イスラムアート紀行

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『絲網之路天空』〜駱駝の影、砂漠の足跡、込められた想い

今回は、NHK BSプレミアム『極上美の饗宴』「シリーズ平山郁夫の祈り(1)執念のシルクロード」からです。(*画像はTVより引用、またTV放送からのメモを参考にしています)

〜〜平山ほど、壮大なスケールの風景と悠久の時間を描こうとした日本画家はいない。40年にわたって、現地を100回以上も訪れ、ラクダに乗った人々が広大な砂漠を行く姿などを描き続けた。平山はシルクロードに何を見たのか? 膨大なスケッチなどを手がかりに、画家の執念を見つめる〜〜


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(平山郁夫氏は 15歳で原爆に合いその後貧血など後遺症に苦しみます。東京芸大に入学して日本画を学ぶも、何を描いていいか模索の日々。一枚でいい、自分だけの絵を描かねば死ねない。転機となったのは1958年の「仏教伝来」、玄奘がオアシスにたどり着いた場面。シルクロードを歩いて新しい表現をつかみ取りたい。1回目のアフガニスタンは38歳のとき。アフガニスタンの茶褐色の世界に戸惑います。「厳然と私を拒んでいるかのようだった」。自然を細やかに写し取る日本画の世界。岩山と砂の大地をどうしても描くことができず、ウイグルの人々をスケッチすることしかできませんでした)

数年前、玄奘三蔵求法の旅をたどる「大唐西域壁画」(奈良・薬師寺・大唐西域壁画殿)を拝見しました。平山郁夫氏が30年の歳月をかけて完成させたという入魂の作品です。灼熱の砂漠、厳寒の天山山脈を行く玄奘の旅、その艱難辛苦はいかほどだったかと思うと同時に、ときには魅了されたであろう自然が織りなす光景、絶景との出逢いを思いました。
平山郁夫氏もまた、この大自然と、そこで暮らす人々の営みに心惹かれ、まさに人生を賭けてそれを表現した方なのではないかと感じました。

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( 『絲網之路天空』)

今回の放送で最も興味深かったのは、有名な『絲網之路天空』に込められた思いの強さと、その表現方法。「悠久の歴史」を感じさせる平山作品、様々な実験や取材をもとに、その秘密に迫ります。

ちなみに、ナビゲーターとして登場するのは、大自然やシルクロードの写真を数多く撮っている写真家の秋野深氏。キリリとした構図と温かさの伝わる写真が魅力的。青の装飾タイルが好きとのことで、タイルの写真も綺麗ですよ!^^!

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( 1970年にトルキスタン遺跡、その後バーミヤン遺跡へ。茶褐色の世界、伝統的日本画にない題材。最も関心を寄せたのが駱駝のキャラバン。人の営みを色濃く感じさせる姿。シリアの家畜市場の作品では駱駝の姿形がよくわかる描き方をしているが、ここではシルエットに。象徴性を高める)


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(いかにもシルクロードという印象の駱駝のキャラバン。平山氏は砂が風に流されていく光景、流砂を見て砂漠が海のように見えたという。思い浮かべたのは故郷である瀬戸内海の風景。「駱駝船が行き来して交易しているようだ」。それが砂漠のキャラバンと重なった、悠久の流れの中に厳しい光景の中に人の営みがある。そこに惹かれた。風景のスケッチが可能になった。同行した妻・美知子さんが、常に傍らにあり行っていたこと、それは、、鉛筆を削ること。「鉛筆削れ!とすごい迫力で言われました。彼は風景と向き合っていました。鬼気迫るように」)


秋野さんは、『絲網之路天空』の場面となったと思われるトルファンの火焔山あたりを歩きますが、描かれた光景とリアルな景色は、山ひだや太陽の位置などが微妙に異なることに気づきます。平山さんは、何を意図して構図や表現を変えたのでしょうか。

(以下、長くなるので端的に書きます)
 まず重要なのは、駱駝の影(現地で人々に取材。「帽子の形は100年以上前のもの。交易が盛んで豊かだった頃。豊かさを描きたかったのでは」、50年前はキャラバンに入っていたという老人は「駱駝のコブが元気ではない。長旅で疲れている」等々。シルエットの駱駝は見る人に様々なイメージを描かせる)
 逆光で輪郭を強調
 強い象徴性を持たせる(イメージやシルエットは日本画の伝統にない。想像力をかき立てる)
 稜線が右から左へ。砂漠の緑、斜めの線がある(動きを表現、移動を表す、右から左に進んでいる、山と砂漠、2本の線)
 隊商の前に余白(悠久の歴史、それが今も続いていること、動きを感じさせる)
 幾筋もある砂漠の横線(多くの隊商が歩む事によりできたものであり象徴的な意味。いにしえの人々がシルクロードを通して交流した長い歴史。素晴しい表現方法)
 砂や横線が点で描かれている(悠久の歴史。砂は岩絵の具により雫のようなかたまりで描かれる。膠と混ぜ水で絵具薄める。重ねて塗ると盛り上がるようにたまる。ムラが質感、風合いになる。乾かしてまた塗るを繰り返す。横線も何度も塗り重ねる)


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(左上は画の砂の部分。砂漠の砂や足跡、隊商が行き交った道筋を、色を何度も何度も重ねて塗ることにより表現)


まさに「あらゆる手法を使って描ききった」のですね。
1972年に日中国交が正常化。世界を部隊にした文明の道がロマンをかき立てました。シルクロードを通して西域が日本とつながっている、そんな高揚感さえ湧いたかもしれません。「人間の営みを描き込もうとしているという点で現代的」「膨大な歴史の集積を表現するためロマンをかき立てた」。表現方法という切り口から、画家の想いに迫った、いい番組でした。

私が平山さんの絵から感じるのは、歴史を生きた人々への、かの地で暮らしを営む人々への敬意と想いです。そこに敬意を持ちます。


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シルクロード、トルファンの話題から、「ウイグル人の生老病死について」(Halqigül Pattarさん/現代イスラム研究センターのfacebookより/転載許可を頂きました)をご紹介しようと思っていたのですが、長くなるので(〜実際は上をまとめることで力尽きたため)次の機会にしたいと思います。
ウイグルの暮らしについてのリアルな情報に触れる機会が少ないので、うれしくなりました。facebookは、こういうことが有り難いな〜。最近、パキスタンの陶芸工房やタイルの現場についても知ることができ、喜んでます!^^ムルタン、行きたいぞ〜♪

最近といえば、、ついにアジュラク入手〜☆いんどもようさん、どうもありがとう!とってもとっても気に入ってます。肌触り最高〜!

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(左:グジャラートのアジュラク。ストールとドゥパタ☆^^/右上:ウズベキスタンのアトラスを使ったカンノさんの作品/タジクの民族衣装/右下:タイル!?と思って近づいたら写真だった、、渋谷のセレクトショップ。でも、ま、いいか、、タイルもついにキテますかね!?)
by orientlibrary | 2012-07-01 23:24 | 美術/音楽/映画