イスラムアート紀行

orientlib.exblog.jp

ペルシアの庭とヤズドのタイル

●「イランはすごい」、、タイル大好き、絨毯や細密画などの工芸も好きな私、何度そう思ったことでしょう。技術の高さはもちろんのこと、独特の感性が底流にあるように感じます。情熱と叙情、繊細と優美、華麗で誇り高い、陶酔と耽美、そんな言葉が浮かびます。

◆ ペルシアの庭園 ◆
●先日、東京国際ブックフェアで、イランの本に出会いました。そしてまた感じました。イランはすごい。イスラム世界の庭園をイランの庭園から語り尽くすかのような本、『GARDENS OF IRAN Ancient Wisdom,New Visions』(Teheran Museum of Contemporary Art)。

e0063212_1241811.jpg
(『GARDENS OF IRAN Ancient Wisdom,New Visions』。タイトルの下にあるメダリオンに注目!)

●「イスラムの庭園」は、細密画や絨毯の模様にも好んで描かれるテーマです。私は実際に多くの庭園をを訪ねているわけではありませんが、端正な空間でありながら、植物を愛好する気持ちや水への憧れが溢れるようで、とても魅力を感じ、庭のこと、もっと知りたいと思っていました。

●この本では、豊富な写真、詳細な解説、図面から、植物やタイルなどのディテールまで紹介されています。さらに歴史的な工芸品に描かれた庭園モチーフ事例、現代の作品に描かれた庭園など、多彩な切り口。そして、タイル好きにはしみじみと嬉しいことが。タイルのモチーフが本のシンボル的に使用されているのです!

●それは、ヤズドの金曜モスク(1325-34)のタイルです。『GARDENS OF IRAN』の本文にも書かれているように、サファビー朝の華やかなタイルと比較すると、この年代のタイルはあまり有名ではありません。しかし、「過去と現在の芸術の潮流をつなぐものとして、サファビー朝のタイルよりも興味深い」として、このタイルを例示することを選択しているのです。(この感性に感涙!)

e0063212_125753.jpg
(ヤズド・金曜モスクのタイル/『GARDENS OF IRAN Ancient Wisdom,New Visions』より引用。中心のメダリオンが、上の本のタイトル内などでシンボル的なビジュアルとして見られる。タイルが主役になってうれしい!)

●ヤズドのタイルは、4色の縁飾りのある長方形のパネルを、六角形のターコイズブルー(微妙に色合いが異なる)のタイルが埋め、中心に緻密なモザイクのメダリオンがあります。メダリオンは12角の太陽のパターン。縁と同じ4色が使われています。

●でも、なぜこのタイルが庭の本に?「このタイルのターコイズブルーは、深い青から薄い青までバリエーションがあり、波のような水の動きを感じさせる。モスクの中にある水の存在の比喩のようだ。見る者の心を平和にし、神秘的な詩のように心を癒し、私たちを想像の世界へと誘う。まるで細密画のように」。水と庭との関連からタイルを語っているのですね。専門書の文章ですが、詩的ですね〜。

◆ 子ども向けの工芸本 ◆
●もうひとつの出会いは、子ども向けの美術解説本。タイル、ペインティング、ミラーワーク、漆喰装飾など、シリーズで10種類くらい揃っていました。30ページほどの薄手の本ですが、本の装丁やデザインが何ともいえず魅力的で、引き込まれました。

e0063212_1271251.jpg
(タイルの本は、イスファハーンの「ロトフォッラーモスク」の天井のタイルがテーマです)

●日本や欧米以外で制作された雑誌や本を見る機会は、あまりありません。タイルの本も欧米の研究者が執筆し、ロンドンやアメリカで作られているものを見ることが多いのです。イランの人がイランのタイルをどう見るかにも興味があります。ペルシア語なので何が書いてあるかわからないのが残念ですが、、でも、デザインだけでも、うっとり!!!

e0063212_128743.jpg
(ペインティングの本は、HAFT-TANNAN MONUMENT(1ST IRANIAN GALLERY)がテーマ。絵の切り取り方がなんとも鮮烈)

e0063212_1283738.jpg
(ペインティングの本の中面。センスいいですね〜)

●おもしろいのは、このシリーズが制作された意図。このシリーズのタイトルは、「なぜ私たちはこれらを無視したのか」「どうしてこれらを見てこなかったのか」。「伝統あるイランの芸術作品であるにもかかわらず長年目を向けてこられなかったものを、しっかり見ていこう」と子どもたちを啓蒙しています。イランでも古い工芸を見ないようになっているのでしょうか。でも、こんなシリーズを作ってしまうこと、それ自体が、イランの芸術の底力かもしれません。

e0063212_1294357.jpg
(ミラーワークの本は、NARENJESTAN MANSION IN SHIRAZの主ホールの天井がテーマ。本の中面より。イラストやカリグラフィーがたまらなくすてきです)
by orientlibrary | 2009-07-15 12:15 | 至高の美イランのタイル