イスラムアート紀行

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日本の大工道具職人〜中央アジアと日本の土の景

当「イスラムアート紀行」についてもご紹介いただいたWEB「左官的塾」、編集委員の皆様や有志の方々のお力により、日本における「塗り壁の文化を伝える」取組みや動きについて知ることができます。ありがとうございます。
そのなかの「左官的塾の本棚」、今回は『日本の大工道具職人』でした。

「著者は50年余りの道具と資史料収集、伝聞、そして尊父の時代から関わりを持った鍛冶職人との深い交流により、長年の調査・研究を整理分類し考察の成果をこの本にまとめられた」「製作した鍛冶職人の系譜をはじめ、鍛冶職人の歴史を後世に残すと云う著者の純粋な意図は、著者の豊富な知識と鍛冶職人へのやさしい感情により、その貴重さを伝える格好の本と評したい」(蟻谷佐平氏)

さらに「補論の左官3編は左官的塾読者にとってより身近なテーマになる。著者の道案内(考察)に思わぬ新発見および新史実に出合えると思うので楽しみに読んでもらいたい」となれば、早く読んでみたいと気がはやります。
書店販売はなし、でも、と住所を見ると、、なんとよく通る場所。交差点にある老舗金物屋さん。そのご主人が著者だったのです。さっそくチャリでGO☆

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(左上:三宿交差点のスズキ金物店にて。著者鈴木俊昭さん/鏝の品揃え&愛情が伝わる陳列や飾り付け/右下:『日本の大工道具職人』&先月、西岡常一さんのドキュメンタリー映画「鬼に訊け」を見たので何か書こうと思っていました。槍鉋、忘れられません。『木に学べ』を再読するつもりです)

入ってみると、左官鏝(こて)が壁面を埋め尽くします。鏝ってこんなに種類があるんだ!大工道具や内装用品も豊富です。
「鏝の品揃えは東京一だと思いますよ」と温かい話し方のナイスミドルが。店主の鈴木俊昭さんです。さっそく来店の経緯をお話し、本を購入させていただきました。
大工道具や道具を作る職人という観点での調査や研究が少なかったことから、自分で研究を始めたそうです。8年がかりという力作。

第1章 江戸・東京の大工道具職人/第2章 会津の大工道具職人/第3章 越後・新潟の大工道具職人/第4章 播州三木の大工道具職人、と、まさに「道具と道具を作る職人」についての詳細な記述が、端的で読みやすい文章で書かれています。

補論として「1、「左官」呼称の変遷について/2、左官鏝の歴史について/3、左官鏝の柄について」と、左官についても興味深い内容がぎっしり。
ちなみに、「左官」という職名が文字で出現したのは慶長10年(1609年)の宇都宮大明神御建立勘定目録。それまで壁塗職の主流だった「壁塗」ではなく「左官」に統一されるのは、寛永19年(1642年)京都御所の壁工事からだそうです。

「「左官」の語源については、諸説あって明確な定説はありません」が、「本来、「右」にも「左」にも共に助けるという意味があり、「右」は上から助け、「左」は横から助けるという違いがあります。その意味から近世において壁塗職が大工に次ぐ地位を獲得して「右官」でなく「左官」と呼称したことはまさに適切であったと思います」と鈴木さんはまとめています。

現在、続編の最終編集段階とか。「続編はもっとすごい内容ですよ」と鈴木さん。今年秋に出る予定とのことで、またお店にうかがって入手したいと思います。お話できて楽しかったです。ありがとうございました。

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久々の土の話題です。各地の土の景を振り返ってみたくなりました。今回も、写真はコラージュでまとめました。

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(上2枚:甲斐大策さんのカレンダーよりアフガニスタン/左上:木の家、絨毯や刺繍/右上:土壁に漆喰?/左下:ウズベキスタン、木のモスク。天井はペインティングで埋め尽くされている。ウズベキスタンはペインティングも素晴しい/右下:ウズベキスタンの民家。土壁に漆喰、白が涼しげ。扉は木、木彫り装飾を施す)


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(中央アジアの素材/左上:キルギス。ユルタ組立中。木の構造体にフェルトなどを巻き付ける/右上:カザフスタン。焼成レンガ、木、藁など/左下:キルギス。白い壁、水色の窓枠や扉、緑の屋根が北方っぽい。キルギスの自然は美しく中央アジアのなかではおだやかな印象/右下:カザフ。日干レンガ、焼成レンガ、土壁)


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(中央アジア、土の景//左上:ウズベキスタン、かまど/右上:ウズベキスタン、庭にある焼却炉/左下:ウイグル、葡萄干し小屋、風味抜群の干し葡萄ができそう〜TV番組より/右下:ウズベキスタン、民家の庭で日干しレンガ作り。強い日差し、小雨)


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(ウズベキスタン西部、カラカルパクスタン共和国の土の景。キジルクム砂漠に残る古代ホレズム王国の都城跡。紀元前からの土の佇まい。遺跡には青い空と花々がよく似合う)


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(トルクメニスタン、世紀の発見と注目されているマルグーシュ遺跡=最古の文明の発祥の地の一つといわれる。トルクメニスタンには、中央アジア最大の遺跡メルブ、パルティア時代の隊商都市として栄えたニサ遺跡も。土、土、土!行けども行けども土!〜首都アシュハバードの謎の白大理石の街以外は、、/窯址、灰釉?/赤土の瓶がゴロゴロとそこら中に、、陶片欲しい/建造物の壁、スサ?/砂漠の土いろトカゲ)

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(与論島の土や素材。ヨロン島は奄美群島のひとつで、鹿児島県最南端の島。与論特有の茅葺き屋根、沖縄文化の影響を受けており琉球風の赤瓦屋根の民家も。珊瑚など素材総動員。台風の揺れを吸収する木の柱も)


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(日本の土の景。左上:いわき市にて。土壁にバングラデシュの刺繍布カンタ/右上:常滑市INAXライブミュージアム内「土・どろんこ館」、判築の壁〜土壁や建築の基礎部分を堅固に構築するために古代から用いられてきた工法/左下:奈良にて。土壁/右下:常滑のギャラリー。土壁に常滑の急須)

やはり、日本の土の景色は落ち着きますね。そして、そこには必ず、日本の左官と陶芸家の技術があり、魂がある。日本の左官も、左官道具も、やきものも世界一!
そう、世界一のものが見近にあるんです。壁や床、世界一の左官仕事、やきもの、もっとじっくり、かつ楽しんで見ていきたいですね。
これからも、土、タイル、壁、レンガ、瓦、やきもの、見ていきたいと思います。
by orientlibrary | 2012-06-16 15:39 | タイルのデザインと技法