イスラムアート紀行

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「モザイク」と「モザイクタイル」

◆ 華麗なベネツィアンモザイク ◆

ようやく歩き回れる気候になりました。歩くのは体にもいいし、街歩きにはいろんな発見が。先日は、こんな出会いがありました。ふと目に入ったのは、黒と白の重厚な床と階段。え、モザイク?!日本でモザイク?!これってお店?アパレル?インテリア?レストランじゃないよね。

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華麗なモザイクに導かれるように階段を下りて中に入ってみると、そこには一面モザイクの空間が!しかも芸術的で本格的なモザイクです。どうやらショールームのようですが、それにしてもゴージャス!床は白い優美な大理石、壁面は深い黒がベース、そして鮮烈で多彩なモザイクパネルの数々。

スタッフの方ともお話できました。イタリアの「SICIS(シチス)」というベネツィアンモザイクのブランドのショールーム&ショップだそうです。オープンはこの夏。高級キッチンで有名な「トーヨーキッチン」が輸入代理店として日本でのビジネスを展開するのだそうです。

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その後ネットなどで調べると、このフラッグショップには総額1億円相当のモザイクが使われたとか。250平方メートルの広さを、大理石、天然石、金属などを使ったモザイクで埋め尽くすのですから、大げさな額ではないかもしれません。

モザイクの猫足バスタブ(400万円ほど)や目もくらむような豪華なモザイクに、「今の時代、よく出店されましたね」と、ついもらしてしまった大きなお世話の私。でも富裕層って、どんな時代にもいるもの。景気低迷と言われて久しい日本でも、そんなの関係ないっていう方々も多いはず。マーケットはあるのでしょうね。

豪華さやルネッサンスの絵画世界、イタリアンテイストとは縁がない私、本来ならば、こういうところは苦手で引いてしまうはずですが、意外なほど居心地が良かったです。
人間が前面に出たヨーロッパテイストだけだと窒息しそうですが、アジアや日本を意識したモザイク(オリエンターレ)が華麗。モチーフも鳥や植物など自然でオーガニック。スパイラルな植物模様のイスラムっぽいデザインもありました。

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(いちばん惹かれたマットな青色のモザイク。この色合い、他と何か違う。聞けば「ラピスラズリを練り込んでいる」とのこと。ラピス好きの私に訴えかけてくるもの、ありました〜☆)

私、モザイクタイル以外のいわゆるモザイクって、じつは惹かれないものがけっこうあるのですが、こちらの職人さんの手仕事、本物はやはり見応えがあり、とても触発されました。いいものを見せてもらいました。

「SICIS(シチス)」のサイトはこちら。YouTubeで見るとわかりやすいです。


◆ タイル作り、絵付け、モザイク ◆

ペルシアのタイル「ハフトランギ」の絵付けを習い始めてから、「タイル絵付け」「タイル作り」などのサイトを見るようになりました。それまでは、そういう教室ってないのだろうとあきらめていたので調べることもありませんでした。(でも、たくさんあるんですね〜。びっくりしました)

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(ウズベキスタン/サマルカンド/シャーヒズインダ墓廟のモザイクタイル、壁面のごく一部、ディテールです。くっきりとした線でイスリミを表現。デザインに合わせ色別に焼いた陶板をカットして集成したとは、、圧倒されます)

日本では「タイル=水回り、工業製品」のイメージが強く、タイル装飾の概念が稀薄。展示でタイルが紹介されるとしても、なぜか「ヴィクトリアン」「デルフト」などヨーロッパのもの。以前も書きましたが、ヴィクトリアンタイル、、これって、ちょっと違う世界ですよ。

一方、日本でも流通しており「タイル作り教室」も多いスペインなど南欧系のタイルやメキシカンタイルは、明るくカジュアルで魅力的ですが、気になるのは、このような系統のタイルだけが日本で「タイル」として認知されている現状です。

たまにモロッコ風インテリアの中でタイルが使われていますが、全体的に「本家イスラムタイル」「元祖タイルであるイスラム」、より限定的に言うならば「ペルシアや中央アジアのタイル」の存在感は、薄いと言うしかありません。

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(ウズベキスタン/ブハラ/モザイクタイル。色あいも細部で変えているため遠目にはまるで絵画のよう。これだけ緻密ながらイキイキとした躍動感があります)

今回いろいろ見ていて感じたのは、「モザイクタイル」に関するサイト、商品、教室、情報の多さ。多彩な材料を使い、フォトフレームや表札など好みのものが作れます。大理石などの本格的なものもあり、手作り好きの方に人気があるようです。

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(世界のタイル博物館/「クレイペグの壁」/メソポタミアのウルクの神殿を飾ったクレイペグは粘土を円錐形にして焼いたもの。壁に嵌め込むとモザイクのような模様を表現。モザイクの起源とする研究者も)

が、「モザイク」に「タイル」がからむと、タイルのイメージが固定的な日本の現状では、問題もありそう。青山のSICISのスタッフの方が、「うちはモザイクタイルとは言わない。ヴェネチアン・モザイクです」とおっしゃっていましたが、意図はよく理解できます。賛成です。

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(東京国立博物館本館〜庭が見えるレストスペース〜壁面。東博には、この他にも床などでのモザイク使用があり味わいと重厚感を醸し出しています)


*** 関連過去記事です(再度ご紹介) ***

 <日本のタイル史から見えてきた「本来の感性」
 <「ヴィクトリアンタイル〜イスラム〜日本」、、疑問です@旧岩崎邸」
 <洋館のヴィクトリアンタイルから もういちどムガル
by orientlibrary | 2010-09-18 18:01 | タイルのデザインと技法