イスラムアート紀行

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インド、イラン、ギリシア、秋に響く詩の響宴

秋のイベントシーズン、(ウズベキスタンより暑い)残暑にめげていられません。この間、見たこと感じたことなどを、ざくざくっと書いてみます。

◆ イスラームとラフマーン ◆






『「A.R.ラフマーンを語る」vol.3 イスラームとラフマーン』(@UPLINK FACTORY)は、この音像からスタートしました=「Chaiyya Chaiyya」。なぜにダージリン鉄道の車両の「上で」歌い踊るんですか〜!?とにかく一気にテンション上がります。

歌と踊りを見ているだけならば、楽しい恋の歌かなあと思うんですが、この日の眼目のひとつはパキスタン文化研究者村山さんの「歌える和訳詩」。

慈愛の影あまねく方の 足下すなわち楽土となる
ゆけ影よ 影よ 影よ 影よ 愛でみな照らしゆけ 影よ 影よ
甘き香りたつそのからだ 語り美わしウルドゥーのよう
ころがる霧の粒をかりて 楽土の扉ひらいてる
枝に葉末に風の中にも あなたの影がそこかしこ
さがすはあなたの影かたち 陽がさすどこにも立つしるし
色は匂えどまだみえぬ 一目みたさに恋い狂ひ
ころがる霧の粒をかりて 楽土の扉ひらいてる
枝に葉末に風の中にも あなたの影がそこかしこ
(「Chaiyaa Chaiyaa」村山和之氏訳。その一部を抜粋させていただきました)

麗しく凛としつつ、あたたかいリズムがあります。日本の言葉の情感があります。
Chaiyyaっていうのは「影」なんだそうです。日差しの強いインドでは木陰など影は良いもの。そしてこの影は「クリシュナの歩いたあと」という比喩でもあるとか(真っ暗な中でのメモなので書き間違っていたらごめんなさい!)。深い歌。さすがインド!LOVE!

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(インド・ハリドワール)

この会は「アジア随一の作曲家A.R.ラフマーンとイスラームの密なる関係」がテーマ。「スラムドック$ミリオネア」でオスカー、グラミー賞などを総なめしたインドを代表する作曲家A.R.ラフマーン。ヒンドゥー教徒だったラフマーンが、なぜイスラーム教に改宗したのか。「Chaiyaa Chaiyaa」にひそむスーフィー的叙情など、彼の人生に深い影響を与えてきた「イスラーム」を軸にその魅力を探る、というイベントなのでした。ラフマーンのカッワーリ、私は好きですね〜☆

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(インド・ラジャスターン、石のスクリーン)


◆ イランの絵と詩と音楽と ◆

詩と言えば、イラン。ペルシア語の流麗さは詩のためにあるのでは、と思えるくらいです。ペルシア語での詩の朗読、聴き逃せません。

イランの絵と詩と音楽と〜音楽とペルシャ語でのポエトリー・リーディング』(@ロゴスギャラリー)。「詩は、絵や音楽といったアートとも密接な関わりを持ってきました。絵や絵本の題材になってきたことはもちろん、イラン古典音楽も詩をなくして語ることはできません。
今回は、その詩の伝統の先にたつ現代のアーティストの作品と共に、絵と詩と音楽のつながりを感じて頂く展覧会です」。

会場にはたくさんの人が集まり、ポエトリー・リーディングと絵と音楽のコラボレーションに聴き入っていました。
前半は、詩と絵と音楽の本『黒いチューリップのうた』よりヴァヒード・シャリーフィヤーン(Vahid Sharifian)の詩の朗読。後半は、絵楽譜「Song of Persia」の作者レザ・ラハバさんによる朗読と、これを聴きながらの即興演奏。

麗しい大地よ。
風と岩と花畑と、砂ぼこりさえも。
草木の育む音 刻々と 草木の育む音
かごでさえずるやさしい小鳥 広げた翼で風にのる
心は庭先の梢を行ったりきたり 背後には深いみどり
宝石の目をしたもう一羽が 秘かに待ちわびている、なにか。
(「鳥」レザ・ラハバ氏より一部引用させていただきました)

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(ウズベキスタン・リシタン陶壁/鳥のモチーフ)

流麗優美、心を甘く溶かすスパイスのような言葉のつらなり。イランのタイルを思わせます。
ペルシア語、憧れますね〜。そして、こういう詩を見ると私も詩を書いてみたいと思います。一瞬ですが、、。

イランではホームパーティが盛んで、そういう機会には誰かが詩を読むのだとか。中には必ず古典楽器(サントゥールやネイなど)を演奏できる人がいて音楽とともに楽しむ、というお話もありました。ハーフェズの詩は占いにもなるので(その解釈によって)、盛り上がるんだそうです。こういう趣きのある遊びができる人たちっていいなあ〜と思います。

会場には、絵楽譜のきれいな陶板やイランのタイルもあり、土族うっとりでした。

ちなみに、主催者の「salamx2」さんも、絵楽譜のレザ・ラハバさんもエキサイトブログなんですよ。
「salamx2の雑談」
「カフェペルシア」


◆ イリアス ◆

次はギリシアです。英雄叙事詩『イリアス』(@ル テアトル銀座 by PARCO)へ行きましょう。

「紀元前8世紀頃にギリシア最大の詩人、ホメロスによってまとめあげられたと言われているこの『イリアス』は、のちに文字に記されて読み継がれ、口承文学史上に燦然と輝く傑作となりました」。
「もともとは文字ではなく口承によって伝えられてきたもので、中世日本において琵琶法師たちが、『平家物語』を演じたような格好で歌われていた」(wikipedia)。

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(トルクメニスタンのメルブ遺跡)

この壮大な物語が口承で伝えられてきたとは驚きです。今回は栗山民也氏演出による日本初の舞台化。ですが3時間を超える舞台であっても、壮大な物語を語り尽くすには短いようでした。その中で、平幹二朗さん(トロイア王プリアモス役)は、立っているだけでも存在感がありました。どんな時代にも共通する親子の情愛を切々と語る場面は、まさに圧巻。芝居は、単にセリフを言うのではない、空気を作れるような力、精進、積み重ねが大事なんだなあと感じました。
by orientlibrary | 2010-09-12 13:20 | 美術/音楽/映画