イスラムアート紀行

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「青の魅惑 イラン、トルコ、ウズベキスタンのやきもの」、コバルトロードの旅へ

日本のタイル好きなら、必ず見ているであろう「イスラームのタイル」(INAXブックレット)。

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この青に惹かれました。もちろん、こちらの青も。

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(イラン・タブリーズの博物館にて)

旅先で見る青のモスク、マドラサ、聖者廟は、青のタイルに包まれて、この上もないほどに青く輝き、紺碧の空と呼応していました。

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(ウズベキスタン・サマルカンド)

大好きなモザイクタイル。土を用いてここまで美しくできるのかと感嘆する緻密で精巧な手仕事。異なる表情の青が醸し出す陶酔。天空に至るかのような、至高の美を感じます。

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(イラン・タブリーズ/ブルーモスク=マスジドキャブード/最高に好きなモザイクタイルです)

ウズベキスタンでは、タイルだけでなく、陶芸とも出会いました。

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シルクロードを旅行しながら、各地での青のニュアンスの違いを感じるようになりました。青は時代によっても違うような気がしてきました。

5年くらい前でしょうか。ウズベキスタンの陶芸産地リシタンの工房で、陶芸家のアリシェルさんと雑談をしていたとき、アリシェルさんが言いました。
「各地で青は違う。コバルトロードってあるんじゃないかな。較べてみるとおもしろいね。そういう展覧会があったらいいと思う」。

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「青の魅惑 イラン、トルコ、ウズベキスタンのやきもの」、愛知県常滑市のINAXライブミュージアム内「世界のタイル博物館」で11月3日より開催中です(2012年3月20日まで)。

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(「青 空と水とやきものの始まり」)

大きなテーマは「青」。「青 空と水とやきものの始まり」というテーマの中で、現代作家の青の表現をギャラリーにて展示しています。

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(「青の魅惑 イラン、トルコ、ウズベキスタンのやきもの」/チラシ、両方キレイですよね!大好評です)

イラン、トルコ、ウズベキスタンから、各国2工房(作家)が参加。ギャラリーですから、展示点数は50点ほど。ささやかともいえるでしょう。けれども、見比べてみると、興味深いです。各地の青の表情。違いもあり、共通点もあり。

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イスラームの青。西アジア、中央アジア、イスラム文化圏といわれる地域には、青で飾られた建造物が多く、青い陶器も多い。かといって、工芸が青一色なのではなく、民族衣装は赤など華やかな色が好まれますし、毛織物も赤が主体です。

やきものに青が多いのです。
材料や製法上の問題、魔除けなどの信仰、宗教(イスラム)、水や空への憧れ、トルコ石やラピスラズリへの願望、気候風土がもたらす美的感性、、いろいろ考えられそうです。書籍や資料からも、そのように学びましたし、どれも納得、得心できるものだと思います。

今回は、出展作家に聞いています。どうして青なのか、と。正解はわかりません。
ただ、青の作り手、青に(ある種、病のように)魅せられた人たちが語る、青の理由。その言葉は生のものです。少なくとも、その作家にとっては、真実なのです。

「イランの青、至高の“フィルゼ”は自然のトルコ石の色。自然にある色こそ最良である」 (ムハンマド・マフディ・アヌシュファル/イラン・テヘラン)

「イランでは青(フィルゼ)は水を意味する。水は命の根源。自然にも人間にも」 (サイード・アクバリー・ソヒ/イラン・イスファハーン)

「“作家が熟練すればするほど色数が減ってゆく”という言葉は、まさにブルー&ホワイトを表す」 (メフメット・コチェル/トルコ・キュタフヤ)

「青は深遠でありながら自由そのもの。困難の末に得られる高貴の色」(アディル・ジャン・ギュヴェン/トルコ・イズニック)

「砂漠に水があると嬉しくなると同時に安心して心が落ち着く。陶器の青もそれと同じことだ」 (ルスタム・ウスマノフ/ウズベキスタン・リシタン)

「青は、活力・生命力・愛情・感謝などすべての心の動きを活性化する。幸福と勝利をもたらす聖色である」 (アリシェル・ナジロフ/ウズベキスタン・リシタン)

真摯に質問に答えてくださった作家さんたちの言葉は、青の魅惑を解く鍵として珠玉ではないかと思います。たくさん話してくださった方もあります。全部をご紹介できないのが残念です。(このブログで折々にご紹介していきたいと思います。また、何かの機会に発信できればと思います)

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(展覧会のこのようなかたちでのご紹介)、書こうかどうしようか、迷いました。(ホントはまったくの「黒子」がいちばん。内気なんですよ〜^^)。でも、やはりブログで書くべきだと決めました。

ブログを通して知り合ったイスタンブールのchinichiniさん、ブログによく登場するサブさんに、トルコ、イランの作家さんコーディネートでお世話になりました。chinichiniさん、9月のトルコ、本当にありがとうございました。
ウズベキスタン関係の皆様、手仕事の仲間たちにも、強力なサポートをいただきました。

私のタイル愛好への道を開いた一冊「イスラームのタイル」のINAX社の博物館、「イスラームのタイル」の著者でありタイルを求めて世界を歩いた山本正之氏のコレクションをもとに作られた「世界のタイル博物館」での展示。なんだかタイルの道をぐるっと廻ってきたようにも思えます。
この間、とくにこの数ヶ月、振り返る暇もなかったけれど、これって本当に有り難く、素敵なことなんだな、、ちょっとだけ落ち着いた今、ようやく少しリアルになりました。

これから、作家さんのこと、作品のこと、青の陶器の産地のことなど、写真をまじえながら、少しずつ書いていきますね。会期は長いので、ぼちぼちと、かもしれません。でも、けっこうせっかちなので、青に関する次のテーマに走っていくかも??

コバルトロードは、まだ第一歩を歩み始めたところ。謎と魅力に満ちた青の道、探検は続きます。みなさんも、ご興味があればご一緒に!

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11月23日は、会場におります。愛知近郊の方、タイルオタクのお話などできれば楽しいですね〜!^^ 
(これから毎年)11月23日は「タイルオタクの日」! 古今東西のやきもの職人さんに感謝する日!^^
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(ウズベキスタン・ウスマノフ工房の出展作品より。直径32センチの皿のセンター部分、細かい絵付けです。濃淡もあり素晴しい。鮮烈な青のなかに清潔さ、律儀さがあるように感じます。今年の夏、この展覧会のために制作されたものです。40度を超える毎日、もちろん工房に冷房などありません。しかも時間がなく、非常に短期間でお願いしてしまったのです。他の注文仕事もあります。こうした中での18枚の絵付け皿の制作。それを思うと、この細密さが、とてもとても愛おしくなります。日本への梱包の、ここまでか、というほどの完璧さにも、職人さんの矜持を強く感じました。梱包、それは技能であり、誇りであり、矜持です。愛情であり、責任です。梱包まで含めて作品ではないか、私はそう思います)
by orientlibrary | 2011-11-13 21:24 | 青の道