:このような和室で拝見。床の間には「敷き瓦」、土族感激)

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は〜、、こんなに花や動物や星や不思議なものたちが、ぎっしりと満員電車のように織り込まれているのに、うるさくなく調和が取れて何の違和感もなく、物語に引込まれる。すごい、すごい。カシュガイのファンが多いのもうなずけます。青が美しいですよ〜。。

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(カシュガイ族の絨毯)

村の普通の女性が織った絨毯。どんな感性?何を見て育ち暮らしている?遊牧して羊を育て羊毛を刈り糸に紡ぎ植物から染料を作り毛を染め手作りの織り機にかけ織っていく。天幕の前で。絨毯素人にも、「無理矢理お金のためではなく、楽しそうに作っている」感じ、作ることへの熱が伝わります。魅力的ですね〜!

シンプルなテイストで人気の毛織物「ギャッベ」でおなじみのカシュガイ族ですが、ギャッベだけじゃないですよね! 、、あれ、検索してもギャッベばかり、、仕方ない、英語サイトを少し散策。で、下記のような感じです。 

<QASHQAIE TRIBE> 
南イランで最も名高い部族でありペルシャ語とチュルク系のカシュガイの言葉のバイリンガルである。領域は広く、イスファハーン州のアバデからペルシア湾岸のあたりまで。非常に多くの氏族があるが、主要なものは、Kashkooli, Sheesh Blocki, Khalaj, Farsi Madan, Safi Khani, Rahimi, Bayat, Darreh Shuyee。
素晴らしい絨毯や羊毛織物で有名。ときに、その昔絨毯の集散地であった「シーラーズ」を冠されることもある。羊毛はシーラーズ近郊の山岳や峡谷で産される。イランの他の地域と比較しても、格別に柔かく美しく深い色合いを持つ。深い青、暗いルビー赤はともに途方もなく美しい。輝くような羊毛は堅牢でもあり、シルク以上に透明だと言われている。カシュガイの絨毯は、イランの部族全ての中で最も有名だと言われてきた。とくにサドルバッグは多彩色の幾何学模様で飾られ、他の部族のものよりも優れている。

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(wikipediaより2点)

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絨毯の端の部分にあるキリム(平織り)。絨毯産地では絨毯の価値が高く、キリムに重きを置かれなかったため、この部分がカットされた絨毯が流通しているケースが多いとのこと。

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(絨毯の端の部分、上下にあるキリムのパート。この色合い、質感!ざくざくして、かすれていて、、日本人好きですよね)

この美しいキリムがついているのは、貴重なのだそうです。もったいない!なんてことをするんでしょうか。taiさんのコレクションには、ちゃんとついていました。味わいがありますね〜。

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やっとここまで辿り着きました。「tekara wonder vol.1 ”The Balochi”  バローチ族の手仕事、芸能を紹介する10日間」。横浜青葉台のアジア家具店「エスニカ」にて開催中の”The Balochi”(10月12日〜21日)。

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(”The Balochi”の模様/上左:クイーンT作成のサドルバッグをつけたラクダも/上中:コレクションを説明するtaiさん/遊牧民の持ち物一覧を壁に展示、わかりやすい/下中:taiさんを囲んでの座談会/バローチ研究家・村山さんからバローチの音源を頂いてうれし〜!バローチのラグの上で記念撮影)

松島コレクション(1960~70年代に収集された遊牧民の毛織物)、taiさんのコレクション、tribeさんの展示と販売(バローチ族のラグやキリムを中心に、イラン~アフガニスタンに生活する遊牧系部族のラグ、キリム、袋物など)で、埋め尽くされています。こちらtekaraにも写真が。

時を経たもの、本物、手仕事の味わいを持つ部族の絨毯に、魔法にかかったように惹かれたというtaiさん。なんと蒐集を初めてまだ4年ほどとは!熱中人!愛情だけでなく、知識も素晴らしい。キリムや絨毯が好きな方がハマっているブログ、「My Favorite Rugs and Kilims」。ディープな話題、これからますます楽しみです。

まだ書きたい内容もあったんですが、長くなったので次回にします☆ ではまた!
by orientlibrary | 2012-10-14 23:14 | 絨緞/天幕/布/衣装