イスラムアート紀行

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陽のように輝き、星のように優雅に。ミラー刺繍の美

イスラムタイルといえば、青。緻密この上ないモザイクの美だけでなく、乾燥地帯の紺碧の空を映すようなラピスラズリ色、トルコ石色など、鮮烈な青色が大きな魅力です。イスラムタイルを愛する当ブログも、トーンはブルーが多くなります。

今回は趣向を変えて、赤の世界でいきたいと思います。赤といえば、トルクメンの絨毯などが有名ですが、今日は赤の中でもキラキラした世界に飛んでみたいです。ミラー刺繍です。 

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(写真提供:YSさん)

インドのグジャラート地方などで有名な刺繍技法。写真は、すべてO氏のコレクションよりご紹介させていただきました。Oさんはパキスタン赴任中にミラー刺繍に惹かれるようになり、買い集められたそうです。そのコレクションを一堂に見せていただく機会がありましたが、濃い空気が立ち上がってくる気配に圧倒されました。一見同じように見えるのですが、よく見ると模様も技法も多彩です。

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(写真提供:YSさん)

このミラー刺繍、私の手持ちの本には解説を見つけることができませんでした。頼みのWEBにもなし、、。仕方なく英語のサイトを参照しました。怪しい訳だと思いますが、素人のざっくりのご紹介ということでお願いします。

WEB「India Crafts」/WEB「MIRROR WORK AND EMBROIDERRY GUJARAT」IN「INDIAN HOLIDAY PVT.LTD」などを参照し、まとめました。

・インドでは、“shisya”(この言葉の意味が?ミラーと同意?)、または、“mirror”は、インドの刺繍の伝統の最も魅力的で特徴的なもののひとつとして知られています。
・とくに、グジャラート、ラジャスターン、ハリヤナ、デリーなどの乾燥した灼熱の沙漠地方では、強い色彩で施されたミラー刺繍が、彼らの衣服や装飾品、室内調度品の中に見られます。
・ミラー刺繍は、「Garari Jat community」(ジャーティ〜職業集団名?)によって、白や赤やオレンジや青や緑色など色とりどりの縫い糸で刺繍されます。
・グジャラートのカッチ地方では、ミラーは鳥の目や花の中心として使われます。グジャラートだけでなく、ラジャスターン、ハリヤナ、さらにはオリッサでまで、“shisya”は同様の情熱で美しい装飾として使われます。
・ミラーワークの技法は、13世紀頃のペルシアに起源があると推測されています。元々は、ミラーではなく雲母で作られたと言われています。
・ミラーワークは、模様をより高度なものにする努力がなされ、テキスタイルや他の装飾品やアクセサリーの上に刺繍されたり描かれたりしてきました。
・通常、ミラーワークは、黒っぽい地の上に、花びらや花、鳥などのモチーフを刺繍します。これらの主要なモチーフは、古代の信仰、儀式や日々の暮らしから触発されたものです。しかし模様は地域によって、また時代によって異なります。
・ミラーの形は、円形、四角形、三角形、多角形など多彩です。サイズも豊富で大きなものから小さなものまであります。
・ 今日では、いくつかのタイプのミラーがあります。手で吹いて作ったガラスのもの、アンティークのもの、まだ雲母が使われているものなどです。ミラーワークは、優雅で豪華で印象的です。

*コメント欄より、私のわからなかった部分を補足してくださる情報をいただきました。(090708)
・“shisya”=より大雑把には「ガラス(製の物)」を指すので、必ずしも「鏡」とは限らないが、この場合は鏡の意味と考えてよい。「shisha」と綴られることが多く、「ミラーワーク(の~)」の場合は「shishedar」。
・「Garari Jat community」=この”Jat” は「ジャート」という、インド北西部を中心とする有力なジャーティ集団の一つ。ただ、一括りにするにはかなり無理がある巨大な集団なので、元々の居住地域や生業などによってさらに細かい集団に分かれる。分派の名称が”Garari”。通常はこちらが日本での苗字的に使用される。
*ブログを続けていてうれしいのは、このような情報をいただけることです。ek-japaniさん、シェアして頂き、本当にありがとうございました!!感謝しています。

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(写真提供:YSさん)(緻密な刺繍。サイズは畳1畳分の大きさを軽く超えていたと思います。飾り布として迫力がすごい!/O氏コレクション)

「ミラーワークの婚礼衣装」(『インド 大地の布』より)。「輝くミラー刺繍を好んで使うのは、森で暮らしていた頃、野獣を追い払うために用いた名残だという。ミラーで埋め尽くした婚礼衣装は、素材は木綿だが、豪華で何代も使えるほど丈夫にできていた。左肩の飾り布は結婚したときにつけて、未亡人になったときに取り外すのだそうだ」。

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(写真提供:YSさん)(真っ暗な中で見たミラー刺繍の掛け布。幻想的で忘れられません。まるで天の川のようでした。数m×数mという大変に大きな作品。当記事上から4点の写真のミラーワークは、この布を構成するパーツです。このような多彩なパーツが200以上も縫い合わせられています。ひとつひとつに個性があり、本当に圧巻でした/O氏コレクション))


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(長細く、儀式に使う布ではないかと想像しましたが詳しくはわかりません/O氏コレクション)
by orientlibrary | 2009-07-07 22:44 | 絨緞/天幕/布/衣装