イスラムアート紀行

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春のイラン・トピック 〜映画「別離」、ポロック展作品貸出〜

連休ノープラン、、ウロウロヨロヨロしているうちにゴールデンウイークになってしまいました。日がたつスピードが年々早くなり、行動がついていけていません。トルコに行く計画もありましたが、またの機会に落ち着いて行こうと思いました。塞翁が馬。それはそれで良し。一日一日大事にすごしたいなと思います。

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(イラン香炉/12世紀/gorgan/「CERAMIK OF JORJAN 」GLASSWARE AND CERAMICS MUSEUM OF IRANより)

先日観たのは、話題のイラン映画「別離」。第61回ベルリン国際映画祭では最高賞である金熊賞、女優賞、男優賞の2つの銀熊賞の計3部門で受賞。第84回アカデミー賞では外国語映画賞を受賞し、脚本賞にもノミネート!イラン映画がアメリカ文化の象徴的なアカデミーの賞、、いいですね〜!せめて文化では仲良くいきましょう!

映画について書くのは難しい。ストーリーなど、どこまで書いていいか迷います。公開されている範囲を意識しつつ、印象を書いてみたいと思います。

まず、今回のアカデミー賞受賞は非常に納得できました。イラン映画といいうと、キアロスタミやマフマルバフのイメージが強くあります。子どもや素人を起用し、重厚さや透明感を打ち出す独特の手法や展開。そこが魅力。なので、アカデミー賞受賞作品ってどうなの?という思いも正直ありました。

印象は、ローカルでありながらユニバーサル。イランの事情、現実を描き込みながら、どの国にも共通する問いを投げかけています。そこに新しさを感じました。
介護、失業、教育、格差など、どの国、地域でも見られる社会問題。そこに、イランの宗教、女性の問題も絡み、展開はサスペンスのようです。

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(イラン/12世紀の青/gorgan/同)

登場人物はそれぞれに人間味があり強さも温かさもある人たちなのですが、様々な事情から嘘や保身が幾重にも渦巻き、状況は複雑に絡み合って展開。が、ストーリー展開についていけるように脚本はよく練られていると思いました。

わかりにくかったイランの事情は、帰宅後にこれを見て解決! →公式サイトには、映画『別離』を理解するためのワンポイントがあり、よく理解できました。

話の発端である、主人公の父親の介護問題。自宅では無理では?施設は?と思いますが、「イランでは老人介護の施設が非常に少ない。それは、介護は家族の役割であり、施設に入れられた老人は大変不幸であるという社会通念が強いためであるという」との説明がありました。

介護費用やお給料の感覚も、解説で掴むことができました。痴呆症のお父さんがなぜ外に出て行くかも。
解説のトップが「スカーフ」であるのも、納得です。映画、スカーフの印象が強烈です。とくに信心深いラジエー、家事にはキツいですよ、、いろんな考えがあるでしょうが、着用が義務ではなく選択、あるいはTPO次第だったら、と思ってしまいます。

失業や結婚契約、結婚資金など、男性も大変。裁判所での審議や進め方も、もう少しなんとかならないかと気をもみました。

画面に入り込み、ハラハラしたり戸惑ったり、自分ならどうするか考えたり、そして映像からいろんなことを学んだり、、映画らしい映画を観ることができたと思います。


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もうひとつ、イラン関連のトピック。

絵画より工芸好きなので、あまり絵画を見に行かないのですが、ジャクソン・ポロック(アメリカ/アクション・ペインティングの代表的な画家)は見たことがあります。
いま、東京国立近代美術館でジャクソン・ポロック展(〜5月6日)開催中ですが、展示の目玉は、「インディアンレッドの地の壁画」。「ポロックの最高傑作で、約200億円の評価額を得ている絵」。この持ち主が、テヘラン現代美術館。

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(インディアンレッドの地の壁画/1950年/テヘラン現代美術館、Tehran Museum of Contemporary Art)

「76年にイランのパーレビ国王のファラ王妃が購入、テヘラン現代美術館の所蔵に。79年、イラン革命で国王一族は国外に脱出。王妃が収集した絵画類は「米欧の腐敗した文化」として一時期、倉庫にしまわれたままになった。世界の美術界にとっては垂涎の的。もちろん「インディアンレッドの地の壁画」が国外に出るのは初めて」(饗宴外交の舞台裏/西川恵さん より引用)

イラン側は国立近代美術館に借用料無料で貸し出してくれたばかりか、貸出しに際しては一貫して協力的だったとか。

「展覧会に合わせ来日したテヘラン現代美術館のシャルエイ館長は「イランと日本とは長い信頼関係があり、日本には作品保全の高い技術もあるので大事な作品をお貸しした。欧米でも作品保全の保証があれば出品します」と語った。核開発問題での強硬姿勢とは異なり文化交流ではイランは柔軟だ。核開発の原則は譲れないが、それ以外では国際社会と協力するとのシグナルでもあった」(饗宴外交の舞台裏)

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(ラスター彩皿/12世紀後半〜13世紀前半/同)

先日、海外送金の書類を書いていたとき、但し書きに「北朝鮮とイランには送らない」ような一項目があり、チェックを入れましたが、この二つの国が同じ線上ですかね、、??核開発が問題なら、他にも「制裁」の対象となる国はあるのでは?
「別離」の登場人物も靴屋を解雇され、借金に苦しんでいましたが、経済制裁は生活に影響しているのではと思いました。

また、「イランは美術品を外に出した経験がほとんどないため、梱包や通関手続きをする代行業者がおらず手間取りましたが、イラン文化省は予定通り絵の国外搬出にOKを出してくれ、ホッとしました」(饗宴外交の舞台裏)という国立近代美術館担当者のコメントを読んで、この点も、しみじみと安堵しました。

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(イランのアーティストはセンスがいいです。絵本「ネシャーニー」(絵:シャラーレ・ホスラヴァニーさん)表紙より部分)

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*「別離」上映時の予告編で、アキ・カウリスマキの新作上映(「ル・アーヴルの靴みがき」/2011)があるのを知りました!^^「街のあかり」以来、5年ぶり。
もちろん、いつもの面々がいました!年を取ったけど、いい感じ。ますます個性に深みが出た感じです。これは観ます!楽しみです。

「心をみがけば、奇跡はおこる」、映画のキャッチフレーズ。そうなのかもしれませんね。精進しなくては、、「イスラムアート紀行」もペースを少しアップしていこうと思っています。

楽しい連休をお過ごしください。

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(GLASSWARE AND CERAMICS MUSEUM OF IRANにて)
by orientlibrary | 2012-04-28 00:32 | 美術/音楽/映画