イスラムアート紀行

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聖者の宮廷講 イスラーム、スーフィズム、ジュヌーン

「伝説のスーフィーロックバンド“ジュヌーン”以降パキスタン大衆音楽はいかに発展してきたか?音楽と詩の力で“愛と平和”を実現するために?若き音楽研究者の声を聞き逃してはならない」との硬派で魅力的な呼びかけに参集した音楽好き、70名弱。

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(サラームさんツアーがアミール・フスラウの墓廟を訪ねたときに購入した布。カリグラフィーがびっしり)

当ブログでも何回かご紹介してきた「聖者の宮廷講」、今回は22歳の大学生・野上郁哉君(ウルドウー語専攻)が一癖も二癖もある大人たちを前に語ります。内容は、「パキスターニー・ポップ・ミュージック 〜イスラームとスーフィズムのパースペクティブから見たジュヌーン(junoon)登場以降の発展とその課題〜」。

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(野上氏企画編集の音楽雑誌創刊号。現在3号に向け始動中とか)

野上君は、数年前から自分で企画取材原稿営業まですべておこなう音楽雑誌「oar」を発刊してきたツワモノ。発表後には、ワールド音楽評論やDJで大活躍のサラーム海上さん、パキスタン音楽研究の堀江弘道さん、南西アジア文化研究の村山和之さんなど、これまた濃い〜人たちがコメンテーターとして待ち構えています。

発表は、『HEAVY METAL ISLAM 』という本(中東6カ国のヘビメタをはじめとする音楽事情が書かれている)のパキスタンの章「愛と平和を実現するために」の紹介からスタート。貧困と暴力と宗教的過激主義が混在するラーホールで育ったジュヌーン(1990年にデビューしたパキスタン伝説のスーフィーロックバンド)のメンバーは、自由、愛、希望への熱望を歌に託しました。その際に取り入れたのがスーフィーの歌詞や考え方です。

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(『HEAVY METAL ISRLAM 』)

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(『HEAVY METAL ISRLAM 』の中の写真を映しました。モスクの前の広場のようですね)

「ジュヌーンは社会批判をずいぶんしたバンド。政治的社会的批判を歌詞に取り込みました。スーフィーの詩の持っている力や民話のストーリーを借りて、暴力を使わない魂の平和を求め伝えたのです。それをロックに合わせてやったのが新しかったしカッコ良かった」(BY野上君/速記のメモなので細かい部分はちょっと違うかも)。

パキスタンの音楽の歴史も。アミール・フスラウ(カッワーリーを作ったとされるスーフィー詩人、政治家)、大衆的なガザル歌謡、カッワーリー(宗教儀礼で歌われる陶酔の音楽)、カーフィー(音韻叙情短詩)、フォークミュージック、1940年代頃からの映画と融合したポピュラーソングからジュヌーンやMEKAAL HASSAN BAND(ジャズと南アジア音楽のフュージョン)に代表されるスーフィー伝統を取り入れたバンドの登場までを概観します。

そして野上君のテーマである「イスラームにおける音楽の是非」に移ります。なぜイスラームにおいて音楽は否定されるのか、その根拠は?クルアーンやハディースにおけるその記載を探しますが、厳密には「ない」ようです。ハディースに無益なものと書かれた部分があるくらいで、結局よくわからない。そしてわからないままCDショップの爆破などが起きています。「イスラームの名の下に、パキスタンではこの3年間で800軒の音楽店が焼かれ、楽士が殺された」とチラシにも書かれています。未解決の問題のようです。本当に本当に残念なことだと思います。

90分、映像も取り入れながらの発表が無事終了。堂々としていて良かったですよ。コメントも各人の経験や視点が光ってました☆

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(村山さんが蒐集した80〜90年代のパキスタンのカセット。そういわれてみれば、私もつい買ってましたね、カセット)

その後、村山さんによる「パキスタン・非CD音楽の旅」。村山さんが蒐集した1980〜90年代のパキスタン音楽のカセットテープを聴かせてもらいました。カセットが今も生きるパキスタン。2009年8月時点でも63%の人がカセットで音楽を聴いているそうです。(数字細かいですけど、、こういう調査があるってことも不思議でおもしろい)

「当時ジャケ買いしたカセットを今取り出してみたら、最近ずっと探していた貴重な音源が入っていたりして驚いた。CDにできない、ならない音源は現地ならではの臨場感があり、深い。今になって価値がわかった」と村山さん。

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(カセットを聴きながらphotobooth〜プロジェクターでジャケを見る。頭いい〜!)

みんなでカセットを聴いているうちに、サラームさんがMacのPhotoBooth通しでスクリーンにジャケットを映してくれました(なるほど〜!これは便利!)。個性満開のミュージシャンのビジュアルを見ながらの、村山さんの深くて味のある語り。こういう音楽の聴き方もいいですね〜。

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(ワールド音楽熱中人たち)

さらにサラーム海上さんの、「ラジャスターン 伝統音楽舞踊10日間の旅」(昨年末〜年始。サラームさん企画&添乗。独自のコンサート3つ。私も行きたかったな〜!)の写真や音像紹介。サラームさんのグイグイと惹き付ける語り口、豊富な知識、シャープな視点に感心しているうちに、時間があっという間にたってしまいました。

音楽家のコロニー(芸術家村のようなところ)の写真も良かったし、その場で盛り上がって歌ってくれたようなノリの「Allah Hoo」が最高でした!!リラックスした楽士たちの表情も良かった!現地で聴けた皆さん、良かったですね。ホント、こういうの、PRICELESSです。

この時点で4時間半ほどが経過。その後、恒例の「宴」。実際に音楽をやっている人も多く、音楽やインド、パキスタン、中東の話で夜は更けていくのでした。

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(宴会。手前のトルコものに注目!いちじく、ヴァクラヴァ、甘くないバナナチップ、オリーブ、そしてイランのバムの最高級半生デーツ。ダンディMさん、ごちそうさま〜☆)

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(こんなカセット集も展示されていました。トルクメンのフォークソング。模様がいいですね)
by orientlibrary | 2010-02-09 02:23 | 美術/音楽/映画