イスラムアート紀行

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「犬が星見た」ウズベキスタン

Twitter、facebook、mixi、いずれも登録しているだけの私。活用法もよくわからないし、ブログだけでも更新ままならない状況なのに、とても無理。でも、好きなミュージシャンのTwitterやpicsは常にチェックしていて、臨場感、一体感があり、うれしい。Youtubeはインタビューものやコンサート映像など、見ていて飽きない。WEBアルバムというのも、とっても便利。新登場ツール、これからますますすごいことになっていくんでしょうねえ。

そんなわけで、『ツイッターノミクス(twitternomics)』という本を買ったのですが、同時に買った本の方を先に読んでしまいました。『犬が星見た ロシア旅行』(中公文庫)という変わったタイトルの本。著者は武田百合子さん。(作家武田泰淳さんの妻。ご両者ともに故人となられました)

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(中央アジアの光景。カザフスタン。春ならばこういう景色も見られましたね)

1969年のロシア旅行の記録。百合子さんが武田泰淳さん、竹内好さんらと一緒に20日間のソ連ツアーに参加したときの日記をもとにした旅行記(執筆は1978年)。 ツイッターノミクスで世界と瞬時につながる現在との違いの大きさに、この40年の変化のスゴさをあらためて感じました。

旅は横浜発。船旅です。ナホトカから鉄道でハバロフスク。空路でイルクーツク。が、日程変更の都合で泰淳さん憧れのアルマトイ(カザフスタン)へは行けず、タシケントへ。ウズベキスタンのあとはコーカサス、ソ連。ツアーと別れ、その後スカンジナビアへも行っています。

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(カザフスタン。こういう景色もあります)

タイトルがロシア旅行なのでロシアかと思うのですが、ソ連時代のことであり、現在の中央アジアやコーカサスのお話が多く、中央アジア好きの私はおおいに興味を惹かれました。といっても、名所旧跡、観光地のことはほとんど書かれておらず、大半が現地の人々の様子や日常生活、食べ物、そしてツアーの面々の行動スケッチ。

今もトイレやお風呂、食事などがキツい面のある中央アジアですが、40年前はさらにすごかったみたいです。でも洗面所の水を毎朝コップ7、8杯飲んでいたという百合子さんだけがお腹もこわさず、女性ならばキャーと言いそうな非日常にも、さらりと溶け込んでいます。

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(ナン。地方によって模様も味わいも違います)

各地で出会う人々を、同じ人間として、見下すことなく、たじろぐことなく、あくまで普通に接している、その感性が本書の最大の魅力と感じました。歴史や文化など難しいことは一切書かれていませんが、40年前のサマルカンドやブハラの一端が臨場感を持って垣間みられるような気がします。また会話を含め描写が非常に細やかで、よく記録したものだと感心しました。そしてその前に、よく見ているなあと思います。精神が伸びやかでやわらかだからこそ、いろんなことがスルリと入ってくるのでしょう。

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(百合子さんの関心はモスクよりも子どもたちやお母さん。なんちゃってロシア語で普通に話しているのがおもしろい)

中央アジアのあたりなど、好きだったのは次のようなところ。

(国内線機内食について。テーブルが壊れているようなガタガタ飛行機だったが)
・・・ 何ておいしいんだろう。輸入しないで皆が我慢して頑張って働いている国の食物だ。粗末に扱ってはいけないなーそのしんみりとしたおいしさのせいか、二宮金次郎のような気分になった私は、一個残した紅茶の角砂糖を手提鞄にしまって、あとで大切にかじることにした。・・・

(帰ろうとするガイドの青年を竹内好さんが追いかけて話をしています)
・・・ 竹内さんはパイプを加えたまま、耳を傾けて、実に嬉しそうに肯いている。それから握手した。「彼は、純粋のこの土地の人間だそうだよ。じいさんも父親も熱心な回教徒だそうだ。じいさんは、今も毎日五回祈るんだそうだ。コーランを知っているかと、俺が訊いたら、彼はコーランの一節をいま暗誦してくれたんだ」「いい青年だねえ。ウズベキスタン共和国の愛国者なんだな。コーランを久しぶりに聴いたよ」 ・・・

(ブハラのバザールで「銭高老人」(一人で参加したツアーメンバー。銭高組の会長)が話す)
・・・ 「見てみなはれ。壁も塀も門も、よおく見ると、皆、少しずつ、かしいでおりますがな。うまくかしいで建ててありますがな。ここは地盤がえろうやわらかいんじゃ。えらいもんでっせ。地震を見込んで、最初から、かしげて建ててありますのや。やわらこう、遊ばせて建ててありますのや。たいしたもんじゃ。えらいもんじゃ。ロッシャはたいした国じゃ。わしゃ、よう知っとった」 ・・・

(ストックホルム空港にて。北欧は素晴らしいと語るモスクワ駐在商社員の妻の話を聞いて)
・・・ (私は)物が豊富で迅速に事が運ぶ文化都市にやってきたのだな、ロシアとは違ったところだな、と思っているだけだ。感動というのは、中央アジアの町に着いたときにした。前世というものがあるなら、そのとき、ここで暮らしていたのではないかという気がしたのだから。・・・

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(古写真集より。ブハラのサーマーン廟。ブハラ6月の暑さは強烈だったようです)

久々、好きなエッセイに出会いました。それにしても気温が50度のなかの観光、サマルカンドもブハラも「暑い」がメインでした。6月のウズツアーはキツいですよ。40年前とはいえ、そのあたりの配慮(情報?)はなかったのかなあ。タイルについて、少しでも百合子さんの言葉を読みたかったなあ。&ソ連時代なのに「ロシア旅行」というタイトルも示唆的かも。

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(ウズベキスタン陶器。シルクロードオアシスの空気を感じます)
by orientlibrary | 2010-05-16 09:25 | ウズベキスタンのタイルと陶芸