イスラムアート紀行

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羅、経錦。北村武資、究極の織の世界

『「織」を極める〜人間国宝 北村武資』(Kitamura Takeshi Master of Contemporary Weaving)/東京国立近代美術館 工芸館/4月15日まで)。タイトル通り、まさに究極の織の世界。”組織の美”とも言うべき細密さと優美さに魅了されました。

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(展覧会チラシ)

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北村武資は1935年京都生まれ。京都西陣で得た高度な織の技術と現代的な感覚によって、織の造形に新たな地平を切り開きました。1995年に「羅」、2000年には「経錦」で重要無形文化財保持者に認定され、今日を代表する作家として国内外で高く評価されています。(展覧会資料より)
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(書籍表紙/代表作「碧地透文羅裂地」azure tomon-ra fabric 1992)

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(「まさに綟織(もじりおり)の極と言うべき作品で、少し離れてみればまさに蝉の羽根のように見え、われらが羅として考えているものとはまったく性格の異なる作品であり、経糸が整然と綟れ、解けていく動きを追うのも楽しかった」/書籍解説文より引用)

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「羅」は複雑なもじり組織(たて糸がからみ合ったところによこ糸を織り込む)が透明感に満ちた生地を作ります。中国前漢時代までさかのぼる歴史を持つこの織物は、日本では中世以降衰微しましたが、北村の挑戦は古代織の再生にとどまらず、過去に例のない経糸の大胆な動きで文様と陰翳とを構築する「透文羅」の創造にいたりました。(展覧会資料)
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(萌黄地透文羅裂地 yellow-green tomon-ra fabric 2010/チラシより)

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同じく綟織に属する紗や絽が隣り合う2本1組の経糸を一方向に綟らせるのに対して、羅は1本の経糸が3本先の経糸を求め、しかも左右に振れながら緯糸の通り道を開く。経糸が交差点にいたる動きの複雑さと綟りが緯糸の密着を押しとどめることから、羅は編目状の組織となり、他の綟織よりもさらに際立った透明感を可能とする。(書籍解説文より)
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(羅織着物「四ツ菱欅文羅」 kimono of ra fabric with four lozenge on crossed-parallel-line 2000/書籍より部分)


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(花房文羅金裂地 ra-kin fabric with braided flower pattern 1981/書籍より部分)


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(裂地「黄地透文羅」 yellow tomon-ra fabric 1996/書籍より部分)

全部スキャンして、さらには組織を拡大で紹介したい衝動にかられますが、、そういうわけにもいかず、、 ご興味ある方は展覧会で実物をごらんください。

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古代織の「経錦」においても、困難とみなされてきた大型の文様を織り上げ、つややかな質感と豊かな色彩は整然としたパターンに生き生きとした表情をもたらします。どちらの技法についても「織物の組織そのものが表現」と考える北村のきれ地は、わずかな厚みのなかでたて糸が複雑に交錯し、静かなムーブマンと奥行さえ感じさせるものとなりました。(展覧会資料)
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(経錦丸帯「瑞松」 one-piece sash of tate-nishiki fabric "auspicious pine" 1992/チラシより)

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(経錦丸帯「瑞松」 /書籍より/帯として動きが加わると表情がさらにゆたかに。やわらかく、陰影にも深みがある)

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経糸で色柄を織り出すには経糸に色糸を使わなければならない。織り出そうとする色が三色ならば三種類の、四色ならば四種類の色糸が必要である。一般には三重経と言われ、三色三本の糸を一組として経糸に使う。織り出そうとする色糸を表に出しながら横糸を入れていく。その為に経糸には細い糸(通常の三分の一の太さ)を使わなくてはならない。他にも四重経、六重経と言われる経錦もあるが、これらを織るには大変高度な技術と手間が必要なので経錦と呼ばれる織物のほとんどは三重経である。
(WEB「結城屋きもの博物館」)
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(経錦裂地「青花」 tate-nishiki fabric "blue flower" 2009/書籍より部分)

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(七宝連珠文経錦丸帯 one-piece sash of tate-nishiki fabric with interlocking circle pattern 2010/書籍裏表紙より部分/これが織!?実物を見ても、まだ信じられない。実物は白の色合いが、よりやさしい印象。同じ大きさの円の円周を4分の1ずつ重ねて繋いだ七宝文様。円の内側に花文)

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北村氏の織った経錦は、きめの細い柔らかな織が特徴である。色糸は三色しか使えないので華やかな、あるいは複雑で豪華な織柄を出すことはできないけれども、単純な上品さとでも言える作風である。そして、帯の本来の使命である「帯を締める」ということに関しては絶品である。その柔らかさは緯錦では得られない締め心地だと言う。(WEB「結城屋きもの博物館」)
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日本の伝統的文様の律儀な美。そして色の魅力。複雑な中間色から鮮やかな原色まで、さまざまな色で織り上げる。まさに多彩。斬新な模様も楽しい。contemporary weavingと言われるゆえんでしょうか。
細密の極地は濃厚濃密でありつつ、透明で繊細優美でした。コツコツと織り続けて、けっして寡作ではない氏の作品群に、日本の匠の底力を感じ、うれしくなりました。世界の人に見て欲しいです。

* 「織」を極める人間国宝 北村武資::北村の初期から今日までの作品約130点を、2期(前期2月7日~3月11日/後期3月13日~4月15日)に分けて展観。
by orientlibrary | 2012-03-01 22:28 | 絨緞/天幕/布/衣装