イスラムアート紀行

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哀悼 野上郁哉さん / 自らの両足で立ち上がる 何度でも

音楽雑誌「Oar」を作っていた野上さん、ウルドゥー語を情感ゆたかに訳していた野上さん、スーフィズムを熱く語った野上さんが、いない。

311のあとも、何も書けなかった。今も、言葉が出てくるけれど、どれも違うように感じる。でも、知っていることは少しだけれど、野上郁哉さんを、少しでも書こうと思う。これからたくさんのことをする人だったのだから。それができるのは彼以外にいない、そんなことをしていく人だったのだから。

野上郁哉さんのブログ。「白山駅のブログ」
音楽が好きで好きで、日々幅広い文献を読み語学を精進し、人と会い語り、バイトで自らの暮らしをまかない、睡眠時間も生活費もギリギリまで押さえながら、自分のテーマ、すべきことにに真っすぐで一心だった日々のこと、思い。自己研鑽とたゆまぬ努力に頭が下がる。

音楽雑誌を、自らの力で立ち上げ、企画し、取材し、原稿を書き、販売をする。そんなこと、誰が考えるだろう。考えたって、誰が実際に作る、いや、誰が作れるだろう。でも、2008年に20歳ほどの学生が本当に立ち上げ、これまでに3号発行していた。

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「なんというか、こう、よーするに、体張ってるんです。命削ってるんです。そうまでしてでも、私にはやらなければならないことがあるんです。」「なんとかなる、というよりも、なんとかするんです!この世の中のことどもというのは、一見不可能に見えることでも、ほとんどのことは、努力次第では実現可能だと思うのです。」(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました)

「聖者の宮廷講」で、「パキスターニー・ポップ・ミュージック 〜イスラームとスーフィズムのパースペクティブから見たジュヌーン登場以降の発展とその課題〜」を語った野上さん。(「聖者の宮廷講 イスラーム、スーフィズム、ジュヌーン」

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(uch)

ありがとう。
さまざまなかたちで、スーフィー音楽やパンジャーブの詩の魅力を、全力で伝えてくれて、ありがとう。
映画「神に誓って」を紹介してくれて、本当にありがとう。(「神に誓って(Khuda Kay Liye)」

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上映会で冒頭いきなり「Allah Hoo」を歌った野上さんにみんな驚いた。でも快い驚きだった。

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(Lahore)

7月10日、下北沢「ジプシーを追いかけて」。(「ジプシーを追いかけて バローチスタン&パンジャーブ」)。この日、笑顔で会場にいた野上君。ブログでCoke Studioのこの歌を紹介している。当日の「白山駅のブログ」

「Lambi Judaai HD, Komal Rizvi, Coke Studio, Season 4」






「こういう映像を見ていて、というか、彼らの歌を聴いていてとにかく思うのは、この声の深みと歌の表現力は一体どこから来るのであろうか、とそんなことばかりが気になってしまう。一体彼等はどんな人生を送ってきたのか、どうしたらこんな風に歌が歌えるようになるのか、そんなことばかりがとにかく気になって気になって仕方がないし、そう思えば思うほど、自分自身ももっと様々なことを見聞きし、経験し、学んでいかなければならないなぁと思う今日この頃。」(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました)

〜〜
真っ暗な暗闇が私の目の前を塞いでも
大きな空が私の頭の上に降って来ても
どんな重圧が私の背中に重くのしかかっても
自らの両足で立ち上がる
何度でも
自らの意志で  自らの足で
(「白山駅のブログ」より引用させて頂きました/「1013hPa」/2011-07-05)
〜〜

これからの人、この分野でかけがえのない人が、突然理不尽に命を奪われた。
年齢を超えて、彼を知る多くの人が悲しみ、重い思いとともにいる。
その重さは深まるばかりだけれど、それぞれが何かに昇華しなければならないし、きっと皆、そうしていくだろう。

もっと話をしておけばよかった、なんて後悔、もうしたくない。
人と話そう。思ったことは伝えよう。行けるときには行こう。できるときにはしよう。笑えるときには笑おう。
本気で一心に精一杯生きよう。自分のテーマがあるならば全身全霊で追いかけよう。二本の足でしっかり立って。

野上さんが絶賛した「Lambi Judaii」、邦題は「長い別れ」。
野上郁哉さん、24歳。駆け抜けていった。でも、忘れない。
どうぞ、やすらかに。

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(multan)
by orientlibrary | 2011-07-30 23:21 | 社会/文化/人