イスラムアート紀行

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土色のメルヴ

●昨年、トルクメニスタン旅行から帰ったとき、ブログにこんな報告を書きました。「その印象は、土土土、風風風、日日日」。さらに「風というよりは砂嵐が吹きつけ、行けども行けども土族もびっくりの土づくし」とも。

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(メルヴ出土の15世紀・ティムール朝時代の皿。動物がイキイキと描かれています)

●今、メルヴ遺跡の写真を見ていて、その感覚を思い出しました。土を愛する自称「土族」の私ですが、あまりに広大な土色世界にちょっと食傷気味でした。

●メルヴ遺跡は、広大な沙漠の中にある60平方キロメートルのトルクメニスタン最大規模の遺跡群です。衰退した古い町に隣接して新しい町が作られたため、紀元前6世紀のアケメネス朝ペルシャから16世紀頃までの5つの時代に築かれた町の跡を見ることができます。現存する建造物としては、日干しレンガの城塞跡やアイスハウス(氷の貯蔵庫)、焼成レンガの廟などがあります。

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(大キズカラ)

●最も有名なのは、ササン朝時代に築かれた大キズカラ。パンフレットなどで紹介されることの多いメルヴのシンボル。ササン朝の土の建造物、今も各地に残ってますねえ。日干しレンガの質が違うのかなあ。すごいです。

●セルジューク朝のスルタンの廟「スルタン・サンジャール廟」は、1140年代の建造。当時のメルヴには、セルジューク朝の都が置かれ、イスラム圏ではバグダッドに次ぐほどに栄えたといいます。堅牢な造りなので、モンゴル軍の徹底的な破壊にも耐えたそうです。現在では修復の結果、立派に復元されています。味わいはありませんが、大きさや建築を知るには良いのでしょう。想像力が必要ですね。

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(スルタン・サンジャール廟、1890年の様子)

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(スルタン・サンジャール廟、2001年の様子)

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(スルタン・サンジャール廟、現在)

●タイル好きの私が最も反応したのは、7世紀の聖者廟・アスハーブ遺跡群。アーチ部分は14世紀に建て増しされたとのこと。タイル装飾隆盛期であることから、つじつまが合います。14世紀のタイル(=バンナーイという技法のレンガ装飾)とは感慨深い。いいですね〜!でも、はっきり覚えていませんが、撮影禁止と言われ、こっそりと撮った気がします。(昨年のことですが、もう記憶があいまい。でも撮影禁止の意味がわからないと思った記憶が、、)

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(アスハーブ遺跡群)

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(アスハーブ遺跡群)

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(アスハーブ遺跡群)

●そして、一番好きだったのは、ムハンマド・イブン・サイード廟(ムハンマドから5代目の子孫)の内部装飾。レンガ積みとカリグラフィーに、簡素な美しさ、趣があります。暗いせいもありますが、荘厳な気持ちに。遺跡などで、一瞬ですが、その時代に自分がいるような気になるときがあります。それが私にとって、旅の醍醐味のひとつですが、このカリグラフィーは、そんな瞬間をプレゼントしてくれました。

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(ムハンマド・イブン・サイード廟)

●有名なメルヴ遺跡。シルクロード交易の拠点、オアシス都市、セルジューク朝の都、、私にとって興味津々のところのはずなのですが、どうも盛り上がりきれなかったのは、あまりに広大なせいでしょうか。遺跡を愉しむには、実際のところ、知識が重要、そしてそれを駆動させる柔軟な想像力も不可欠、と思うのでした。

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(花模様のレリーフ)
by orientlibrary | 2009-08-19 00:45 | 中央アジア5カ国