イスラムアート紀行

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100年単位で熟成していくアフガンの楽器「ラバーブ」を聴く (@rabab gig)

音楽との出会いから、新しい扉が開くことがあります。
イスラムタイルに熱中する伏線としては(何度か書いていますが)、<カッワーリー>(スーフィズムの宗教儀礼で歌われる陶酔の音楽)とその代表的歌い手である<ヌスラット・ファテ・アリ・ハーン>のコンサートがあります。

また、「世界の手仕事プロジェクト」のきっかけは、アフガニスタンの民族楽器ラバーブ奏者<アミール・ジャン>のコンサートと、<メヘル・アーリー&シェール・アーリーのカッワーリー>コンサートが伏線にありました。

元々はハードロック、その後はいわゆるワールドミュージック、なかでも北インド音楽の系譜が好きなのですが、ライフワークや関心ジャンルにおいては、アフガニスタン、パキスタンなどの音楽に影響を受けているようです。

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(アフガニスタンの民族衣装、刺繍布が飾られたラバーブ演奏会会場。華やかで奥深い。このような演出があるとないとでは印象がずいぶん違います。感謝)

今もなお強い印象が残るアミール・ジャン。その名が記されたラバーブを持つ演奏家の演奏とお話の会がありました。「前世はアフガン人」と語る鈴木ひろしさん、アフガンの衣装でにこやかにたたずむその姿は、本当にアフガンのハザラ族(モンゴル系)のよう?!

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手に持つラバーブにはアミール・ジャンのサインと、元の持ち主であるショカットさん(ジャンと一緒に来日したラバーブ奏者)のサインが。とても美しいラバーブ、アミール・ジャンやショカットの来日時に入手したそうです。
高円寺のライブ、私も行きましたが、まさかその後、演奏使用のラバーブが日本人の手に渡っていたなんて!好きのエネルギーは通じるものですね。ホントに好きなことは、ホントに好きな人には伝わる、そう思います。

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(アミール・ジャンのサイン。わお!)

ラバーブは、「アフガニスタンを代表するリュート属の撥弦(はつげん)楽器。3本の旋律弦、3~5本のドローン(持続音)を演奏する弦、および15本ほどの共鳴弦が、クワ製の胴に張られている。声楽の伴奏をする器楽合奏で用いられるだけでなく、独奏楽器としても演奏される。北インドの古典音楽で演奏されるサロッドは、このラバーブが原型」(国立民俗学博物館サイトより)。

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(胴部分の象嵌装飾。工芸品のようです。装飾がある楽器にはみとれます。視覚も大事ですよね〜)

鈴木さんの演奏、とても良かったです!哀愁と激しさのある撥弦楽器の音色、独特の音階とリズムに引込まれます。卓越した技術はもちろんのこと、全体に温かい印象。人柄なのかな。
「男性の深い勘違い(女性への片思いなど)の歌を男たちが涙を流しながら聴いている。それがアフガン音楽の真骨頂」なのだそうです。

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(胴裏部分の装飾)

加えてナイスなのは、ほのぼのとした笑いを誘いつつ高速で進行する語り。「ラバーブ漫談」という言葉が頭に浮かんだほどです。
穏やかに炸裂する語りの合間も、じつは楽器をケアし、様子を見ています。「湿気に弱い。音が全然違ってきます。会場の温度や湿度の変化に合わせて微妙に調弦します」。ラバーブ、デリケートな楽器なのです。

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(かわいい花のようなナット?で調弦)

「ラバーブは一本の桑の木をくり抜いて作ります。中は空洞。職人が手彫りのみですべてを5ミリの厚さに揃えます。彫るだけで半年かかるんですよ」。
しかも、その前の準備期間が長い!「良さそうな木を見つけてきて、8年間雨ざらしにする。倉庫で1年半乾燥。半年かけて削る」。
さらに、「白木のものが飴色になるまでに30年、黒くなるのにその後50年。代々家に伝わり使い続けるスパンの長い楽器です。元々中世の楽器で今も形が変わっていない。古楽器だが現役。アフガニスタンにあったために生き残ったのかもしれません」

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(ネックにかけられた鈴が哀愁のリズムを刻む)

基本的に時間の感覚が違う。また譜面とか規格とかはなくて、なんとなくいい加減のようでありながら、全体は絶妙にうまく合う。「熟成」という言葉が浮かびました。
若さ、新しさ、スピード、変化、このような日々とは対極にあるような趣きや態度。昨今の価値観や感覚とはかなり異なる世界ですが、だからこそ、ときには浸りたくなるのだと思いました。

企画してくださったアフガン研究会の皆様、貴重な経験をどうもありがとうございました。

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(民族衣装胸当て刺繍部分)
by orientlibrary | 2011-01-30 21:13 | 美術/音楽/映画