イスラムアート紀行

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タージ・マハル、その工芸美と謎

●この数回、ムガルの建造物を中心に「インド・イスラム」の模様について見てきました。今回もムガル朝の創始者バーブルの故郷である中央アジアの建造物や模様と合わせ、少し見ていきたいと思います。

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(早朝のタージ・マハル廟。「1654年、シャー・ジャハーン帝は22年の歳月と2万人の職工を投じて壮大にして典雅なる白亜の廟を建設。フマユーン廟で形式が確立したムガルの廟建築は頂点を迎える」=『インド建築案内』/神谷武夫さん、より)

●でも私の写真だけではなあ、と本棚を見渡したところ、『ムガル美術の旅』(山田篤美著・朝日新聞社)に目がとまりました。1997年12月の初版。当時、ムガルに熱中しつつあった私にとって待望の書籍でした。山田さんのレクチャーにも数回行きました。新鮮でしたが、基本知識のとぼしい私にはかなりむつかしかった。

●今回、久々に読み返してみると、今だからわかることもありました。ただ、この本をかいつまんで紹介することは私には不可能。迷路のように入り組んでいるのです。なので、、タージ・マハルの部分のみ、少し抜粋(一部要約)させていただくことにしました。

* 「タージ・マハルは相当大きな建物だ。四面どの方向から見ても同じ外観を持つ正方形プラン。遠くからだと平たく見える基壇だって高さ7メートル、一片の長さは95メートル。その上に約58メートルのパビリオンが乗っており、ミナレットの高さだって42メートルに達する」

* 「白大理石の建物と思われているタージ・マハルも、赤砂岩の存在があってはじめてその美しさが際立つことだろう。白大理石の基壇の輪郭がくっきり浮かび上がって見えるのも、基壇の下に赤砂岩の床があってこそ」 

* 「世界でもっとも美しいと言われているこの墓廟には新たな発明とか独創性がない。フマユーン廟、アクバル廟、イティマッド・ウッダウラ廟、ジャハーンギール廟の特徴を組み合わせたのがタージ・マハルだった」。しかし、 「タージ・マハルには、確かに独創性はなかったが、伝統の積み重ねによって、見る者すべてを魅了する優れた建築物を造り上げた」

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(タージ・マハル。廟から門方向を見わたす。四分庭園の緑と赤砂岩で整形された長方形変形と六角星)

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(ティムール時代初期建造物であるアフマド・ヤサヴィー廟。右側の模様、パターンとしては似てる気がします)

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(ブハラ。ファサードを取り巻くデザイン。中にカリグラフィー。すごい)

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(タージ・マハル。基本的なデザインを石造で)

●山田篤美さんの本の眼目は、ウエイン・E・ビーグリー氏による「タージ・マハルは神の玉座」説や、「『メッカ啓示』(13世紀のイスラム神秘主義者イブン・アルアラビーがイスラム社会の宇宙観を記した著)で使われたダイヤグラムとタージ・マハルの配置との類似性」という説に対する検証と見解です。が、最終的には「やはり私は通説どおり最愛の妻のための墓廟だったのではと思うにいたった」とあります。

●あれだけ壮大なタージ・マハルはいったい何のために作られたのか、諸説あるようです。私の感想は、、シャー・ジャハーンは建築オタクだった、ということ。じっくり見るほどに、作りたくて作った、とことん完璧にしたかったという感じがわき上がって見えてきます。

●建築熱中人が建造できる地位にいたならば、既存の廟やペルシア建築を研究しつくし、理想の美を追求しつくすだろうと思うのでした。だから様々な要素が入っているのだと思うし、それが「謎」として好奇心を刺激するのでは?つまり、それほどに完璧なバランス、理想の美が体現されているということなのではないでしょうか。


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(ブハラ。波形の模様。素材は土。優雅ですね〜!)

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(タージ・マハル。波形の模様。素材は石。キリリとしてます)

●今回は、書きながらむつかしかった、、! 読まれた方もわかりにくかったと思います。次回は趣向を変えて、意外に面白かった展覧会「エカテリーナ2世の4大ディナーセット」についていこうと思います(ふ〜っ、、、)。



◆ ヌスラット・ファテ・アリハーン ◆
●話は変わって、、先日、カッワーリの代表的歌手である“ヌスラット・ファテ・アリハーン”を検証する「聖者の宮廷楽聖考—ヌスラットとは何者ぞ?」という会がありました。、、というと行ってきたみたいですが、、残念ながら今回は参加できませんでした(涙)。参加者も多く、大盛り上がりだったようです。

●でも、神様のプレゼントなのか、会の前日にたまたまつけたテレビで、なんとヌスラットの映像を見ることができたのです。テレビでヌスラット、、時代は変わりました。ピーター・バラカンさんの進行による「ワールドミュージック」の番組でした。

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●この「ワールドミュージック」という言葉、由来をごぞんじでしたか?バラカンさんによると、1987年に音楽プロデューサーやジャーナリストが、ロンドンのパブに集まり話し合ってつけたんだそうです。背景は、それまでの欧米のポピュラー音楽とは異なるタイプの音楽が増えてきたから。そのジャンルのものをレコード店でどこに置いていいかわからなくなり、名前が必要になったんだそうです。

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●それから20年、「欧米以外」の音楽、ファッション、食など、日本でもずいぶん浸透してきました。ヌスラットの会に若い人たちが大勢集まるんですからスゴイです。若い層にはミドル以上の世代が持つアメリカ信仰(〜反感)のようなものはあまりなく、ボリウッド映画やベリーダンスなども人気。次はイスラムタイルにも興味を持ってね〜!


◆ カッワーリ、ヌスラット・ファテ・アリハーンについての過去記事 ◆
 「神秘的or土着的宗教歌謡?どちらもナイス!Sufi Soul!」
 「扉とカッワーリー イスラムの街を五感で感じるとき」
by orientlibrary | 2009-06-17 18:45 | タイルのデザインと技法