イスラムアート紀行

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シリアのタイル、ペルシャ料理、中央アジアが舞台のコミック

◆ 爽やかでイキイキ、シリアのタイル ◆
前回の「シリア料理」にちなんで、シリアのタイルを少し見てみましょう。石造建築が特徴的なシリアの建物ですが、16世紀オスマン朝時代のモスクの壁面やミヒラーブなどで美しいタイル装飾が見られます。

同時代のオスマン朝・イズニクタイルの影響を受けていますが、ダマスカス独特の爽やかな色合いで、葡萄や糸杉など多彩な植物模様がみずみずしく描かれています。イキイキとしたデザインはのびやかで洗練されており、個人的にはオスマン朝トルコの華麗なタイルよりも、むしろこちらが好みです。

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(爽やかなセージグリーンがダマスカスタイルの特徴。青や白とのバランスも良く明るい/DARWISHIYYA MOSQUE・ ダマスカス/1571/『THE ART OF THE ISLAMIC TILE』より引用)

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◆ オシャレなペルシャ料理の本 ◆

次は、「シリア料理」から料理つながりでペルシア料理へ!リンク先の記事で知ったサイト「カフェペルシャ」。日本在住のイラン出身のアーティスト・レザさんのサイトがオシャレ。私はイランのタイルや建築が大好きですが、やはりどちらかというとササン朝とか中世頃とか、古い時代のペルシアに中心に見ることが多くなります。

でも、以前ご紹介したイランの子ども向けの工芸紹介本を見ても、あるいは独特の世界を持つイラン映画を見ても、イランの人の美的・芸術的感性というのは突き抜けたものがあると感じます。最近は、とてもチャーミングなイラン出身の女優(サヘル・ローズさん)や、芥川賞候補になったイラン人女性(シリン・ネザマフィさん)など、日本でもイラン出身の方が活躍中。うれしいことです。

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レザさんが最近出版した料理本『家庭で楽しむ ペルシャ料理 〜フルーツ、ハーブ、野菜たっぷり』(河出書房新社)。野菜たっぷりのレシピで、おいしそう&見た目にも軽やか。絨緞や刺繍、タイルなども紹介されていました。オシャレなイランです。

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◆ 描き込まれた情熱!チュルクの嫁入り物語 ◆

最後に、当サイトではめずらしいコミックの話題です。今朝、新聞の書評欄で「中央アジアの嫁入りを描いたコミック本『乙嫁語り』(森薫)」を知りました。さっそく書店へゴー!といっても、コミック本売り場に足を踏み入れることがほぼない私、どう探していいかもわからず結局店員さんに探してもらうことに。発見したこのコミック、平積みで、しかも売れてたんですよ!「中央ユーラシアが舞台のブライド・ストーリー」、いいですね〜!

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(『乙嫁語り』/森薫/エンターブレイン)

帰って即読みましたが、「19世紀中央アジア、カスピ海周辺の地方都市」とされる地域の民族衣装や装身具、暮らしの濃密な描きこみがすごい!驚きです。その緻密かつ迫っていくような描写から、溢れるような対象への関心の強さを感じます。天幕の中、陶器、絨緞、食べ物、、いやあ、もう中央アジア好きには、たまりません!!作者はいったいどんな人!?

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(木彫り装飾や住居作りにふれた一節も。多彩な木彫りの描写が素晴らしいです)

作者の森薫さん、「そもそもこの中央アジア、コーカサス地域にはまったのは、中学〜高校の頃。当時盛り上がっていたシルクロード関連書を図書館で読みあさったのがきっかけで、馬、羊、幕家、じゃらじゃら、じゅうたんじゅうたん、むしろじゅうたん!!!」、「まあそんな暑苦しい何やらが竹の地下茎のごとく、ここに来てまた芽を出して出来上がったのがこのお話です」とのこと(あとがき=これもマンガです=より)。やはり積年の思いがあったんですね〜。

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(こんな絨緞も登場してます)

ネットで調べてみると、おもしろい紹介がいくつもありました。「“民族衣装描きたいいいい!”という作者の叫びが紙面から聞こえてきそうな、恐るべき描き込みの細かさです。本人の気のすむまで描いて描い描き倒す(後略)」。このサイトでは描かれた民族衣装がどこのものかを調べています。こういう関心の道筋、中央アジア好きとしては、とってもうれしいです。

「森薫の新連載『乙嫁語り』に出てくる“チュルク系民族”を追う」という記事もおもしろかったです。筆者は外国語学部のトルコ語専攻。この物語に出てくる民族が誰なのかを調査するために大阪のみんぱくで衣装をチェックし、チュルク研究者にもヒアリング。結果、この物語は「チュルク系民族の複合的なイメージ」ではないかと結んでいます。

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(舞台はこんな風景かな。カラカルパキスタンのカラ周辺)

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中央ユーラシアへの関心の入り口、私はタイルでした。そして現地の人の温かさに出会い、暮らしに触れました。「〜スタン」の国や中東の国々、入り口は、料理でも映画でもコミックでも。いろんなところから、どんどん入ってみて欲しいな!&、、最近、このような話題を書ける機会が増えてきました。なんだか「来てる」感じがします!☆
by orientlibrary | 2009-11-01 22:13 | 絨緞/天幕/布/衣装