イスラムアート紀行

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イズニクの赤 その始まり

●マルハバー! 憂無庵さんから「出典を明記しての引用は法で認められた権利」という力強いアドバイスをいただきました。ので、晴れて、写真載せちゃいます〜! ハイ、「宮殿とモスクの至宝」展のカタログ、「PALACE AND MOSQUE」(ISLAMIC ART FROM THE VICTORIA AND ALBERT MUSEUM)より引用、でございます。

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●(↑)は今回いちばん好きだった14世紀中期・ブハラの「浮彫文字紋タイル」。クルアーンの章句を銘記したもの。(実物はもっと色が深くてキレイです)。このようなアラビア文字による装飾はイスラム美術の特徴のひとつ。クーフィー体やナスヒー体など多彩な書体がある。流麗で格調高い。こういうのが読みたくて始めたアラビア語だが、第一次挫折中!

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●(右)はオスマントルコ時代の陶器の中から「白地多彩花文モスクランプ形壺」、1557年頃、トルコ(おそらくイズニク)。有名な「イズニクの赤」の初期のもの、実験的に使用されたものだという。洗練された赤ではないが、より素朴な味わいがあるように思う。

●ブハラのタイルもイズニク壺も、「フリットウエア」と言われる種類の陶器だ。粘土ではなく砂石から精製された石英粉にフリットと呼ばれるガラスと少量の白粘土を混ぜて成形、比較的低温で焼成したもの。柔らかく素地が白かったため、多様な装飾に使うことができた。今回の陶器の展示品の多くはこのフリットウエアだった。

●「フリットウエア」は、エジプトでは「ファイアンス」として発達した製法だ。ファイアンスとは「石英にガラスと白粘土を入れて練り固め天然ソーダに酸化銅を混ぜ施釉して焼成したもの」(『オリエントのやきもの』・INAXギャラリー)。世界最古のタイルは、前2650年頃のエジプトでピラミッドの壁面装飾として使われたターコイズのような爽やかな青のタイル、エジプトファイアンス。

●フリットウエアは人気のあった中国磁器の代替物として11世紀頃から中東などで用いられてきたようだ。トルコ西部イズニクでは中国の染付の絶大な人気を受け、スルターンの後押しで15世紀頃から作られ始めた。16世紀になるとフリットウエアの装飾に用いられる色彩の幅も青、緑、紫へと広がりを見せ、16世紀後半には赤を含むようになった。

●赤が加わったイズニク製フリットウエアは、壁タイルとしてモスクやパレスの装飾へと普及。オスマントルコの華麗な美のシンボルとも言える存在になっていった。中国磁器への憧れが生んだ創意、文化の融合、小さなタイルの中にもストーリーが満ちている。
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*もう1点(左)は、時計文字盤の一部。銅、と金(金で銅に焼き付けめっきしたもの)に繊細な刻線。イラン・サファビー朝、17世紀。実用の美。
by orientlibrary | 2005-10-25 03:25 | 中東/西アジア