イスラムアート紀行

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Coke Studio、心地良い衝撃と波動。捨てよ学問、Aik Alif アリフの一文字

「Coke Studio tokyo 世界が熱狂したパキスタン発音楽TVショウ」、待ってました!

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パキスタンの音楽番組「Coke Studio」(2008年〜2011年)を紹介するイベント(「 Coke Studio tokyo」公式サイト)。大きな画面で見て、ライブハウスのいい音響で聴けるという、うれしい企画。うちでYouTubeで見て(聴いて)はいても、もっと聴きたい、知りたいという気持ちが募ります。

イベントは、パキスタンの芸能や音楽に詳しく「Coke Studio」を早くから紹介してくれていた村山和之さんと、インドのA.R.ラフマーンはじめインド全般に詳しい矢萩多聞さんがナビゲーター。これはもう本当にワクワクです。

「パキスタン人が自ら企画し、パキスタン人ミュージシャンたちが伝統(古典・地域)音楽と現代音楽をコラボレーションさせる。新しいパキスタン音楽の創造を目指したこの番組は、昨今、彼らが世界に向けて発信したもののなかでも、最高の無形文化輸出良品である」(『Coke Studioの歩き方』より/村山和之さん)

「しかも、この輸出品、無料かつ無税というところが、彼らの心意気だ。従来の市場原理とは異なり、ダウンロードされて流通することを前提に制作されている」(同)。パキスタンのCDショップには、正規ディスクはないにも関わらず、たくさんのDVDやCDーRが販売されているそうです。日本にいても、YouTubeでいつでも見たいだけ見られます。まだ見ていませんが、メイキング映像もfacebookにアップされているそうです。今度見てみよう。

「Coke Studio」、見ながら、聴きながら、いろいろ感じ、考えた。

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今回のイベント、最初の曲にふさわしい一曲「Aik Alif(アリフの一文字)」から。ガツン!

"Aik Alif, Noori & Saieen Zahoor, Coke Studio, Season 2"






↑ *村山和之さん和訳字幕入りバージョンに変更!!*「コークスタジオ第二季より、サーイーン・ザフールとヌーリー(バンド)。パンジャービー語とウルドゥー語の歌詞。パンジャービーはバーバー・ブッレー・シャーの詩片」だそうです。

この曲が一番良かったという観客(知り合い)が多かった。
「莫迦たれ。捨てよ学問。アリフ一字でこと足る」。すごい歌詞、すばらしい歌詞。素晴しい歌唱、堂々たる朗唱。村山さんの和訳が字幕としてつき、合わせて聞くと、この歌のすごさがゾクゾクと伝わります。
数分の間に走馬灯のように、人生を、来し方を、今を、これからを考えていました。音楽とは、そのようなものなのだと思います。脳の中の何かに作用して、時を、自分を旅するのです。


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"Nar Bait HD, Akhtar Chanal Zahri, Coke Studio, Season 4"







アフタル・チャナールの「バローチ族のバラード」。「Coke Studio」とYouTubeがなかったら、知り得なかっただろう世界。バローチ族の誇りを歌いあげている。「アジュラック」(肩にかけている木版捺染の布)も、いいですね〜。

「生きよ永遠に!/先駆け自慢の我が友、山の猛き息子よ/狂い酔うさま愛ゆえに、熱く誰にも止められぬ/生きるも死ぬも構いなし、この世に恐るものはなし/一人ゆく鷹、ハヤブサか、高き山の尊き人よ(後略)・・・」(村山和之さん和訳)

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"Daanah Pah Daanah HD, Akhtar Chanal Zahri & Komal Rizvi, Coke Studio, Season 4"







アフタル・チャナールがクマル・リズヴィとバローチスタンを高らかに唄う。地名や名所が出てくるのが親しみやすい。バローチスタンに行きたくなる!
歌というより朗詠(ラップ?!)のような部分が多いけれど、声だけで存分に聴かせるのは叙事詩語りの伝統から?コーランの朗唱など、朗唱が自然に体に入っているのかな。美声というわけではないけれど、魅力がある声、谷間に響き山肌に沁み入るような声。

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"Rona Chod Diya, Zeb & Haniya and Javed Bashir, Coke Studio"






重量級の歌が多い中で、女性が入るせいか、軽快さもあり、楽しめる。北インドの音階の連写のような表現がすごい。この組み合わせ、、プロデューサー、素晴しい。

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これは、イベントでは紹介されなかった曲。Noori(「Aik Alif」の後半を歌っている)があまりにいいので、ブログでアップ。ロックと北インド音楽が好き、なので、、ものすごく好み。YouTubeで、この原曲らしき曲を発見。相当に土着的、民謡的。それもいいけど、ここまでの曲に作り込む、歌い込む、そのことにさらに驚きました。

"Hor Vi Neevan Ho, Noori, Coke Studio, Season 3"







ロックバンドNooriは、公式サイトなどを見ると、ポップで、なんだかアイドル的な感じ。が、この上手さ、魂のヴォーカル、素晴しい。

ちなみに、英訳詩のサイトにこの歌がありました。

Bow your head even further down (in humility) (Repeat。畏みて頭を深く垂れよ。これが何度も何度も繰り返されている)
Fakir, bow your even head further down (in humility)
There is great pleasure in holding the head high in arrogance
But, that pleasure will never be fulfilling
One day you will be bestowed with His presence
Lord, if only someone could understand the deliberations of my heart
I am a seeker who seeks nothing
I am a wanderer, roaming from one land to another
No one can unravel the secrets within me
I am a wanderer
Come along, come with me

*さらにYouTubeコメントより発見。(ちなみにYouTubeコメントは絶賛&絶賛。とくにインドからのメッセージが多い)
”very deep message share in this video . this is poetry or Kalam of Baba Bully Shah in Punjabi Language. he says. u should become more humble if u want to get some thing in this world. if you have some knowlege u will represent it with ur attitude . trees with full of fruit branches always down”

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総合プロデューサーは、ロハイル・ハヤートとアンバール夫人。

「映像の中では輝いている音楽家たちも、日々の生活は貧しく、社会的地位も低い。ロハイルは愛と情熱で最高の作品をつくり、その立役者である音楽家の再評価をも社会に促そうと必死に走っている。Coke Studioは単なる娯楽的文化祭ではないのだ」(『Coke Studioの歩き方』より/村山和之さん)

小さなスタジオで生まれた番組は、テレビやインターネットを通して、パキスタンだけでなく世界の音楽ファンから熱狂的な支持を受けました。中には600万回もアクセスがある曲もあるそうです。

「この番組が、南アジアのフュージョン音楽発信大国としてのパキスタンを、全世界の音楽ファンに知らしめた功績は限りなく大きい。(略)イスラーム原理主義、テロの温床、インド側の先入観や知識で固まったまま、パキスタンを見ぬように。莫迦になって、愛のまなざしで、ありのままに向き合ってごらん。音楽を受け入れてごらん。そこではじめてわたしたちは対等の地平に立つのです」(『Coke Studioの歩き方』より/村山和之さん)

音楽を聴き、映像を見ながら、感じたこと、考えたことは、たくさんあって、書ききれない。
伝統と新しさというテーマは、音楽だけでなく、工芸、私の好きなやきものや染織にも共通するテーマ。そして、宗教を持つ人生・生き方と、生産と消費を基軸とした価値観のこと。

音楽は、触発する。五感に届く。音楽や舞踊を禁じている人たちは、そのすごさをわかりすぎているから?それとも、そのような経験をする前に聴くことをやめたから?

この番組の視覚、演出もすごい。パキスタンの激ハデな車のデコや聖者廟の電飾を連想させつつ、より洗練されている。70年代のサイケデリックも彷彿とさせるが、よりデジタルで広がりがある。パキスタン、すごい、、

この革新的な番組が、映画大国であり音楽でも有名なインド発ではなく(インド版のCoke Studioもありますが)、音楽的にはあまり知られていないパキスタン発であったこと。プロデューサーや周辺の人たちの熱が、数倍高かったということでしょうか。「思い」は状況を超えて行く。
国境を軽々と越えるインターネットの浸透力もすごい。

そして、このようなイベントを企画し実現してくれた村山さん、矢萩さん、その熱い思いと行動力に、心からのお礼を。ありがとうございました。村山さんの訳詩が映像にあったことで、歌の入り方が全然違いました。要所要所で入るトークも楽しかった。感謝します。

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** イスラムアート紀行・過去記事より **
 去年秋、矢萩さんと村山さんのトークイベント『「A.R.ラフマーンを語る」vol.3 イスラームとラフマーン』「インド、イラン、ギリシア、秋に響く詩の響宴」

 今年夏、「Coke Studio」から数曲紹介。ハマりました。「ジプシーを追いかけて。バローチスタン&パンジャーブ」

 こういう場には、いつも野上君がいるような気がする。きっといるんだと思う。「哀悼 野上郁哉さん / 自らの両足で立ち上がる 何度でも」
by orientlibrary | 2011-12-21 02:10 | 美術/音楽/映画