イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

タイルとうた、陶器とことば

e0063212_013129.gif
(タブリーズ・ブルーモスク)

一年で最も寒い時期、いかがおすごしでしょうか。休止中の「イスラムアート紀行」、この間、イスラム工芸やタイルの本をじっくり読むつもりでしたが、困ったことになんと何の進化もなくすぎてしまいました。読むことに集中したいと思っていましたが、追い込まれたときしか集中できないという自分の性癖を忘れていました。困ったものです。

この間も、こんなブログにたくさんの方がご訪問くださいました。ありがとうございます。再開に向けて助走しようかなと思っています。かなりゆっくりなりペースだと思いますが、、。

今回は、イスラムアートとはまったく違う話題なのですが、このところ興味を持っていて、ちょっと書いてみたくなりました。言葉のこと、です。
「星野しずる」という作家をご存知ですか?短歌を作っています。たとえばこんな作品があります。

  真っ暗なふたりの星に隠された絵画をなぞる世俗のうねり
  真夜中の北極星を見てみたい何も言わない川を導き
  風の果て 冬の匂いを追いかけて渦の図形を見つめていたら


独特の言葉の世界。ちょっと不思議で透明感もあって。作者は女性?男性?若い人?

「作者」は、「星野しずるです。一心不乱に犬猿短歌をつくり続けます。」とTWITTERで自己紹介しています。TWEETS(つぶやき)が現在3500ほど。ということは、その数の「短歌」があるということです。しかも星野さん、1日に100首以上も間断なく作り続けているのです。

これらの短歌は、「“二物衝撃”によって詩的飛躍を感じさせる短歌を自動生成するスクリプト」により作られているそうです。つまり、、コンピュータが作っているのです。
生成の仕組みや文芸の手法としての“二物衝撃”、語彙選択や短歌らしいフォルムの作成(レシピ)、コンピュータによる作品作りの例や、もともとの意図など、要約するのもむつかしいので、こちら「犬猿短歌 Q&A」をご参照ください。

爆発的なスピードでアップされ続けている星野しずるの短歌。もう少し見てみませんか?

  約束が好きだ 言葉の沈黙を集めて淡い空間の中
  引力のはざまで浮かぶたましいは路面電車の図形を語る
  運命をなぞる短歌をあきらめて空一面の夏の直線
  夢のないとがった群れの中心をおそれて海の四月をめぐる
  引力を忘れ大地を確かめて色とりどりの空のカプセル


好きなうたがけっこうあります。言葉選択のセンスや確かなレシピがなど、影の(どちらが!?)作者が実力があるのでしょう。影の作者のセンスの良さの証明に、「タイル」も語彙に入ってるんですよ〜!☆ (よくわからない出来上がりですが→)「漆黒の写真を見ても夢のないタイルの裏が好きです メール」「誇張した理想主義者を忘れてもさめたタイルより大切な都市」

影の作者は「もともと雰囲気や気分だけでつくられているかのような短歌に対して批判的」でしたが、「読み手の解釈力が高ければ、わりとどんな詩的飛躍でも「あるかも」と受けとめられるはず。その考えが正しいのかどうか、検証したかった」そうです。

そして、「星野しずるの短歌をたくさん読んでいくと、何首かに一首、はっとさせられる短歌を見つけることができると思います。人間ではつくれないような新鮮な暗喩をつかったり、時には逆に、まるで人間がつくったかのような深淵な意味が読み取れてしまう短歌も出てきます。まずはそのおもしろさを楽しんでほしいですね」。

「その上で、人間の持つ「理解しようとしてしまう力」の潜在的な高さについて驚いたり、読み手依存型の創作の怖さに気づいたり、創造性がほんとうに発揮されねばならない場所とはどこなのか再考したりしていただければ幸いです。」(管理人の佐々木あららさん)

「理解しようとしてしまう力」、、たしかにありますね。創造性を発揮すべき場所というのも、なるほどと思いました。
ここまで来たら、ノリでこんなのはいかが?写真を選び、それに「うた」を合わせてみました。


e0063212_013878.jpg

<浮彫りタイルパネル(イラン)> × <民族よ 寄するおもひは冷えながら並木に生るる花のしづけさ (岡井隆)>


e0063212_015866.jpg

<サーマーン廟(ブハラ)> × <家々に釘の芽しずみ神御衣のごとくひろがる桜花かな (大滝和子)>


e0063212_021414.jpg

<施釉された青緑(イラン)> × <いそのかみ古る埃及(エジプト)の古枕その窪に載る何の古夢 (高橋睦郎)>


e0063212_023694.jpg

<シャーヒズインダのタイル(サマルカンド)> × <画家が絵を手放すように春は暮れ林のなかの坂をのぼりぬ (吉川宏志)>


e0063212_02534.jpg

<タイル(クニャウルゲンチ)> × <夕星(ゆふつつ)も通ふ天道(あまじ)を何時までか仰ぎて待たむ月人壮士 (万葉集)> 


e0063212_031497.jpg

<リシタン古陶器(ウズベキスタン)> × <春近し時計の下に眠るかな (細見綾子)>


e0063212_033541.jpg

<リシタン古陶器(ウズベキスタン)>  × <くれないの露にあさ日を映してもあたりまで照るなでしこの花 (藤原定家)>


e0063212_035449.jpg

<リシタン陶芸(ウズベキスタン)> × <四万十に光の粒をまきながら川面をなでる風の手のひら(俵万智)>


やってみると、けっこうむつかしかった。ノリでサクサクというわけにもいきませんでした。中央ユーラシアの土ものと、日本語のうたの世界とを合わせるのは意外とむつかしかったです。
by orientlibrary | 2010-02-03 00:31 | タイルのデザインと技法