イスラムアート紀行

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「青の魅惑」 潤む青のタシュチニ 〜メフメット・コチェル氏 洗練優雅な青の世界〜

昨年11月より、INAXライブミュージアム(愛知県常滑市)にて開催中の「青の魅惑 イラン・トルコ・ウズベキスタンのやきもの」、早いもので3月20日が最終日となりました。

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なぜこの地で、青が脈々と作りつがれてきたのか。旅先の西アジア、中央アジアのオアシス都市で出会う青の建築物、とりわけ装飾タイルの青の煌めき。「青の理由」と「青の秘密」が、どんどん知りたくなりました。

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「シルクロードはコバルトロードでもある。各地の青に違いはあるのだろうか。あるとしたら、どのような違いがあるのだろう」。
青をテーマとした展覧会はできないだろうか。時間をかけて、そんな気持ちが固まってきました。開催を検討していただく博物館に打ち合わせに行こうとしていた、まさにその頃に、東日本大震災がおきました。
2011年3月末から6月前半までは、「美しい世界の手仕事プロジェクト/東北の手仕事」に、邁進しました。

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「青の魅惑」は春からじょじょに準備を始め、初夏から集中しました。が、なにしろイラン、トルコ、ウズベキスタンという「手ごわい」国々。欧米ならば、なんの問題もなく可能なこと、一つ一つが手ごわい。

「青の魅惑」展をめぐるエピソードは、まさにunbelieable。自分でも、本当にあったことかと思うくらいです。毎日、何回も「イッシャアッラー」を繰り返していました。
とにかく、6人の作家の作品たちは、何事もなかったように、博物館のギャラリーに堂々とした姿を見せています。ありがたいです。

今回は「最終日間近エディション」?ということで、写真にて一部作品のご紹介。
メフメット・コチェル氏(トルコ・キュタフヤ在住)の、極めて繊細細密、かつ流麗な絵付けの作品をごらんください。

(キャプションは、トルコ作家のコーディネーターをお願いしたイスタンブル在住の絵付け作家・ルキエさんの資料を参照させて頂いています。ルキエさんのおかげで、展覧会が成立しました。心よりの感謝を!)


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■■■■■  メフメット・コチェル/トルコ・キュタフヤ在住/ Mehmet Koçer/Ktahya , Turkey /1951年エラズー生まれ。現在のキュタフヤ陶器の特徴と言われる描き方・様式を生み出した作家。教育者としてキュタフヤ・ダムプナール大学で勤め退官後、現在はアルトゥン・チニ陶器産業のチニ生産責任者兼デザイナーを勤めている。今なお日に10〜15時間を陶芸制作と研究に費やす。 ■■■■■


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(展示会場、トルコ作家コーナー/紹介パネルでは「青の理由」「青の魅力」を出展作家に語っていただいています)

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(展示会場/メフメット・コチェル氏のコーナー)


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(壺(タシュ・チニ)/幅最大36cm、高さ46cm/ブルー&ホワイト、ババナッカシュ様式)(澄んだ白い肌を持つ中国磁器への憧れから15世紀後半から始まった「タシュ(石)・チニ」の生産。石英を80-85%も使用。化学的なことはさておいても、一見して何かが違う。地肌が潤んだようにまったりと白く、青の発色が明快。絵が生きているように、筆が流麗に走っています。描きにくいに違いない地肌をものともしない絵付けの見事さに感嘆)


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(オスマン朝時代のチニ、工芸等を再現展示しているアマスヤの「皇太子博物館」。上の壺がスルタンの部屋を象徴するものとして左右対で展示されているそうです。まさにオスマンの香り!)


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(扁平蓋付壺/幅最大34cm、高さ38cm)(品格のある形と絵付け。メフメット氏は、現在、次の「Living Human Treasure」〜日本で言う無形文化財所持者〜に最も近いと言われています)


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(ブルー&ホワイトの絵付け皿。直径40㎝/赤いカーネーションがポイントです)


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(飾りタイル(タシュ・チニ)/幅40cm、高さ45cm(額装含む)/カリグラフィー(チューリップとアッラーの文字 La ilahe illallah ))


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(モスクランプ/ブルー&ホワイト/ババナッカシュ様式)(「Mehmet  Kocer」個人のサイン入りの作品は非常に少なく、トルコ国内でも入手が大変難しい状況です。今回の出展は、ご本人の個人コレクションからのもの。「紹介者である大学教授と親しいこと、青というテーマが気に入ったこと、日本が好きなこと」の3点から出展を決めたとのことです)


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(絵付け皿、直径40㎝/ブルー&ホワイト/ルーミー・ハターイ様式)(ルーミーは、アラベスク、イスリミとも呼ばれ螺旋を描きながら連続してゆく装飾文様。ハタイとは、どれと言って特別の花を指すのではなく”一般的な花”の縦割りにされたもの)


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(飾りタイル(タシュ・チニ)/トプカプ宮殿・割礼の間壁面タイルの模写)(展覧会のポスターにも使われた美しく勢いのあるタイル。素晴しい)


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(絵付け皿/ブルー&ホワイト/サズ様式/直径50㎝)(現在のキュタフヤ陶器の全体の特徴と言われるようになった描き方、波打つように長い葉先、空間を音符のような葉のようなクルクルとした模様で埋めるといった様式を生み出したのはメフメット氏)


実際にお会いしたメフメットさん、厳格な方と覚悟してお会いしたのですが、やさしくて、とても気さくな方。初対面であるにも関わらず、話が尽きませんでした。こんなことも、おっしゃっていました。

「夜中に絵付けをしていると、描いている花が語りかけてきます。“もっと私を綺麗に描いて。隣の花よりも綺麗に描いて”と。そんな会話を楽しんでいます。毎日10時間、15時間と制作していますが、制作しなくていいと言われたら、、私は死んでしまいます。そのくらい絵付けが好きなのです」(コチェル氏)。


展覧会は20日まで。6作家の作品は、一部販売もしています(コチェル氏作品含む)。日本では入手困難なものがほとんどです。ご興味のある方は、INAXライブミュージアムへ!
by orientlibrary | 2012-03-07 23:19 | 世界の陶芸、工芸