イスラムアート紀行

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モンサント、イラン式料理本、これは映画ではない、スケッチ・オブ・ミャーク

矢継ぎ早に見た映画4本。こうしてみると、観るものはドキュメンタリー(〜的なもの)ばかり。トニー・ガトリフ作品や、「ジプシー・キャラバン」など音楽系ロードムービー、中東やインド・パキスタンの文化や人々を描いた映画等が好きな私。今回も、その路線でした。


① モンサントの不自然な食べもの 〜公式サイト

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*** 公式サイトより ***  
私たちに身近な食品、豆腐や納豆、ポテトチップなどのラベルにかならずある 「遺伝子組み換えでない」という表記。当たり前のように食卓にのぼる遺伝子組み換え作物、「不自然な食べもの」。果たしてそれはどこから来るのだろうか?

世界の胃袋を握ること---それがモンサントのビジネス戦略。アメリカに本社を構えるアグロバイオ企業「モンサント社」、世界の遺伝子組み換え作物市場の90%を誇るグローバル企業の、クリーンなイメージに隠された裏の姿をカメラは追う。
遺伝子組み換え作物から、過去に発売された枯葉剤、農薬、PCB、牛成長ホルモン。1世紀にわたるモンサント社のヴェールに包まれた歴史を、貴重な証言や機密文書によって検証していく。


自然界の遺伝的多様性や食の安全、環境への影響、農業に携わる人々の暮らしを意に介さないモンサント社のビジネス。本作は、生物の根幹である「タネ」を支配し利益ばかりを追求する現在の「食」の経済構造に強い疑問を投げかける。 「世界の食料支配、それはどんな爆弾より脅威である・・・」と作中で語られる、世界の食物市場を独占しようとするモンサントの本当の狙いとは?
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「1ドルたりとも儲けを失ってはならない」という”社訓”から始まり、「種」を通じて世界の食をコントロールしようとするモンサントの容赦ない姿勢が様々な角度から描かれます。世界各地でモンサントに脅かされ苦しむ農を担う人たち。グルメ等々、食の恩恵を受けている日本の私たちにも、重い問いが投げかけられているように感じます。各地で自主的な上映会も広がっています。


② イラン式料理本 〜公式サイト

早く観たいと思っていた「イラン式料理本」、あれからあっという間に3か月も経ってしまいました。

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舞台はキッチンと食卓のみ。7人の女性が料理を作り、家族等に食事を供します。「宝石ピラフ」など素敵なネーミングにワクワク、「おいしそうでした!」という感想を書くだろうと予想して観た映画でしたが、印象はもう少し複雑です。

料理自体が詳しく紹介されないこともありますが、作りながら語る作る女性たちの来し方や状況、服装や発言、そしてできあがった料理を食す家族の様子や発言に、いろいろと考えさせられました。
「缶詰シチュー」が簡単(手抜き)料理代表のように映りますが、夜の10時半に大勢のお客が突然来たという設定でもあり、日本ならばそれほど批判されない光景でしょう。むしろ他のメニューの時間のかかり方の方が、すごい。5〜6時間も昼食や夕食作りにかけるとは、、一日が食事作りですぎてしまいます。

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手間をかけた伝統料理、家族の健康や幸せの軸となるお母さん、そのことの幸福、という価値観もあり、それはわかっていても、あまりに理解のない男性の姿との狭間で葛藤する若い世代も。(書き出したらいろいろ書いてしまいそうなので、このへんにしておきます)

台所と料理という見近なテーマ、リアルなドキュメンタリーなのに、どこか不思議で壮大な物語のようでもある、こういう映画を作ってしまうイラン映画の感性は、やはり別格です。


③ これは映画ではない 〜公式サイト

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*** 公式サイトより ***    
映像は、テヘランのとあるアパートメントの一室で始まる。失業中の男の日常? いや、これは軟禁中のパナヒ監督自身の一日を映しているのである。かといって語り口はあくまでユーモラス。限られた空間と時間にも関わらず、見る者を飽きさせない様々な創意工夫に溢れている。ラース・フォン・トリアーの『ドッグヴィル』ばりに絨毯にテープを貼り、そこを舞台にして脚本を再現してみせたり、なぜかタイミングよく上の階の住人が吠えまくる犬を預けに来たり、パナヒが警察に連行された日のことをゴミ回収の青年が知っていたり。どこまでが偶然でどこまでが演出なのか!?
黄金期イラン映画を彷彿させるスリリングなスタイルで周到に組み立てられた映像は、映画のラストでふいに建物のエレベーターを「自由」への逃走の場へと変えてしまう!
観客はパナヒ監督のユーモアにひとしきり笑い、そしてやがてその状況の重さに慄然とするのである。

タイトルの『これは映画ではない』は、20年間の映画製作禁止を申し渡されたパナヒ監督の、映画でなければ何をつくっても違反にならないだろう、という痛烈なブラック・ユーモア。逞しきプロテストが日常をエンターテインメントに変える。数々の映画祭や映画ベストテンで絶賛され、映画レビューサイト“ロッテン・トマト”で驚きの好評価100%を記録したユニークな傑作である。
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キアロスタミ監督の「オリーブの林を抜けて」が、イラン映画との出会いでした。マフマルバフ、ゴバディ、マジディ監督など、強い印象を受けた映画に出会ってきました。
無垢な子どもを主人公にして、役者には素人を使いながら、人生の深淵を描くような、また重い現実をとことん描きながら透明感があり、どこかにユーモアさえ漂わせるような、独特の世界に惹かれてきました。

「これは映画ではない」は、「完成した映像のファイルをUSBメモリーに収め菓子箱に隠したうえで、知人を介して国外に持ち出した」というスパイ映画顔負けのエピソードもあり、軟禁という特殊な状況下にある監督の日々を描く社会性の強い映画では、と思っていましたが、、またしても単純すぎる想像でした。

「これは映画である」、、かなり周到に考えられ練られ作られた映画では?、、製作を禁じられているのに大丈夫?と心配になるくらい、撮っている!ドキュメンタリーのように見えて、かなりシナリオがあるのでは?
すごい。やはりイラン映画はただ者じゃありませんね。


④ スケッチ・オブ・ミャーク Sketches of Myahk 〜公式サイトfacebook

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宮古諸島(ミャーク)、重税や理不尽な治世の中で、神とともに、歌とともに生きてきた人々とその暮らし。伝承の危機と今。
美しい海と緑と風、サトウキビを刈るサクサクという音、深い皺、腰が曲がっていても現役の80代、90代、人間味のある宮古のイントネーション、代々の民謡一家の血を継ぐ少年。
歌い継がれてきた神歌、ブルースのような古謡が、どこか血液のような部分に響いて、心がザワザワしながらも、穏やかでずっしりと落ち着くような、根源的なところで何か懐かしい感じにも包まれる。うまく書けませんが、、
原案・監修の久保田麻琴さんや製作陣の集中と熱に共振する。

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*** 公式サイトより ***  
沖縄県宮古諸島
ここに沖縄民謡と異なる知られざる唄がある。それは、厳しい島での暮らしや神への信仰などから生まれた「アーグ」と「神歌」だ。その唄は宮古諸島に点在する集落の中でひっそりと歌い継がれてきた。特に御嶽での神事で歌われる「神歌」は、やむことのない畏敬の念をもって、数世紀に渡り口承で熱心に伝えられたものである。
ことは音楽家の久保田麻琴が、島でそれら貴重な唄に出会ったことに始まる。
本作は、その唄を生んだ人々の暮らしを追うなかで、失われようとしている根源的な自然への怖れと生きることへの希望を見出したドキュメンタリーだ。監督の大西功一は、秘められた島の神事を追い、生活と信仰と唄がひとつだった時代を記憶する最後の世代である老人達を温かく見守りながら、かつての島の暮らしをスクリーンに鮮やかに浮かび上がらせた。

老婆達が神唄を歌う時、不思議な懐かしさがすべての人々の心を打つ
ミャークには、今まさに失われようとしている大切な「記憶」がある。老婆達は語る。かつて厳しい生活と信仰と唄が切っても切り離せないひとつの時代があったことを。そして今も老婆達の心を映すかのように、この島の御嶽では、神事の火が数百年に渡り人から人へと受け継がれ、神女達が生きる願いとともに「神歌」を神に捧げている・・・。
2009年、九十歳を超えた車椅子の老婆達が島を出て東京へと渡る。コンサートホールの舞台に立ち、禁断の神歌を歌うために。満場の観客を前に彼女らは力を振り絞り、歌う…。ミャークの老婆達が歌い継ぐ神歌に触れられた貴重な機会は、おそらくこれが最初で最後となるであろう…
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久保田麻琴さん。「宮古の言葉の中には万葉時代、上古代の日本の言葉の含有率がとても高いんです。するとおそらくその頃のヤマト的、日本的な心が宮古には残っているのではないかと。(中略)きっと色んな漂着なり、混血なりがあったはず。それと同時に古い日本性が残っている。このことに対する驚きというか、切なさというか、サウダージ(郷愁)を感じたんです。(中略)私が宮古にたどり着いたのは、誰も教えてくれない、そういうところに手を突っ込んで自分で触ってみたかったという希求があったからです」(公式サイト内コラムより)

CD、即Amazonで購入です。宮古上布もいいなあ。
by orientlibrary | 2012-09-23 00:21 | 美術/音楽/映画